シリーズ平成の「変」-NHKの不祥事とNHK受信料問題の場合
NHKの2008年度の予算と事業計画(案)が1月に所管する総務相に提出され、国会でも審議される。それによると、 事業収入は6,575億円、このうち受信料収入は6,350億円で3.6%の増加を見込んでいる。他方事業支出は、6,472億円、2.6%の増加を見込んでいるが、68億円は「財政安定のための繰越金」とし、今後「完全デジタル時代に対応する施策等の財源」に当てるとしている。
少なくても68億円もの金額が「繰越金」となる。「財政安定のため」としているが、要するに余剰金である。これが恒常化し、準制度化すると、世に言う「埋蔵金」となる。現在の公共放送制度が続く限り、来年以降も受信料収入は税金などと同様に入って来るし、若干の予備費は予備費として計上してあると思われるので、余剰金は国庫に収め、優先的に国債等の償還に当てるなど、財政の健全化のために使用されるべきであろう。公的債務が膨らみ、毎年度9-10兆円が利子支払いで消えている。
このような余剰金が政府関係機関や特別勘定などにあるのであれば、優先して国庫に返納し、債務を減らせば利子支払いに高額を毎年支払って行く必要はなくなる。
国民が公的年金の将来に不安を抱き、公的負担や医療費、そして石油高、物価高で困っている時代に、どの組織であれ余剰金を抱えて、繰越して行くのはどうか。
構図は、ガソリンの暫定税率と有料高速道路建設との関係によく似ている。1960年代、70年代の高度成長期にはそのような制度は必要であったであろう。しかし、自動車が急速に増加しても、暫定税率は維持され、道路特定財源は5兆円規模に膨らみ、有料高速道路事業などに特定して使用された。90年代以降のバブル経済の崩壊、資産デフレ期にも、暫定税率は維持され、道路事業に特定使用され続けた。その半分でも速やかに不良債処理対策に直接使用していれば、道路特定財源だけで10年間で30兆円前後の救済措置が実施でき、不良債問題はより速やかに収束した可能性がある。
NHKについても、1958年にテレビ放送が開始され、テレビ受信契約件数は、オリンピックなどを契機としてテレビが普及した68年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。この時期に料金を引き下げるか、或いは事業拡大を抑制し、余剰を国庫に返納するなどの措置が必要であったのであろう。収入が急速に増えれば、意識や経営が豊満になる恐れがある。その緩みが、近時明るみに出た一連の不祥事の背景としてあるのであろう。
NHKは、戦後の放送事業の発展に大きな役割を果たして来た。コマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)や報道番組(日本語海外放送を含む)の他、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組については、公共放送としての役割はあろう。NHKは公共放送として、そのような番組と放送技術に関する研究・開発など、最小規模に特化し、その他の事業を民営化し、民間や地方に開放して行くべきであろう。
各種の放送・情報事業が発展し、視聴者に多くの選択肢がある現在、公共放送に6,575億円の規模が必要とは思われない。民放5社の年間売上高は合計で約1.5兆程度であるのに対し、NHK事業はその4割余にも達する。総合放送、教育テレビに加え、衛星放送BSに3チャンネル以上も必要なのかも疑問だ。
また「総合」放送受信料に加え、BS対応のテレビについては別料金を設定し、視聴希望の有無に拘わらず徴収している。選べる時代に選べない。
それは、やはり「変」でしょう。 (Copy Right Reserved)
NHKの2008年度の予算と事業計画(案)が1月に所管する総務相に提出され、国会でも審議される。それによると、 事業収入は6,575億円、このうち受信料収入は6,350億円で3.6%の増加を見込んでいる。他方事業支出は、6,472億円、2.6%の増加を見込んでいるが、68億円は「財政安定のための繰越金」とし、今後「完全デジタル時代に対応する施策等の財源」に当てるとしている。
少なくても68億円もの金額が「繰越金」となる。「財政安定のため」としているが、要するに余剰金である。これが恒常化し、準制度化すると、世に言う「埋蔵金」となる。現在の公共放送制度が続く限り、来年以降も受信料収入は税金などと同様に入って来るし、若干の予備費は予備費として計上してあると思われるので、余剰金は国庫に収め、優先的に国債等の償還に当てるなど、財政の健全化のために使用されるべきであろう。公的債務が膨らみ、毎年度9-10兆円が利子支払いで消えている。
このような余剰金が政府関係機関や特別勘定などにあるのであれば、優先して国庫に返納し、債務を減らせば利子支払いに高額を毎年支払って行く必要はなくなる。
国民が公的年金の将来に不安を抱き、公的負担や医療費、そして石油高、物価高で困っている時代に、どの組織であれ余剰金を抱えて、繰越して行くのはどうか。
構図は、ガソリンの暫定税率と有料高速道路建設との関係によく似ている。1960年代、70年代の高度成長期にはそのような制度は必要であったであろう。しかし、自動車が急速に増加しても、暫定税率は維持され、道路特定財源は5兆円規模に膨らみ、有料高速道路事業などに特定して使用された。90年代以降のバブル経済の崩壊、資産デフレ期にも、暫定税率は維持され、道路事業に特定使用され続けた。その半分でも速やかに不良債処理対策に直接使用していれば、道路特定財源だけで10年間で30兆円前後の救済措置が実施でき、不良債問題はより速やかに収束した可能性がある。
NHKについても、1958年にテレビ放送が開始され、テレビ受信契約件数は、オリンピックなどを契機としてテレビが普及した68年には2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。この時期に料金を引き下げるか、或いは事業拡大を抑制し、余剰を国庫に返納するなどの措置が必要であったのであろう。収入が急速に増えれば、意識や経営が豊満になる恐れがある。その緩みが、近時明るみに出た一連の不祥事の背景としてあるのであろう。
NHKは、戦後の放送事業の発展に大きな役割を果たして来た。コマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)や報道番組(日本語海外放送を含む)の他、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組については、公共放送としての役割はあろう。NHKは公共放送として、そのような番組と放送技術に関する研究・開発など、最小規模に特化し、その他の事業を民営化し、民間や地方に開放して行くべきであろう。
各種の放送・情報事業が発展し、視聴者に多くの選択肢がある現在、公共放送に6,575億円の規模が必要とは思われない。民放5社の年間売上高は合計で約1.5兆程度であるのに対し、NHK事業はその4割余にも達する。総合放送、教育テレビに加え、衛星放送BSに3チャンネル以上も必要なのかも疑問だ。
また「総合」放送受信料に加え、BS対応のテレビについては別料金を設定し、視聴希望の有無に拘わらず徴収している。選べる時代に選べない。
それは、やはり「変」でしょう。 (Copy Right Reserved)