シリーズ平成の本音―争点先送り、上手な施政方針演説! (その3)
1月28日、通常国会が開会し、安倍首相の施政方針演説が行われ、国会論戦の火蓋が切られた。第一次安倍内閣の際とは異なり、その後不遇の経験を積み、見識を広めたこともあり、堂々としたスピーチであり、首相としての風格も備え心強い限りである。今後の健闘に期待したい。
演説では、冒頭で日本経済の危機、東日本震災からの復興の危機、安全保障・外交の危機、教育の危機の4つの危機に直面しているとして危機感を煽った上で、各分野での取り組みを表明している。
これらの分野は財界を含め国民受けする課題である。特に、経済分野ではドル高、円安方向に為替の是正が始まり、輸出産業や関連裾の産業を中心として株価が上がり、回復への動きが既に出てきているので、いわば受けの良い課題を全面に出しつつ、危機を煽り、与野党、国民の団結を訴えるという巧みな課題選択とアッピールであると言えよう。
しかし日本経済の危機等はバブル経済崩壊後先送りされて来た危機である一方、国民の最大の不安である年金不安、国の借金依存の財政危機、少子高齢化による統治機構の危機、地方過疎化の危機、公共事業の不誠実執行、沖縄の不安など、国民の日常生活や消費活動に密接に関係する問題にほとんど言及がなく、奇異である。7月の参議院選挙まではTPPへの交渉参加問題を含め、争点を先送る姿勢とも受け取られかねない。政治的には巧みであろうが、国民が何となく割り切れない印象を受けているのはそのような争点先送りのスピーチであるからではなかろうか。本格的な国会審議でこのような争点は表面化して来よう。
1、日本経済の危機、今に始まったことではない (その1で掲載)
2、東日本震災からの復興の危機とは何か (その2で掲載)
3、安全保障・外交の危機、煽るのは国益に反する
日本の尖閣諸島国有化を契機に同諸島の領有権問題が表面化し、中国が対日攻勢を強め日中関係が緊張している。また北朝鮮が長距離ロケットの打ち上げを行い、国連安保理での制裁に反発し、核実験の実施を準備するなど、緊張が高まっている。韓国とも竹島を巡って緊張が強まる可能性もある。
しかしこれら領土問題は、北方4島を含め、戦後引きずっている問題であり、旧自民党政権、自・公連立政権で先送りされて来たものであり、今に始まったことではない。唯一、尖閣諸島が東京都の購入の動きにより民主党政権下で国の所有に転換した。この時点での国有は避けることが望ましかったが、日本の同島国有化については旧来の経緯から、中国政府・共産党が国民に説明困難な状況になったので、反発を強めたと言えよう。しかし現自・公政権も尖閣諸島の領土権については民主党と同様の立場であろう。事実中国の行動は尋常ではなくなって来ている。
自・公政権は、民主党政権が沖縄の普天間空港移設地問題で米国との信頼関係を後退させたこと等が危機を招いたとしているが、旧自・公政権は普天間の辺野古移設について米国政府と合意していたものの、沖縄県民を十分納得させておらず、辺野古移設を決定できない状況だ。
政権が変われば政策が変わることは現政権の動向からも明らかであり、前民主党政権が普天間の辺野古移設で異なる立場を取ったとしても、それはそれとして米国も日本の地方政治問題、沖縄県民の希望として認識を共有し、両国間で問題を解決するという姿勢があっても良かったのではなかろうか。一方的な立場の押し付けでは双方交通の同盟関係は築けそうにない。
米国、特に米軍は沖縄を意識の上では第2次大戦で占領した地と認識しているとしても不思議はない。だからこそ、米兵による沖縄女性の暴行事件が後を絶たない。米兵が沖縄女性と子供をもうけた後母子を残して帰国してしまう事例が未だに見られ驚きだが、人道、人権面で軽く見られているのも、占領地意識が残っているからではなかろうか。米軍のこの種の件の相談窓口も沖縄女性の人権よりも米軍の立場を優先しているように映る。米国は、人権、民主化外交を世界各地で展開しているが、それは沖縄には届いていないようだ。日本の安全保障、防衛の専門家が日米同盟強化を強調するが、沖縄返還後も多くの女性が悩み、苦しんでいることを認識しているのであろうか。
安全保障・外交問題でいたずらに危機を煽って、日米同盟の強化や自衛力の強化を図れば相手国の疑心暗鬼を増幅させるだけで必ずしも国益にはならない。それはまた隣国ロシアに微妙な影響を与える。
安倍首相は近く訪米し、オバマ大統領と会談する予定となっている。しかしTPP交渉への参加問題についても政府与党は検討中であり、また普天間の辺野古移設についても沖縄県の了解を得ていない。何を伝えに行くのだろう。民主党政権発足直後に、辺野古移設問題について早期に決めないと日米同盟関係は悪化するとして激しく追求されていたのは記憶に新しいが、今回も明確な回答が出来ないことになりそうだ。それでも首脳間の信頼関係が築けた、同盟関係強化で合意したと言うのであろう。米国頼みの安全保障では心もとない。
4、教育の危機、家庭教育の欠如か中央統制的教育の弊害? (その4に掲載)
(2013.02.01.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
1月28日、通常国会が開会し、安倍首相の施政方針演説が行われ、国会論戦の火蓋が切られた。第一次安倍内閣の際とは異なり、その後不遇の経験を積み、見識を広めたこともあり、堂々としたスピーチであり、首相としての風格も備え心強い限りである。今後の健闘に期待したい。
演説では、冒頭で日本経済の危機、東日本震災からの復興の危機、安全保障・外交の危機、教育の危機の4つの危機に直面しているとして危機感を煽った上で、各分野での取り組みを表明している。
これらの分野は財界を含め国民受けする課題である。特に、経済分野ではドル高、円安方向に為替の是正が始まり、輸出産業や関連裾の産業を中心として株価が上がり、回復への動きが既に出てきているので、いわば受けの良い課題を全面に出しつつ、危機を煽り、与野党、国民の団結を訴えるという巧みな課題選択とアッピールであると言えよう。
しかし日本経済の危機等はバブル経済崩壊後先送りされて来た危機である一方、国民の最大の不安である年金不安、国の借金依存の財政危機、少子高齢化による統治機構の危機、地方過疎化の危機、公共事業の不誠実執行、沖縄の不安など、国民の日常生活や消費活動に密接に関係する問題にほとんど言及がなく、奇異である。7月の参議院選挙まではTPPへの交渉参加問題を含め、争点を先送る姿勢とも受け取られかねない。政治的には巧みであろうが、国民が何となく割り切れない印象を受けているのはそのような争点先送りのスピーチであるからではなかろうか。本格的な国会審議でこのような争点は表面化して来よう。
1、日本経済の危機、今に始まったことではない (その1で掲載)
2、東日本震災からの復興の危機とは何か (その2で掲載)
3、安全保障・外交の危機、煽るのは国益に反する
日本の尖閣諸島国有化を契機に同諸島の領有権問題が表面化し、中国が対日攻勢を強め日中関係が緊張している。また北朝鮮が長距離ロケットの打ち上げを行い、国連安保理での制裁に反発し、核実験の実施を準備するなど、緊張が高まっている。韓国とも竹島を巡って緊張が強まる可能性もある。
しかしこれら領土問題は、北方4島を含め、戦後引きずっている問題であり、旧自民党政権、自・公連立政権で先送りされて来たものであり、今に始まったことではない。唯一、尖閣諸島が東京都の購入の動きにより民主党政権下で国の所有に転換した。この時点での国有は避けることが望ましかったが、日本の同島国有化については旧来の経緯から、中国政府・共産党が国民に説明困難な状況になったので、反発を強めたと言えよう。しかし現自・公政権も尖閣諸島の領土権については民主党と同様の立場であろう。事実中国の行動は尋常ではなくなって来ている。
自・公政権は、民主党政権が沖縄の普天間空港移設地問題で米国との信頼関係を後退させたこと等が危機を招いたとしているが、旧自・公政権は普天間の辺野古移設について米国政府と合意していたものの、沖縄県民を十分納得させておらず、辺野古移設を決定できない状況だ。
政権が変われば政策が変わることは現政権の動向からも明らかであり、前民主党政権が普天間の辺野古移設で異なる立場を取ったとしても、それはそれとして米国も日本の地方政治問題、沖縄県民の希望として認識を共有し、両国間で問題を解決するという姿勢があっても良かったのではなかろうか。一方的な立場の押し付けでは双方交通の同盟関係は築けそうにない。
米国、特に米軍は沖縄を意識の上では第2次大戦で占領した地と認識しているとしても不思議はない。だからこそ、米兵による沖縄女性の暴行事件が後を絶たない。米兵が沖縄女性と子供をもうけた後母子を残して帰国してしまう事例が未だに見られ驚きだが、人道、人権面で軽く見られているのも、占領地意識が残っているからではなかろうか。米軍のこの種の件の相談窓口も沖縄女性の人権よりも米軍の立場を優先しているように映る。米国は、人権、民主化外交を世界各地で展開しているが、それは沖縄には届いていないようだ。日本の安全保障、防衛の専門家が日米同盟強化を強調するが、沖縄返還後も多くの女性が悩み、苦しんでいることを認識しているのであろうか。
安全保障・外交問題でいたずらに危機を煽って、日米同盟の強化や自衛力の強化を図れば相手国の疑心暗鬼を増幅させるだけで必ずしも国益にはならない。それはまた隣国ロシアに微妙な影響を与える。
安倍首相は近く訪米し、オバマ大統領と会談する予定となっている。しかしTPP交渉への参加問題についても政府与党は検討中であり、また普天間の辺野古移設についても沖縄県の了解を得ていない。何を伝えに行くのだろう。民主党政権発足直後に、辺野古移設問題について早期に決めないと日米同盟関係は悪化するとして激しく追求されていたのは記憶に新しいが、今回も明確な回答が出来ないことになりそうだ。それでも首脳間の信頼関係が築けた、同盟関係強化で合意したと言うのであろう。米国頼みの安全保障では心もとない。
4、教育の危機、家庭教育の欠如か中央統制的教育の弊害? (その4に掲載)
(2013.02.01.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)