大島恵真(おおしま・えま)の日記

児童文学作家・大島恵真の著作、近況を紹介します。
絵本作家・大島理惠の「いろえんぴつの鳥絵日記」もこちらです。

感覚の話●色と音

2010年10月31日 | イラスト(ペン画)
何色が好き?と聞かれて、みなさんはなんと答えますか。困りませんか、一色だけ選べといわれても。
もっというと、色って組み合わせなので、隣に何色がくるか、どこで使う色なのか、によっても答えは変わりますよね。自分の肌にあうのはこの色とか、いまの部屋のカーペットはこれとか、紅葉の色はこの葉っぱがいいとか。

だいたい、色って相対的なものだとわたしはおもっていたんです。だから、絵本の原画を印刷にかけてもらうときも、わたしは原画の色は気にしませんでした。それよりも、全体としてメリハリがあるか、とか、そんな感じ。原画とはもちろん色は変わるけど、それは原画を知っているからで、本になった一冊を手に取って見てもらったとき、美しいと思っていただけたらいいな、と。自分では、原画よりも印刷された絵のほうが好きだったりもします。

ところがあるとき、その考えが少し変わりました。最初は、ダビンチの受胎告知を生で見たとき。絵の中のえんじ色がきれいだな、とは思ったのですが、だからこの色が好き、とまでは思いませんでした。それが、直後に、立派な複製(総力をかけて印刷されたものです)を見て、さっきのえんじ色がどこにもないのに驚きました。最初に、複製のほうだけ見ていたら、すばらしい絵、と感動するだけだったでしょう。でも、本物を見たあとでは……。同じ事が、ムンクのレモン色、モネの水色などにも言えました。ふだんは感動しているポストカードはもちろん、画集でもあの色は得られないんだ、と、はじめて生で絵を見る事の意義を知ったのです。うれしかったです。自分にも、あの色がいい、という感覚がめばえたと。

それで、先日おこなった仕事での、楽典の話です。わからないままじゃいけないので、いろいろ学びました。仕事でなかったら学ばなかったので、よかったと思います。はじめて、調のこともちゃんと考えました。それまでは、たくさんシャープがついてる楽譜(たとえば嬰ヘ長調)って、意味がわからなくて、あんなに面倒なのいっぱいつけるなら、いっそのこと全部とれば(笑)とか思ってました。どんな音程から始まろうと、メロディがあればいいやって。でも、これも、原画の色と同じで、絶対的な調ってあるんでしょうね。わたしには、絶対音感ないからわからないけど、たとえば歌集とかで、曲によって調を変えることで、世界が変わるんでしょうね。絶対音感って、どんな感じなんだろうなあ。知らない世界への思いがすこし開かれました。