ふくろう親父の昔語り

地域の歴史とか、その時々の感想などを、書き続けてみたいと思います。
高知県の東のほうの物語です。

花の谷。轆轤

2010-10-19 18:44:28 | 花の谷
 届けられた弁当を食べ、少し飲みながら爺やんは、来客についての話が出るかもしれないと思っていたが、そうした話も出ないうちに、にいやンが「今日は疲れたろうき、早く風呂に入って休んだら?」
 「亮子。案内しちゃってくれんか?」
 「うん。そうやね」
 亮ちゃんが親子を案内して出て行った。

 にいやんは、ビールを飲みながら爺やンの手元に目がいった。爺やンが、変わった形の”ぐい飲み”で酒を飲んでいるのだ。

 「爺やん。その”ぐい飲み”かわっちゅうねえ。」
 「これか。これはわしの作よね。」 「へ~。」
 「ここにある器は、ほとんど自分で作ったがよ。わしの作よね。」誇らしげである。
 器の話に熱中している。にいやんは、どうやら今夜は来客についての話はやりたくないようだ。

 「あの花器もそう?」亮ちゃんが入ってくるなり、そういった。
 「そうよ。」

 「いろんなことが出来るがや。」器を手にとって亮ちゃんがいった。

 「おまんらあの、まあ3倍は人間やりゆうきにゃあ。」「暇やったし。」
 「まあ、贅沢な遊びよなあ。またやりたいとは思いゆうがやけんどなあ。」と爺やん。

 亮ちゃんは、もう決めたようだ。「爺やん。陶芸やりたい。教えて。」
 「忙しいろがえ。亮ちゃんは。」
 「休みの日もあるし、夜は暇やし、時間は取れると思うがよ。」

 亮ちゃんの目は、すでにやると決めていた。「そうかえ、ほんだら下へ行って一番小さな轆轤を持ってきいや。」「それから、黄色いビニールの袋に粘土がはいっちゅうき、もってきいや。」
 にいやんと亮ちゃんが、手轆轤と粘土を持って帰ってきた。

 「轆轤と粘土は持って帰ってもえいき、まあやってみいや。」
 爺やんは、粘土に触りながら、久しぶりの粘土の感触を楽しんでいた。手遊びで、いつの間にか小さな器を作っている。「じきにできるがやねえ。」と笑いながら亮ちゃんが言うと、爺やんは「慣れたらどうってことはないがよ。」

 小さな器がテーブルの上で転がっていた。
 「亮ちゃんが本気でやるがやったら、窯がいるなあ。」「まあ、先になにか作ってみいや。」「窯はそれからでえいろ。」

 早速、基本的なことだけ亮ちゃんに教えた爺やんは、見たことがないような笑顔で亮ちゃんの手先を眼で追っている。せっかく作っていても途中でグニャリと変形する粘土に「あ~あ。」そして声を出してただ笑うのだ。

 小一時間もやった頃、「こればあにしよか。今日は。」
 亮ちゃんも汗びっしょりになって、久方ぶりに明るい笑顔をしている。

 「これ、捨てないかんね。」途中でつぶれた粘土をまとめていると、爺やんは「又それをつこうたらえい。そのままにしちょいたらえいで。」と。

 台にしてあった、板材ごと部屋から出した。
 傑作は3個。「小鉢かな」と爺やん。亮ちゃんは「お茶碗です。」という。

 「ははは!、亮ちゃん、これで毎日ご飯食べたら肩こるで。重たすぎるろう。」

 どっと笑いが出たところで、忙しい一日は終わった。
 にいやンと亮ちゃんの家は今日から4人で暮らすことになった。

吉良川散歩3

2010-10-19 18:11:27 | 建造物入門
 吉良川への通勤ももう少しになりました。
 しかし、相変わらず吉良川の古民家は魅力的です。

外観から想像したり、見える範囲での私見ですが、細かいところにまでこだわって、技術がほどこされています。ただ資材を投入したことで、修理のしすぎもあります。一部だけキレイになり過ぎているのですが、また何十年かの時間が全体としての調和を生んでくれるでしょう。

 財の蓄積が成せる姿です。


 この水切り瓦の角にある突き出た造作も誇らしく天に向かって付けられています。なかなかに出来ない技術です。


                

 ぶらり、ぶらりと歩くことが、気持ちいい場所です。いつも時間の経過を忘れるのですが、仕事で来ているのですからねえ。
 そうゆっくりとはできません。

 路地の狭い空間を海からの風が満たしています。
 これもいいね。