暇な弁護士の暇つぶし日記

若手弁護士の日常を書いていきます。

錯誤無効主張の消滅時効?

2014-07-16 21:16:52 | 日記
物を買って錯誤があった場合には、売買契約の無効を主張して、不当利得返還請求権に基づいて、売買代金の支払いを求めることになる。

では、錯誤無効の主張は、売買契約の締結ないしは代金の支払いからいつまで請求できるか。

まず、取消しの場合について考えてみると、取消権は追認ができるときから5年間の消滅時効にかかる。

これが、錯誤無効について類推適用されるかが、一応問題となる。

しかし、錯誤の場合は主張の有無にかかわらず最初から無効であり、取消権のように権利として構成できないから、類推適用されないだろう。

そうすると、錯誤無効の主張については期間制限はないことになる。

ところで、錯誤無効を主張するのは、売買代金の返還を請求できる点に実益があるからである。

代金返還請求の根拠は不当利得返還請求権であるが、これが債権であるから10年の消滅時効にかかる。

その起算点は、権利を行使できる時、であるが、錯誤無効の場合初めから契約は無効であるから、契約時ないしは代金支払い時から無効の主張及び不当利得返還請求ができることになる。

そうすると、錯誤を理由とする不当利得返還請求は、契約時から10年に制限される。

よって、錯誤の主張に期間制限はないが、不当利得に基づく返還請求は契約時から10年に制限されることになる。

そして、契約から10年して不当利得に基づく返還請求がすれば、錯誤主張をしても訴えの利益を欠くから、実質的には錯誤の主張は契約時から10年ということになるだろう。

これに関連して、取消しについては、取消権は5年間の消滅時効にかかるが、これと不当利得返還請求の消滅時効はどのような関係に立つかという論点がある。

学説では、取消権に消滅時効を定めた趣旨は、そのあとに続く不当利得返還請求権を制限することにあるから、不当利得返還請求権についても5年以内に行う必要があるとするものがある。

しかし、判例では、取消権を行使してから、不当利得返還請求権の時効期間が算定されるとする。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする