「陽乃鳥(ヒノトリ)」貴醸酒 秋田県 新政酒造
日本酒造りの最終段階は酒米・水を合わせて発酵した「醪」を搾ることにより造られますが、この醪を作る段階で麹米と蒸米を複数回に分けて加えていく作業は、「三段仕込み」では順に初添え(はつぞえ)、仲添え(なかぞえ)、留添え(とめぞえ)と言われています。
最後の留添えは通常、蒸米、麹米、仕込み水を加えますが、この留添えで、仕込み水の代わりに日本酒を加えて造られるお酒が貴醸酒です。
仕込み水ではなく、アルコール成分のある日本酒を投入するので、糖を分解する前にアルコール度数が高くなるので、酵母の働きが弱くなり発酵力が弱まります。
そのため糖化の働きが発酵より強くなり、とろりとした甘口の酒が仕上がります。
日本酒で酒を仕込む醸造法は平安時代の古典「延喜式(927年)」に記されている造りと同じものですが、現代の技術は1973年(昭和48年)に国税庁醸造試験所(現在は独法酒類総合研究所)で故佐藤信博士開発され、汲水の代わりに清酒を全部または一部を用いて造る清酒を「貴醸酒」と名付けられました。
この「貴醸酒」をいち早く商品化したのは「華鳩」で知られている広島県の榎酒造でした。
さて、新政の「陽乃鳥(ひのとり)」は、ほかの貴醸酒とは一線を画す新政らしい味わいで、通常、貴醸酒は甘口で濃醇な味わいを特徴とし、長期熟成酒され紹興酒のような飴色のものもありますが、新政の貴醸酒は、大体1年弱の熟成で出荷されるため、とろりとした甘味、それを引き締める酸味の、甘酸っぱさが魅力です。
発酵中のお酒が、さらに発酵し、生まれ変わっていく様を「ひのとり」になぞらえ、火ではなく「陽」としての暖かさを感じ、不死鳥というには、オレンジ色を使ったシンプルで可愛らしくシンボル化された鳥のラベルです。
陽乃鳥ボトル画像は、新政酒造株式会社オフィシャルサイト参照