暇な弁護士の暇つぶし日記

若手弁護士の日常を書いていきます。

なぜ刑事裁判は公開されるのか。

2014-06-13 21:10:27 | 法律
HEROとか法廷ドラマを見ていると、刑事裁判の法廷のシーンがあって、記者とか被告人の親族とかが傍聴しているところをよく見る。

当たり前のようだが、刑事裁判はなぜ公開されているか。

憲法82条1項は、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」と規定している。
この規定によれば、民事、刑事にかかわらず、法廷の公開が保障されている。

さらに、刑事事件については、憲法37条1項は、「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」と規定して、再度刑事事件について公開する旨を保障している。

これは、秘密裁判のもとでは、被告人の権利が侵害されやすいから、裁判を国民の監視の下に置くことで、被告人の人権を守ろうとしているのである。とりわけ、戦前は、裁判と政治が結びつき、言論の弾圧等に刑事裁判が利用されていたという経緯があるから、刑事裁判においては、裁判の公開の要請は強い。

歴史的経緯から裁判の公開の要請が強いとしても、被告人からすれば、自分が犯罪を犯したこと、またその内容を知られたくないと思うのが普通であり、そのような被告人のプライバシーの利益との関係はどう説明するのか。

この点は、被告人にそのような自分の犯罪を知られたくないというプライバシーの利益があるとしても、歴史的経緯からして裁判の公開の要請が強いという説明ができる。

被告人との関係で、公開の要請が強いとしても、被害者との関係ではどうか。例えば、性犯罪など、被害者としてはそのような被害にあったことは知られたくないはずだ。しかし、起訴状では、審理の対象を明確にするために、被害者の名前を読み上げることになるし、被害者の証言は重要な証拠だから、法廷で被害者の証人尋問が行われるのが通常である。このように、公開の法廷では、性犯罪の場合にも、被害者の名前が明らかになるという問題がある。もっとも、刑事訴訟法では、この点につき、被害者の名前が明らかにならないよう規定を設けていう。これについては、また今度書きたい。

なお、裁判が公開されているというのは、誰でも自由に裁判を傍聴できるということだが、事件とかかわりのない人に、裁判を傍聴する権利があるかという問題がある。つまり、ある事件について裁判を傍聴させろと請求する権利があるかという問題だ。

裁判が公開されているとはいっても、法廷の傍聴席の数には限りがある以上、満席となってしまえば、傍聴できないのもやむを得ないことである。そうすると、傍聴する権利まではないというべきだろう。世間で話題になっていて傍聴席より傍聴人が多くなりそうなときは、傍聴券を発行する場合があります。この場合、傍聴席の一部がマスコミ関係者に割り当てられることになりますが、マスコミによる報道によってより多くの人が、その事件を知ることができることからすれば、マスコミが優先されるのも合理的と言えます。
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