占術 - 癒し効果
占術に癒し効果はあるのでしょうか。否、と私は考えます。占術は問題の提起、分析、将来に向けてのシナリオライティ ングを行うツールとして機能する事にあるので、人の心を癒やしたり、慰めになったりする事には向いていないのです。例えて言えば、病気の正体を解明するた めに、レントゲンを撮影する事はあっても、それにより病気が治る、という事がないのと同じです。
にも関わらず、癒やしを求めてくる依頼 者、あるいは癒されたと言って帰って行く依頼者は少なくありません。これは問題が解決されて安心した、というのではなく、一緒になって解明してもらえて、 つまり、問題を共有してもらう事が出来て、心が軽くなったに過ぎず、実際には何も事態は変わっていません。
とはいえ、科学にはない視点 からの切り込みや、依頼者にそったアプローチは、別な意味で依頼者を安心させるのかもしれません。何故なら、科学では視点ベースは客観にあり、その客観的 視点から対象としての患者を観察し、それまでに蓄積したデータベースと照合してまず何の病気であるかを特定するところから治療が始まりますが、占術では視 点ベースは依頼者にあり、まず依頼者自身が何者であるかを、その占術のシンボル体系から解明し、今何が必要かを考察するからです。このように、占術と科学 のアプローチ方法は真逆の関係になります。科学はあくまでも全体的な法則を個に適用する事が本分なのに対し、占術は個を出発点として、その個に合った道 を、全体の持つノウハウや知恵を駆使しながら探るのです。
ちゃんとした占術家はそれを無意識のうちに実践しています。ちゃんとした、というのは金儲け主義や娯楽や売名行為でやっている占術家以外の、きちんと基礎を学び、日々の研鑽も怠らず、人の役に立ちたいという使命感と誇りを持って活動している、という意味です。
では、そういう占術家は何処の誰だ、という事になると、それは私にも分かりません。今の日本に何人位いるのかも分かりません。たまたまそういう人に当たっ たら暫くその話を聞く、という事でしか、このルートでいく方法はないと思います。占術家の良し悪しを見分けるひとつの方法として、理由をちゃんと教えてく れるかどうかです。吉にしても凶にしても、何がどう吉なのか、なぜ凶なのかを明確にして、特に凶の場合にどんな意思決定上の選択肢があるのか、依頼者の意 向を理解した上で、判断材料を示してくれるのでなければ占術家に話を聞く意味がありません。
多くの場合、占術家は自ら習得した占術の奥 義に従って、決められた結論を述べ、その先のステップまで踏み込む事はしませんし、それは自分の仕事ではないと考えています。そこまで立ち入ると、時間も 手間もかかって、給与以上の仕事になってしまいますし、それだけの実力が無い場合もあります。
入門書に書いてある事とさほど変わらない コメントしか出てこない場合は、面倒な手順を代行してくれる人位に思って、それ以上は突っ込まない方が時間を無駄にしなくて済むかもしれません。占術家に もいろいろありますから、どんな占術家がいまの自分に必要なのか、よく見極める眼を養う事が大切です。
占術 - ジョハリの窓と心理学の限界
コミュニケーション学です。自己と他者でそれぞれ「見える」見えない」窓を設定し、それぞれの領域でパーソナリティがどうなっているのか、また、どうある事を目指すべきかを論じます。以下のような配置の窓を思い浮かべればよいかと思います。
|1.自分からも他人からも見える|2.自分だけ見える|
|3.他人だけ見える |4.自分からも他人からも見えない|
占術は昔からこの4つのどの窓からでもアプローチできますが、心理学では「科学」故に4からのアプローチは出来ません。見えない故にどんな仮説も実験に よる実証も出来ないからです。ここを対象とする限り、少なくとも科学としての心理学は手も足も出ません。イギリスやアメリカで、カウンセラーを目指す学生 たちが、大学や大学院で占星術や易を学習する場合があるのはこの理由故と何かで読んだ事があります。つまり、深刻なケースでは、従来的な方法ではそもそも とりつくしまがないので先に進む事が出来ない、という事が随分前から臨床心理学の現場でも問題として意識されていたのです。カウンセラーや精神科医の従来 的なインタビューでなんとかなる場合も沢山あると思いますが、万能ではないでしょうから、そういう事があっても不思議ではありません。
ちなみに、私が勉強したタロットの入門書はアメリカの大学で使われているものでした。
ちゃんとした占術には、森羅万象をシンボリズムによって体系化して考察するメソッドが備わっています。シンボリズムですので、必ずしも科学的でも合理的で もありませんが、ちゃんとそのシンボリズムによる世界観をしっかり構築出来る体系を持ったものであれば、これを上手に使って自己と他者および自己をとりま く世界との相対的な関係とそれぞれの在り方を分析し、これからどうすれば良い状態になるのかを考察する事が出来るのです。それは、既に迷路に入り込んでい る人々に出口を示唆するものでもあります。しかも、出口を示唆するほどまでに成果を上げられるのは、その占術の正当な運用方法を理解している術者が使用し た場合です。単なる当て物や教科書通りの占断しか出来ない術者ではやはり単なる当てずっぽうになってしまいます。欧米のようにカウンセラー志願の専門家の 卵たちがツールのひとつとして学ぶからこそ意味があるのだと思います。とはいっても、実際に出口に向うのは問題を抱えた当事者自身であって、占術はそれに 関しては何もする事は出来ません。
なお、残念ながら日本では占術がこのような形で使われているという話を聞いた事がありませんし、大学で臨床系の心理学の専門コースで使われているテキスト、というのも目にしたことがありません。