帝国の騎兵に中央突破された結果、皇国は敗走。
大半の兵士が銃を捨て、北領の最南端北美名津浜に逃げた。
そんな中で比較的秩序を保って後退できた近衛衆兵第5旅団。
そして早期に撤退を開始した我ら独立捜索剣虎兵第11大隊も重装備を失わずにほぼ無傷で後退に成功。
そのため私が所属する大隊は原作通り皇国軍の尻を守る盾。
つまりは最も名誉であり、かつ困難で厄介極まりない任務、遅滞防御の任務を言い渡された。
で、私が率いる中隊はまさにその最前線にいるわけだ。
…………だれか変わってくれないかなー?
特に今こっちに来ている魔王様とかに。
「中隊長、猫が見つけました北北西、街道上に帝国軍です」
「ん、ご苦労。ここまで来る帝国軍は騎兵だけ、
剣虎兵の鼻で馬を察知するとなると距離は15里、だとすれば…」
「半刻で視認できるでしょうね、中隊長殿」
先任下士官の猪口曹長が言葉を続けた。
うん、そしてここまで偵察に来る騎兵は最低でも中隊単位で動いているはず。
つまり約200騎の騎兵を私は半刻以内に視認してしまう。
「どうしますか、中隊長?」
新城中尉がこっちに尋ねる。
そのさいやや表情がなんというか、挑発しているようだ。
本人はその気はないだろうけど…おまえそんなのだから大隊の将校団からハブられるんだよ…。
「決まっている。まずは大隊に報告、そして逃げる!」
敵情収集という任務は帝国軍が接近しているという事実が判明した以上、任務は果たした。
一戦してより詳しく敵情を探るのもありだがお断りだ。
というかここで若菜がしなくてもいい事をしたせいで死んだターニングポイントだし!
加えてウチの中隊とほぼ同数の敵と支援なしにやり合うなんてまっぴら御免だ。
私の指揮能力なんて凡人に過ぎないし、ましてや攻撃力が高い騎兵との戦いなんてなおさらだ。
「と、いうわけでもう一回逃げるぞ。
騎兵と殴り合いなんて私は死んでも御免だからな」
「はい、了解しました」
この後導術から大隊の許可を得て我が中隊は後退を開始。
かくして若菜の死亡フラグを見事に叩き割った私だが困難はまだまだ続く。