この日のハイライトは何と言ってもHaくんのスケーター。朝の自由あそびの時間帯のことだ。
Haくんがスケーターに目をとめたときにはまだ4~5人しか来ていなかった。プレールームは広々として、“挑戦”してみるには丁度よい状況だった。
唐黷ススケーターを起こして、彼はぽぽろで初めてスケーターを漕ごうとしていた。恐らく見よう見まねの動作だろう。しかし、スケーターに片足を乗せもう一方の片足で漕ぎ、前に進めながら両手で舵を取るというのは難しい動作だ。
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片足を蹴って漕いでみる…、前に進む、フムフム…。もう一回蹴る。まっすぐにすすむスケーターはそのまま壁にぶつかって止まる。むつかしいな…、と少し顔を傾げる感じで、床にスケーターを放る。また、起こして蹴る、また壁にぶつかる。今度は、ハンドルを持ち上げて方向転換してまた直線にすすむ。また壁にぶつかる。
スタッフみんなが黙ってこの光景を見守っている。スケーターを放って離れたHaくんに、かけ声が飛ぶ。「Haくん、すごーい、もう一回!!」再挑戦だ。
今度は友だちが転々と方々で遊んでいる中を漕いで進む。あっ、危ない!!ぶつかりそうになるところを、スイーッと避けて進む。やった!曲がった!!彼の中でも、ムムム…フムフム…とつぶやいているのかどうか分からないが、今度は壁にぶつかりそうになる!とすると、スルーッと舵をきって円を描いた。やった!それから彼はスイスイとプレールームを円を描いてスケーターを漕いで進む。
何回か回ってスケーターを床に置いたときにスタッフの大きな拍手!!自閉症の子どもたちは、「やったー!」と跳び上がるほど共感の喜びを表すことは少ないが、彼は確かにスタッフの喜びに応えて一瞬、こちらを一べつした。
彼の中では友だちがスイスイと乗りこなすスケーターへの興味や憧れのようなものがあったに違いない。その素振りさえ見せなかったのに、この日はスケーターを乗り回す友だちもいなく、がら空きだったこともあるかもしれない。こんな時に決まってドラマが起きるのだ。ムクムクと「やってみようかな?」という気持ちがわき上がったのに違いない。
おめでとう、Haくん。そして、ホントに温かく辛抱強く固唾をのんで見守ってくれたぽぽろのスタッフに、ありがとう。
さて、少しいつもの時間よりも遅れて始まった♪「うたってドンドン」。「おばけごっこ」でスタートしたもののみんな今ひとつ乗ってきません。
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運動会が終わったばっかりです。頑張ったので少し疲れが見えます。プレッシャーから開放されゆったりのんびりさせてよというみんなの気持ちが見え隠れするのです。こんな時は無理しません。「よーし、今日は自由に遊んでいいよ!のんびりしよう!」ということで、めいめいがのんびり好きなことをして遊びました。
Yoくんはキャッチボールが上手だったね。今日も背高のっぽのヤンボラOくんに首ったけ。灯台の上から見下ろすと世界が違って見えるよね。
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食後のひととき。Moちゃんは両手に花ならぬイケメンに挟まれ、ワクワクドキドキの一日でした。ラブレターも書いていたかな?
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ヤンボラのTさんとKちゃん。「関係性は専門性を乗り越える」。2人は大の「仲良し」です。この日の初めてのお弁当「介護」。Kちゃんちゃんと食べてますねぇ。Tさんも落ち着いていますねぇ。この2人にもドラマがあったんだよね。
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午後からはおっちゃんはMoちゃん曰く“出張”です。
楽しい公園遊びだったようですね。
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出張というのはホントです。おっちゃんは大障教50周年記念のうたごえで歌った創作組曲『だいすき笑顔』について、曲の成り立ちと曲に込められた教職員・組合員のねがいについて語って欲しいという要請に応えて、大阪市立視覚特別支援(盲)学校へ出かけました。
来年の正月に全国障害児学校・学級全国学習交流集会が大阪の地で開かれるそうです。全国から1,500人を集めるそうです。その時に、再びこの歌を若い教員の皆さんと一緒に歌うそうです。この日は合唱の練習日でした。私が抜けて人手が心配なぽぽろの学童のために市障教副委員長のOさんが午後から助っ人できてくれました。
私にとっては絶対に忘れられない8編の曲。中でも「ここに光を」という曲を中心に話して欲しいということなので行かないわけにはいきません。この曲は私の尊敬する学生時代の1年先輩の向井さんの腰痛公務災害認定裁判のことを歌った曲です。
彼は全国で初めて障害児学校の教員の腰痛を公務災害と認定させた裁判の勝利判決を聞くことなく、志半ばで心筋梗塞により亡くなりました。その時に教職員組合の専従役員をしていた私は彼の遺志を奥さんとともに引き継ぎ、仲間とともに裁判をたたかいました。彼が勤めていた富田林養護学校のたくさんのお母さん方が「拝啓 裁判長せんせい様」という題名に象徴されるように、子どもと教育への思いを向井さんの裁判勝利へのねがいに重ねて自分たちの経験とことばで手紙にして届けてくれました。
私たちは、私たちの仕事による腰痛が公務災害として認められないような日本の社会(すすんだ北欧などに比べると介護労働者や家族への健康対策は20年遅れていると言われていた)を放置していて、子どもたちの介護者である家族、特に母親の健康が守れるはずがないという思いで、父母と一緒にたたかいました。そして、裁判を支援してくださった学者や研究者とともに介護者(障害児の場合は94%が母親)の健康調査にとりくみ社会問題にもしていきました。「親からの自立・子からの自立」「親も子もノーマライゼーションの実現を」というスローガンは、この中から生まれ、今も引き継がれています。ぽぽろの学童保育も親や家族のレスパイトケア(休息)という役割も担っています。「放課後型児童デイサービス」という全国一律の初の制度実現の可能性が切り開かれてきたいま、更に一緒に頑張りたいですね。
というわけで、『ここに光を』という裁判の報告集の表紙には向井さんの遺影を抱いた奥さんとともに背広姿の若き日の私、15年前の姿が…。お願いされたこの日の話のために、ぽぽろに持参していました。
ここからは余談です。この日の朝のことです。スタッフのSさんが髪の毛を引っ張ったMoちゃんに話していました。「髪を引っ張ると髪の毛が抜けるからやめてな!」と。丁度、その横を通った私にMoちゃんがまじめな顔をして言いました。「うらべさん、あのなワカメをいっぱい食べたらええねんで。」「はぁ~?…ナニ!ムムム、よし、Moちゃん待っときや!ええもん見せたるわ。」と持ち出したのが『ここに光を』でした。「どや!カッコええやろう?」とはしゃぐ私の横で、「ホンマヤ!」とばかりに表紙にじっと見入るMoちゃんでした。ひとしきり、この本の話題で盛り上がりました。今では「ここ(頭)に光が」当たり後光が差している私の変わり果てた頭にクスクス笑う姿があちこちにありました。
「うらべくん、もっと遊ばなあかんで!」という向井さんの激励の言葉が私への遺言となりました。目に見えにくいが故に周りに理解されにくい腰痛とたたかい、病床でのたうちまわっていた向井さん。失われた健康と時間を取り戻すかのようにアーチェリーにスキューバダイビング、茶道にと忙しく「あそび」も駆け抜けていった向井さん。学生時代に彼との出会いがなかったら今の私はなかったかもしれない。もう少し減速し、「あそび」にも精を出してボチボチやれたらいいのになぁ…。
Haくんがスケーターに目をとめたときにはまだ4~5人しか来ていなかった。プレールームは広々として、“挑戦”してみるには丁度よい状況だった。
唐黷ススケーターを起こして、彼はぽぽろで初めてスケーターを漕ごうとしていた。恐らく見よう見まねの動作だろう。しかし、スケーターに片足を乗せもう一方の片足で漕ぎ、前に進めながら両手で舵を取るというのは難しい動作だ。
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スタッフみんなが黙ってこの光景を見守っている。スケーターを放って離れたHaくんに、かけ声が飛ぶ。「Haくん、すごーい、もう一回!!」再挑戦だ。
今度は友だちが転々と方々で遊んでいる中を漕いで進む。あっ、危ない!!ぶつかりそうになるところを、スイーッと避けて進む。やった!曲がった!!彼の中でも、ムムム…フムフム…とつぶやいているのかどうか分からないが、今度は壁にぶつかりそうになる!とすると、スルーッと舵をきって円を描いた。やった!それから彼はスイスイとプレールームを円を描いてスケーターを漕いで進む。
何回か回ってスケーターを床に置いたときにスタッフの大きな拍手!!自閉症の子どもたちは、「やったー!」と跳び上がるほど共感の喜びを表すことは少ないが、彼は確かにスタッフの喜びに応えて一瞬、こちらを一べつした。
彼の中では友だちがスイスイと乗りこなすスケーターへの興味や憧れのようなものがあったに違いない。その素振りさえ見せなかったのに、この日はスケーターを乗り回す友だちもいなく、がら空きだったこともあるかもしれない。こんな時に決まってドラマが起きるのだ。ムクムクと「やってみようかな?」という気持ちがわき上がったのに違いない。
おめでとう、Haくん。そして、ホントに温かく辛抱強く固唾をのんで見守ってくれたぽぽろのスタッフに、ありがとう。
さて、少しいつもの時間よりも遅れて始まった♪「うたってドンドン」。「おばけごっこ」でスタートしたもののみんな今ひとつ乗ってきません。
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運動会が終わったばっかりです。頑張ったので少し疲れが見えます。プレッシャーから開放されゆったりのんびりさせてよというみんなの気持ちが見え隠れするのです。こんな時は無理しません。「よーし、今日は自由に遊んでいいよ!のんびりしよう!」ということで、めいめいがのんびり好きなことをして遊びました。
Yoくんはキャッチボールが上手だったね。今日も背高のっぽのヤンボラOくんに首ったけ。灯台の上から見下ろすと世界が違って見えるよね。
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ヤンボラのTさんとKちゃん。「関係性は専門性を乗り越える」。2人は大の「仲良し」です。この日の初めてのお弁当「介護」。Kちゃんちゃんと食べてますねぇ。Tさんも落ち着いていますねぇ。この2人にもドラマがあったんだよね。
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来年の正月に全国障害児学校・学級全国学習交流集会が大阪の地で開かれるそうです。全国から1,500人を集めるそうです。その時に、再びこの歌を若い教員の皆さんと一緒に歌うそうです。この日は合唱の練習日でした。私が抜けて人手が心配なぽぽろの学童のために市障教副委員長のOさんが午後から助っ人できてくれました。
私にとっては絶対に忘れられない8編の曲。中でも「ここに光を」という曲を中心に話して欲しいということなので行かないわけにはいきません。この曲は私の尊敬する学生時代の1年先輩の向井さんの腰痛公務災害認定裁判のことを歌った曲です。
彼は全国で初めて障害児学校の教員の腰痛を公務災害と認定させた裁判の勝利判決を聞くことなく、志半ばで心筋梗塞により亡くなりました。その時に教職員組合の専従役員をしていた私は彼の遺志を奥さんとともに引き継ぎ、仲間とともに裁判をたたかいました。彼が勤めていた富田林養護学校のたくさんのお母さん方が「拝啓 裁判長せんせい様」という題名に象徴されるように、子どもと教育への思いを向井さんの裁判勝利へのねがいに重ねて自分たちの経験とことばで手紙にして届けてくれました。
私たちは、私たちの仕事による腰痛が公務災害として認められないような日本の社会(すすんだ北欧などに比べると介護労働者や家族への健康対策は20年遅れていると言われていた)を放置していて、子どもたちの介護者である家族、特に母親の健康が守れるはずがないという思いで、父母と一緒にたたかいました。そして、裁判を支援してくださった学者や研究者とともに介護者(障害児の場合は94%が母親)の健康調査にとりくみ社会問題にもしていきました。「親からの自立・子からの自立」「親も子もノーマライゼーションの実現を」というスローガンは、この中から生まれ、今も引き継がれています。ぽぽろの学童保育も親や家族のレスパイトケア(休息)という役割も担っています。「放課後型児童デイサービス」という全国一律の初の制度実現の可能性が切り開かれてきたいま、更に一緒に頑張りたいですね。
というわけで、『ここに光を』という裁判の報告集の表紙には向井さんの遺影を抱いた奥さんとともに背広姿の若き日の私、15年前の姿が…。お願いされたこの日の話のために、ぽぽろに持参していました。
ここからは余談です。この日の朝のことです。スタッフのSさんが髪の毛を引っ張ったMoちゃんに話していました。「髪を引っ張ると髪の毛が抜けるからやめてな!」と。丁度、その横を通った私にMoちゃんがまじめな顔をして言いました。「うらべさん、あのなワカメをいっぱい食べたらええねんで。」「はぁ~?…ナニ!ムムム、よし、Moちゃん待っときや!ええもん見せたるわ。」と持ち出したのが『ここに光を』でした。「どや!カッコええやろう?」とはしゃぐ私の横で、「ホンマヤ!」とばかりに表紙にじっと見入るMoちゃんでした。ひとしきり、この本の話題で盛り上がりました。今では「ここ(頭)に光が」当たり後光が差している私の変わり果てた頭にクスクス笑う姿があちこちにありました。
「うらべくん、もっと遊ばなあかんで!」という向井さんの激励の言葉が私への遺言となりました。目に見えにくいが故に周りに理解されにくい腰痛とたたかい、病床でのたうちまわっていた向井さん。失われた健康と時間を取り戻すかのようにアーチェリーにスキューバダイビング、茶道にと忙しく「あそび」も駆け抜けていった向井さん。学生時代に彼との出会いがなかったら今の私はなかったかもしれない。もう少し減速し、「あそび」にも精を出してボチボチやれたらいいのになぁ…。