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シリーズ平成の本音―甘い情勢認識と‘積極的平和主義’の代償  ( 前編 )

2015-02-04 | Weblog
シリーズ平成の本音―甘い情勢認識と‘積極的平和主義’の代償  ( 前編 )
 1月20日午後(日本時間)、“日本政府及び日本国民へ”として「イスラム国」(ISIS)からと見られるビデオメッセージがインターネット動画YouYubeに投稿され、人質としている日本人2名(湯川、後藤両氏)をひざまずかせ、“身代金2億ドルを72時間以内に支払わなければ殺害する”旨表明した。動画に映る男は、背丈や、左手にナイフを持ち、拳銃をホールダーに吊るしており、手の動きや、喋る時に首を左右にかしげる仕草、英語のなまりなどから、昨年米国人や英国人を前にして同様の通告をし、その後殺害した人物と酷似している。営利目的にせよ、政治的な目的にせよ、許し難い国際犯罪行為だ。
 この戦闘員姿の人物は、“日本の首相よ”と呼び掛け、“「イスラム国」から8500キロ以上も離れているのに、自ら進んでイスラム国に対するこの十字軍に参加した”としつつ、2人の命は2億ドルとした。更に日本国民に呼び掛け、“日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを払うという愚かな選択をした”とし、命を救うための金額を2億ドルをとした理由に言及しつつ、期限は72時間などと迫った。
 安倍首相は、1月16日から1月21日までの予定でエジプト、イスラエル、パレスチナ等の中東諸国を訪問中であった。そして1月17日、最初の訪問国エジプトの経済合同委員会において演説し、「中東全体を視野に入れ、人道支援、インフラ整備など非軍事の分野で、25億ドル相当の支援」を新たに実施することを表明すると共に、イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISIL(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるためとしつつ、「人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束した。
 その2日後に、「イスラム国」側から首相に宛てた2人の日本人人質に対する上記の身代金要求と殺害予告が行われた。
 そして「イスラム国」(ISIS)側は期限までに身代金は支払わられないとの心証を得たのだろうか、1月24日、後藤氏が湯川氏の遺体と見られる写真を持つ映像をインターネット動画サイトで公開しつつ、後藤氏が英語で、身代金ではなく、ヨルダンの首都アンマンで連続ホテル自爆テロ事件に関わった‘サジダ・リシャウィ死刑囚’を釈放するようにとの「イスラム国」側の要求を伝えた。次いで1月27日午後11時頃、後藤氏が2014年12月にISの捕虜となったヨルダン軍パイロットと見られる男性の写真を手にし、“私には24時間しか残されていない”と述べ、‘リシャウィ死刑囚の釈放’を求めた。1月29日、「イスラム国」側は、リシャウィ死刑囚(ヨルダンで収監中)を29日日没(現地時間)までにトルコとIS支配地域との境界に連れてくるよう要求する声明をインターネットに公開した。しかしヨルダン政府側は、捕虜となっている同国パイロットとの交換を優先しつつ、同パイロットの安否の確認が得られない限り応じないとしていた。しかし2月1日午前5時過ぎ、「イスラム国」側は、“日本政府へのメッセージ”として、最初に登場した戦闘員と見られる男が“日本が有志連合に加担していること”を非難した後、後藤氏を殺害したとする映像をインターネットに公開した。そして男は、“日本の愚かな決定”により後藤氏は死ぬが、“今後日本の国民は何処にいても殺戮されるだろう”と結んだ。日本は今回の事件の対応で、2人の尊い命を失った上、世界における日本人の安全を著しく低下させる結果となった。
日本人2名の「イスラム国」側による人質事件は、大変残念ながらこうして最悪の結末となった。
 このような犯罪行為が許されて良いものではない。しかし同時に次のような課題もある。
 1、甘い国際情勢認識と危機管理意識の欠如
昨年8月に湯川氏がいわゆる“イスラム国”領内で捕まっていることや米国や英国のジ
ャーナリストが捕まり、米、英が要求に応じなかったため処刑されたことなどは広く知られていたところであり、また、その救出のために昨年10月に後藤氏が“イスラム国”領内入って捕まり、11月頃より家族に対し10億円、或いは20億円にのぼる身代金を要求されていたことも外務、首相官邸サイドは知っていたとしている。
 このような状況にありながら、首相が中東に出向き、いわば“イスラム国”の面前で「ISIL(“イスラム国”)と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束すれば、“イスラム国”を刺激し、人質となっている2人の日本人の命を危うくすることは十分想定出来たはずである。
 日本が、国際テロとの戦いに各国と協力することは当然であろう。しかし“イスラム国”に対し、米、英両国を始めジョルダンなど50カ国近くの有志連合が“イスラム国”掃討のため連日のように空爆している最中に、日本が米国との同盟関係を強化し、集団的自衛権行使の実現を推進すると共に、中東での反“イスラム国”諸国を支援することを表明すればどのような結果を招くかを十分認識すべきであろう。
 事前の地域情勢判断の甘さと危機管理意識の欠如を指摘されても仕方がない。
更に後藤氏殺害の映像を受けて、安倍首相は安保関係閣僚会議の後、記者団に対し、これを非難すると共に、「テロリストたちを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携する」としつつ、「食糧支援、医療支援などの中東への人道支援を更に拡充する」とした。テロを容認出来ないことについては全く同感であるが、「イスラム国」側が、後藤氏を殺害した後、“今後日本の国民は何処にいても殺戮されるだろう”としており、日本人への危険が高まっている時に、「中東への支援を拡充する」との趣旨を何故この時点で表明するのだろうか。日本は今回の事件の対応で、2人の尊い命を失った上、世界における日本人の安全をも悪化させる結果となった。もう少ししたかな熟慮があって良いのかもしれない。世界における日本人の安全確保において政府首脳の言動が大きな影響を与えるものと予想され、日本が今後どのように外交を展開し、対外説明して行くのかなど、課題が残った。
 2、「積極的平和主義」等の犠牲と代償
 安倍政権は、ベトナムからインド、トルコに至る諸国を‘自由と繁栄の弧’とし、これら諸国との関係を増進すると共に、世界の平和と安定に積極的に貢献するという‘積極的平和主義’を推進しようとしている。今回の中東訪問もその一環と見られ、これら諸国に総額25億ドルの支援を表明すると共に、「ISIL(イスラム国)と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度の支援」を約束した。
 このような外交姿勢は日本にとって一つの選択肢であろうが、‘積極的平和主義’には国民の大きな犠牲や代償が必要となることを国民は認識すべきであろう。今回の事件からそれが国民の目に明らかになった。
 また安倍政権は、日米同盟関係の強化を図り、更に集団的自衛権の行使を可能にし、海外での軍事行動には参加しないまでも、世界の平和と安全に米国と行動を共にし、‘積極的平和主義’を推進する方針としている。日米同盟関係の強化も日本にとって選択肢の一つであろうが、そのような対外姿勢により、日本は米国の外交、安全保障政策と同一視され、犠牲や代償を強いられることになろう。国民はそれを十分に認識すべきであろう。それ以上に、自・公政権は、このような国家目的の遂行のために、国民に犠牲、代償を強いることがあることを説明する責任があろう。同時に国民の生命、財産に大きな犠牲を強いる以上、政権側には結果責任を取る覚悟が必要であろう。
 そして日本がどのような対外姿勢をとるかは、最終的には国民が選択することになるので、国民の一人一人が日本の取るべき道を選択し、明らかにする必要があろう。
 なお、1月20日に“イスラム国”側から身代金要求がなされてから、日本政府は米国を含む関係各国と連絡を取り合ったが、米国が早い段階から‘テロとの戦いに日本と連携し対応する’旨表明する一方、国務省報道官が‘イスラム国側の要求に応じるべきではない’ことを再三にわたり内外に表明していたことは、心強かった反面、自国民なら兎も角、日本国民の生命が掛かっている時に、他国の手を縛り、日本人の命を危うくするような言動を表明することは踏み込み過ぎではなかろうか。日本側が、「イスラム国」が“有志連合による十字軍”と非難し、敵対関係にある諸国に協力や情報提供を求めることは良いとしても、それを公にし、米国が‘連携’を約束することにより、日本の反「イスラム国」色が際立つ結果となったと言えよう。
 またシリア、イラクに隣接し、日本と友好関係にあるヨルダンに現地対策室を設けたことは一見適切のように見えるが、ヨルダンが‘有志連合’による空爆に参加しており、「イスラム国」にとっては敵対国であるので、情勢判断の甘さが指摘されても仕方がないであろう。
 3、国民の側の危機管理意識と自己責任
同時に、“イスラム国”の支配地域に足を踏み入れた2人の日本人についても、地域情勢の認識の甘さや危機管理意識の欠如、安易さが指摘されると共に、後藤氏自身が同地域に向かう前にビデオで表明していた通り、無謀な行為に対する自己責任意識をより強く持つことが望まれる。
今回犠牲になられた日本人及びそのご遺族には、心から哀悼の意を表したい。このような残虐な国際犯罪を遂行する“イスラム国”の行為を容認することは出来ない。
しかし“イスラム国”域内は内戦やテロ活動が続く一方、米英などの‘有志連合’による空爆が連日のように行われている戦闘地域であり、著しく危険な地域であることは分りきっていることである。そのような地に赴く行動の責任は重く、今回のような行為は容認出来ないが、残念ながらその結果は本人自身が受けていることを認識すべきであろう。
なお、湯川氏が設立した‘民間軍事会社’とは一体どのような目的があるのか疑問だ。湯川氏自身も、自動小銃を保持して“イスラム国”領内に入り捕虜となったと見られている。民間戦闘要員や民兵の派遣・訓練、軍事物資の提供を“イスラム国”などに行うためなのか。警備会社ならともかく、‘民間軍事’事業の内容如何では非社会性も疑われるところであり、日本において認めて良いのか疑問は多い。また後藤氏については、家族へ身代金要求が来ているなどが明らかにされているが、湯川氏については‘民間軍事会社’へのこのような要求があったのか、或いは昨年8月以降救出のための努力はなされていたのかなど一切明らかにされていない。会社側に説明責任があるのではなかろうか。
 4、余り語られないもう一方の攻撃      ( 後編に掲載)
  (2015.2.1.)(All Rights Reserved.)
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シリーズ平成の本音―甘い情勢認識と‘積極的平和主義’の代償  ( 前編 )

2015-02-04 | Weblog
シリーズ平成の本音―甘い情勢認識と‘積極的平和主義’の代償  ( 前編 )
 1月20日午後(日本時間)、“日本政府及び日本国民へ”として「イスラム国」(ISIS)からと見られるビデオメッセージがインターネット動画YouYubeに投稿され、人質としている日本人2名(湯川、後藤両氏)をひざまずかせ、“身代金2億ドルを72時間以内に支払わなければ殺害する”旨表明した。動画に映る男は、背丈や、左手にナイフを持ち、拳銃をホールダーに吊るしており、手の動きや、喋る時に首を左右にかしげる仕草、英語のなまりなどから、昨年米国人や英国人を前にして同様の通告をし、その後殺害した人物と酷似している。営利目的にせよ、政治的な目的にせよ、許し難い国際犯罪行為だ。
 この戦闘員姿の人物は、“日本の首相よ”と呼び掛け、“「イスラム国」から8500キロ以上も離れているのに、自ら進んでイスラム国に対するこの十字軍に参加した”としつつ、2人の命は2億ドルとした。更に日本国民に呼び掛け、“日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを払うという愚かな選択をした”とし、命を救うための金額を2億ドルをとした理由に言及しつつ、期限は72時間などと迫った。
 安倍首相は、1月16日から1月21日までの予定でエジプト、イスラエル、パレスチナ等の中東諸国を訪問中であった。そして1月17日、最初の訪問国エジプトの経済合同委員会において演説し、「中東全体を視野に入れ、人道支援、インフラ整備など非軍事の分野で、25億ドル相当の支援」を新たに実施することを表明すると共に、イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISIL(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるためとしつつ、「人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束した。
 その2日後に、「イスラム国」側から首相に宛てた2人の日本人人質に対する上記の身代金要求と殺害予告が行われた。
 そして「イスラム国」(ISIS)側は期限までに身代金は支払わられないとの心証を得たのだろうか、1月24日、後藤氏が湯川氏の遺体と見られる写真を持つ映像をインターネット動画サイトで公開しつつ、後藤氏が英語で、身代金ではなく、ヨルダンの首都アンマンで連続ホテル自爆テロ事件に関わった‘サジダ・リシャウィ死刑囚’を釈放するようにとの「イスラム国」側の要求を伝えた。次いで1月27日午後11時頃、後藤氏が2014年12月にISの捕虜となったヨルダン軍パイロットと見られる男性の写真を手にし、“私には24時間しか残されていない”と述べ、‘リシャウィ死刑囚の釈放’を求めた。1月29日、「イスラム国」側は、リシャウィ死刑囚(ヨルダンで収監中)を29日日没(現地時間)までにトルコとIS支配地域との境界に連れてくるよう要求する声明をインターネットに公開した。しかしヨルダン政府側は、捕虜となっている同国パイロットとの交換を優先しつつ、同パイロットの安否の確認が得られない限り応じないとしていた。しかし2月1日午前5時過ぎ、「イスラム国」側は、“日本政府へのメッセージ”として、最初に登場した戦闘員と見られる男が“日本が有志連合に加担していること”を非難した後、後藤氏を殺害したとする映像をインターネットに公開した。そして男は、“日本の愚かな決定”により後藤氏は死ぬが、“今後日本の国民は何処にいても殺戮されるだろう”と結んだ。日本は今回の事件の対応で、2人の尊い命を失った上、世界における日本人の安全を著しく低下させる結果となった。
日本人2名の「イスラム国」側による人質事件は、大変残念ながらこうして最悪の結末となった。
 このような犯罪行為が許されて良いものではない。しかし同時に次のような課題もある。
 1、甘い国際情勢認識と危機管理意識の欠如
昨年8月に湯川氏がいわゆる“イスラム国”領内で捕まっていることや米国や英国のジ
ャーナリストが捕まり、米、英が要求に応じなかったため処刑されたことなどは広く知られていたところであり、また、その救出のために昨年10月に後藤氏が“イスラム国”領内入って捕まり、11月頃より家族に対し10億円、或いは20億円にのぼる身代金を要求されていたことも外務、首相官邸サイドは知っていたとしている。
 このような状況にありながら、首相が中東に出向き、いわば“イスラム国”の面前で「ISIL(“イスラム国”)と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束すれば、“イスラム国”を刺激し、人質となっている2人の日本人の命を危うくすることは十分想定出来たはずである。
 日本が、国際テロとの戦いに各国と協力することは当然であろう。しかし“イスラム国”に対し、米、英両国を始めジョルダンなど50カ国近くの有志連合が“イスラム国”掃討のため連日のように空爆している最中に、日本が米国との同盟関係を強化し、集団的自衛権行使の実現を推進すると共に、中東での反“イスラム国”諸国を支援することを表明すればどのような結果を招くかを十分認識すべきであろう。
 事前の地域情勢判断の甘さと危機管理意識の欠如を指摘されても仕方がない。
更に後藤氏殺害の映像を受けて、安倍首相は安保関係閣僚会議の後、記者団に対し、これを非難すると共に、「テロリストたちを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携する」としつつ、「食糧支援、医療支援などの中東への人道支援を更に拡充する」とした。テロを容認出来ないことについては全く同感であるが、「イスラム国」側が、後藤氏を殺害した後、“今後日本の国民は何処にいても殺戮されるだろう”としており、日本人への危険が高まっている時に、「中東への支援を拡充する」との趣旨を何故この時点で表明するのだろうか。日本は今回の事件の対応で、2人の尊い命を失った上、世界における日本人の安全をも悪化させる結果となった。もう少ししたかな熟慮があって良いのかもしれない。世界における日本人の安全確保において政府首脳の言動が大きな影響を与えるものと予想され、日本が今後どのように外交を展開し、対外説明して行くのかなど、課題が残った。
 2、「積極的平和主義」等の犠牲と代償
 安倍政権は、ベトナムからインド、トルコに至る諸国を‘自由と繁栄の弧’とし、これら諸国との関係を増進すると共に、世界の平和と安定に積極的に貢献するという‘積極的平和主義’を推進しようとしている。今回の中東訪問もその一環と見られ、これら諸国に総額25億ドルの支援を表明すると共に、「ISIL(イスラム国)と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度の支援」を約束した。
 このような外交姿勢は日本にとって一つの選択肢であろうが、‘積極的平和主義’には国民の大きな犠牲や代償が必要となることを国民は認識すべきであろう。今回の事件からそれが国民の目に明らかになった。
 また安倍政権は、日米同盟関係の強化を図り、更に集団的自衛権の行使を可能にし、海外での軍事行動には参加しないまでも、世界の平和と安全に米国と行動を共にし、‘積極的平和主義’を推進する方針としている。日米同盟関係の強化も日本にとって選択肢の一つであろうが、そのような対外姿勢により、日本は米国の外交、安全保障政策と同一視され、犠牲や代償を強いられることになろう。国民はそれを十分に認識すべきであろう。それ以上に、自・公政権は、このような国家目的の遂行のために、国民に犠牲、代償を強いることがあることを説明する責任があろう。同時に国民の生命、財産に大きな犠牲を強いる以上、政権側には結果責任を取る覚悟が必要であろう。
 そして日本がどのような対外姿勢をとるかは、最終的には国民が選択することになるので、国民の一人一人が日本の取るべき道を選択し、明らかにする必要があろう。
 なお、1月20日に“イスラム国”側から身代金要求がなされてから、日本政府は米国を含む関係各国と連絡を取り合ったが、米国が早い段階から‘テロとの戦いに日本と連携し対応する’旨表明する一方、国務省報道官が‘イスラム国側の要求に応じるべきではない’ことを再三にわたり内外に表明していたことは、心強かった反面、自国民なら兎も角、日本国民の生命が掛かっている時に、他国の手を縛り、日本人の命を危うくするような言動を表明することは踏み込み過ぎではなかろうか。日本側が、「イスラム国」が“有志連合による十字軍”と非難し、敵対関係にある諸国に協力や情報提供を求めることは良いとしても、それを公にし、米国が‘連携’を約束することにより、日本の反「イスラム国」色が際立つ結果となったと言えよう。
 またシリア、イラクに隣接し、日本と友好関係にあるヨルダンに現地対策室を設けたことは一見適切のように見えるが、ヨルダンが‘有志連合’による空爆に参加しており、「イスラム国」にとっては敵対国であるので、情勢判断の甘さが指摘されても仕方がないであろう。
 3、国民の側の危機管理意識と自己責任
同時に、“イスラム国”の支配地域に足を踏み入れた2人の日本人についても、地域情勢の認識の甘さや危機管理意識の欠如、安易さが指摘されると共に、後藤氏自身が同地域に向かう前にビデオで表明していた通り、無謀な行為に対する自己責任意識をより強く持つことが望まれる。
今回犠牲になられた日本人及びそのご遺族には、心から哀悼の意を表したい。このような残虐な国際犯罪を遂行する“イスラム国”の行為を容認することは出来ない。
しかし“イスラム国”域内は内戦やテロ活動が続く一方、米英などの‘有志連合’による空爆が連日のように行われている戦闘地域であり、著しく危険な地域であることは分りきっていることである。そのような地に赴く行動の責任は重く、今回のような行為は容認出来ないが、残念ながらその結果は本人自身が受けていることを認識すべきであろう。
なお、湯川氏が設立した‘民間軍事会社’とは一体どのような目的があるのか疑問だ。湯川氏自身も、自動小銃を保持して“イスラム国”領内に入り捕虜となったと見られている。民間戦闘要員や民兵の派遣・訓練、軍事物資の提供を“イスラム国”などに行うためなのか。警備会社ならともかく、‘民間軍事’事業の内容如何では非社会性も疑われるところであり、日本において認めて良いのか疑問は多い。また後藤氏については、家族へ身代金要求が来ているなどが明らかにされているが、湯川氏については‘民間軍事会社’へのこのような要求があったのか、或いは昨年8月以降救出のための努力はなされていたのかなど一切明らかにされていない。会社側に説明責任があるのではなかろうか。
 4、余り語られないもう一方の攻撃      ( 後編に掲載)
  (2015.2.1.)(All Rights Reserved.)
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シリーズ平成の本音―甘い情勢認識と‘積極的平和主義’の代償  ( 前編 )
 1月20日午後(日本時間)、“日本政府及び日本国民へ”として「イスラム国」(ISIS)からと見られるビデオメッセージがインターネット動画YouYubeに投稿され、人質としている日本人2名(湯川、後藤両氏)をひざまずかせ、“身代金2億ドルを72時間以内に支払わなければ殺害する”旨表明した。動画に映る男は、背丈や、左手にナイフを持ち、拳銃をホールダーに吊るしており、手の動きや、喋る時に首を左右にかしげる仕草、英語のなまりなどから、昨年米国人や英国人を前にして同様の通告をし、その後殺害した人物と酷似している。営利目的にせよ、政治的な目的にせよ、許し難い国際犯罪行為だ。
 この戦闘員姿の人物は、“日本の首相よ”と呼び掛け、“「イスラム国」から8500キロ以上も離れているのに、自ら進んでイスラム国に対するこの十字軍に参加した”としつつ、2人の命は2億ドルとした。更に日本国民に呼び掛け、“日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを払うという愚かな選択をした”とし、命を救うための金額を2億ドルをとした理由に言及しつつ、期限は72時間などと迫った。
 安倍首相は、1月16日から1月21日までの予定でエジプト、イスラエル、パレスチナ等の中東諸国を訪問中であった。そして1月17日、最初の訪問国エジプトの経済合同委員会において演説し、「中東全体を視野に入れ、人道支援、インフラ整備など非軍事の分野で、25億ドル相当の支援」を新たに実施することを表明すると共に、イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISIL(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるためとしつつ、「人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束した。
 その2日後に、「イスラム国」側から首相に宛てた2人の日本人人質に対する上記の身代金要求と殺害予告が行われた。
 そして「イスラム国」(ISIS)側は期限までに身代金は支払わられないとの心証を得たのだろうか、1月24日、後藤氏が湯川氏の遺体と見られる写真を持つ映像をインターネット動画サイトで公開しつつ、後藤氏が英語で、身代金ではなく、ヨルダンの首都アンマンで連続ホテル自爆テロ事件に関わった‘サジダ・リシャウィ死刑囚’を釈放するようにとの「イスラム国」側の要求を伝えた。次いで1月27日午後11時頃、後藤氏が2014年12月にISの捕虜となったヨルダン軍パイロットと見られる男性の写真を手にし、“私には24時間しか残されていない”と述べ、‘リシャウィ死刑囚の釈放’を求めた。1月29日、「イスラム国」側は、リシャウィ死刑囚(ヨルダンで収監中)を29日日没(現地時間)までにトルコとIS支配地域との境界に連れてくるよう要求する声明をインターネットに公開した。しかしヨルダン政府側は、捕虜となっている同国パイロットとの交換を優先しつつ、同パイロットの安否の確認が得られない限り応じないとしていた。しかし2月1日午前5時過ぎ、「イスラム国」側は、“日本政府へのメッセージ”として、最初に登場した戦闘員と見られる男が“日本が有志連合に加担していること”を非難した後、後藤氏を殺害したとする映像をインターネットに公開した。そして男は、“日本の愚かな決定”により後藤氏は死ぬが、“今後日本の国民は何処にいても殺戮されるだろう”と結んだ。日本は今回の事件の対応で、2人の尊い命を失った上、世界における日本人の安全を著しく低下させる結果となった。
日本人2名の「イスラム国」側による人質事件は、大変残念ながらこうして最悪の結末となった。
 このような犯罪行為が許されて良いものではない。しかし同時に次のような課題もある。
 1、甘い国際情勢認識と危機管理意識の欠如
昨年8月に湯川氏がいわゆる“イスラム国”領内で捕まっていることや米国や英国のジ
ャーナリストが捕まり、米、英が要求に応じなかったため処刑されたことなどは広く知られていたところであり、また、その救出のために昨年10月に後藤氏が“イスラム国”領内入って捕まり、11月頃より家族に対し10億円、或いは20億円にのぼる身代金を要求されていたことも外務、首相官邸サイドは知っていたとしている。
 このような状況にありながら、首相が中東に出向き、いわば“イスラム国”の面前で「ISIL(“イスラム国”)と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束すれば、“イスラム国”を刺激し、人質となっている2人の日本人の命を危うくすることは十分想定出来たはずである。
 日本が、国際テロとの戦いに各国と協力することは当然であろう。しかし“イスラム国”に対し、米、英両国を始めジョルダンなど50カ国近くの有志連合が“イスラム国”掃討のため連日のように空爆している最中に、日本が米国との同盟関係を強化し、集団的自衛権行使の実現を推進すると共に、中東での反“イスラム国”諸国を支援することを表明すればどのような結果を招くかを十分認識すべきであろう。
 事前の地域情勢判断の甘さと危機管理意識の欠如を指摘されても仕方がない。
更に後藤氏殺害の映像を受けて、安倍首相は安保関係閣僚会議の後、記者団に対し、これを非難すると共に、「テロリストたちを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携する」としつつ、「食糧支援、医療支援などの中東への人道支援を更に拡充する」とした。テロを容認出来ないことについては全く同感であるが、「イスラム国」側が、後藤氏を殺害した後、“今後日本の国民は何処にいても殺戮されるだろう”としており、日本人への危険が高まっている時に、「中東への支援を拡充する」との趣旨を何故この時点で表明するのだろうか。日本は今回の事件の対応で、2人の尊い命を失った上、世界における日本人の安全をも悪化させる結果となった。もう少ししたかな熟慮があって良いのかもしれない。世界における日本人の安全確保において政府首脳の言動が大きな影響を与えるものと予想され、日本が今後どのように外交を展開し、対外説明して行くのかなど、課題が残った。
 2、「積極的平和主義」等の犠牲と代償
 安倍政権は、ベトナムからインド、トルコに至る諸国を‘自由と繁栄の弧’とし、これら諸国との関係を増進すると共に、世界の平和と安定に積極的に貢献するという‘積極的平和主義’を推進しようとしている。今回の中東訪問もその一環と見られ、これら諸国に総額25億ドルの支援を表明すると共に、「ISIL(イスラム国)と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度の支援」を約束した。
 このような外交姿勢は日本にとって一つの選択肢であろうが、‘積極的平和主義’には国民の大きな犠牲や代償が必要となることを国民は認識すべきであろう。今回の事件からそれが国民の目に明らかになった。
 また安倍政権は、日米同盟関係の強化を図り、更に集団的自衛権の行使を可能にし、海外での軍事行動には参加しないまでも、世界の平和と安全に米国と行動を共にし、‘積極的平和主義’を推進する方針としている。日米同盟関係の強化も日本にとって選択肢の一つであろうが、そのような対外姿勢により、日本は米国の外交、安全保障政策と同一視され、犠牲や代償を強いられることになろう。国民はそれを十分に認識すべきであろう。それ以上に、自・公政権は、このような国家目的の遂行のために、国民に犠牲、代償を強いることがあることを説明する責任があろう。同時に国民の生命、財産に大きな犠牲を強いる以上、政権側には結果責任を取る覚悟が必要であろう。
 そして日本がどのような対外姿勢をとるかは、最終的には国民が選択することになるので、国民の一人一人が日本の取るべき道を選択し、明らかにする必要があろう。
 なお、1月20日に“イスラム国”側から身代金要求がなされてから、日本政府は米国を含む関係各国と連絡を取り合ったが、米国が早い段階から‘テロとの戦いに日本と連携し対応する’旨表明する一方、国務省報道官が‘イスラム国側の要求に応じるべきではない’ことを再三にわたり内外に表明していたことは、心強かった反面、自国民なら兎も角、日本国民の生命が掛かっている時に、他国の手を縛り、日本人の命を危うくするような言動を表明することは踏み込み過ぎではなかろうか。日本側が、「イスラム国」が“有志連合による十字軍”と非難し、敵対関係にある諸国に協力や情報提供を求めることは良いとしても、それを公にし、米国が‘連携’を約束することにより、日本の反「イスラム国」色が際立つ結果となったと言えよう。
 またシリア、イラクに隣接し、日本と友好関係にあるヨルダンに現地対策室を設けたことは一見適切のように見えるが、ヨルダンが‘有志連合’による空爆に参加しており、「イスラム国」にとっては敵対国であるので、情勢判断の甘さが指摘されても仕方がないであろう。
 3、国民の側の危機管理意識と自己責任
同時に、“イスラム国”の支配地域に足を踏み入れた2人の日本人についても、地域情勢の認識の甘さや危機管理意識の欠如、安易さが指摘されると共に、後藤氏自身が同地域に向かう前にビデオで表明していた通り、無謀な行為に対する自己責任意識をより強く持つことが望まれる。
今回犠牲になられた日本人及びそのご遺族には、心から哀悼の意を表したい。このような残虐な国際犯罪を遂行する“イスラム国”の行為を容認することは出来ない。
しかし“イスラム国”域内は内戦やテロ活動が続く一方、米英などの‘有志連合’による空爆が連日のように行われている戦闘地域であり、著しく危険な地域であることは分りきっていることである。そのような地に赴く行動の責任は重く、今回のような行為は容認出来ないが、残念ながらその結果は本人自身が受けていることを認識すべきであろう。
なお、湯川氏が設立した‘民間軍事会社’とは一体どのような目的があるのか疑問だ。湯川氏自身も、自動小銃を保持して“イスラム国”領内に入り捕虜となったと見られている。民間戦闘要員や民兵の派遣・訓練、軍事物資の提供を“イスラム国”などに行うためなのか。警備会社ならともかく、‘民間軍事’事業の内容如何では非社会性も疑われるところであり、日本において認めて良いのか疑問は多い。また後藤氏については、家族へ身代金要求が来ているなどが明らかにされているが、湯川氏については‘民間軍事会社’へのこのような要求があったのか、或いは昨年8月以降救出のための努力はなされていたのかなど一切明らかにされていない。会社側に説明責任があるのではなかろうか。
 4、余り語られないもう一方の攻撃      ( 後編に掲載)
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シリーズ平成の本音―甘い情勢認識と‘積極的平和主義’の代償  ( 前編 )

2015-02-04 | Weblog
シリーズ平成の本音―甘い情勢認識と‘積極的平和主義’の代償  ( 前編 )
 1月20日午後(日本時間)、“日本政府及び日本国民へ”として「イスラム国」(ISIS)からと見られるビデオメッセージがインターネット動画YouYubeに投稿され、人質としている日本人2名(湯川、後藤両氏)をひざまずかせ、“身代金2億ドルを72時間以内に支払わなければ殺害する”旨表明した。動画に映る男は、背丈や、左手にナイフを持ち、拳銃をホールダーに吊るしており、手の動きや、喋る時に首を左右にかしげる仕草、英語のなまりなどから、昨年米国人や英国人を前にして同様の通告をし、その後殺害した人物と酷似している。営利目的にせよ、政治的な目的にせよ、許し難い国際犯罪行為だ。
 この戦闘員姿の人物は、“日本の首相よ”と呼び掛け、“「イスラム国」から8500キロ以上も離れているのに、自ら進んでイスラム国に対するこの十字軍に参加した”としつつ、2人の命は2億ドルとした。更に日本国民に呼び掛け、“日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを払うという愚かな選択をした”とし、命を救うための金額を2億ドルをとした理由に言及しつつ、期限は72時間などと迫った。
 安倍首相は、1月16日から1月21日までの予定でエジプト、イスラエル、パレスチナ等の中東諸国を訪問中であった。そして1月17日、最初の訪問国エジプトの経済合同委員会において演説し、「中東全体を視野に入れ、人道支援、インフラ整備など非軍事の分野で、25億ドル相当の支援」を新たに実施することを表明すると共に、イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISIL(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるためとしつつ、「人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束した。
 その2日後に、「イスラム国」側から首相に宛てた2人の日本人人質に対する上記の身代金要求と殺害予告が行われた。
 そして「イスラム国」(ISIS)側は期限までに身代金は支払わられないとの心証を得たのだろうか、1月24日、後藤氏が湯川氏の遺体と見られる写真を持つ映像をインターネット動画サイトで公開しつつ、後藤氏が英語で、身代金ではなく、ヨルダンの首都アンマンで連続ホテル自爆テロ事件に関わった‘サジダ・リシャウィ死刑囚’を釈放するようにとの「イスラム国」側の要求を伝えた。次いで1月27日午後11時頃、後藤氏が2014年12月にISの捕虜となったヨルダン軍パイロットと見られる男性の写真を手にし、“私には24時間しか残されていない”と述べ、‘リシャウィ死刑囚の釈放’を求めた。1月29日、「イスラム国」側は、リシャウィ死刑囚(ヨルダンで収監中)を29日日没(現地時間)までにトルコとIS支配地域との境界に連れてくるよう要求する声明をインターネットに公開した。しかしヨルダン政府側は、捕虜となっている同国パイロットとの交換を優先しつつ、同パイロットの安否の確認が得られない限り応じないとしていた。しかし2月1日午前5時過ぎ、「イスラム国」側は、“日本政府へのメッセージ”として、最初に登場した戦闘員と見られる男が“日本が有志連合に加担していること”を非難した後、後藤氏を殺害したとする映像をインターネットに公開した。そして男は、“日本の愚かな決定”により後藤氏は死ぬが、“今後日本の国民は何処にいても殺戮されるだろう”と結んだ。日本は今回の事件の対応で、2人の尊い命を失った上、世界における日本人の安全を著しく低下させる結果となった。
日本人2名の「イスラム国」側による人質事件は、大変残念ながらこうして最悪の結末となった。
 このような犯罪行為が許されて良いものではない。しかし同時に次のような課題もある。
 1、甘い国際情勢認識と危機管理意識の欠如
昨年8月に湯川氏がいわゆる“イスラム国”領内で捕まっていることや米国や英国のジ
ャーナリストが捕まり、米、英が要求に応じなかったため処刑されたことなどは広く知られていたところであり、また、その救出のために昨年10月に後藤氏が“イスラム国”領内入って捕まり、11月頃より家族に対し10億円、或いは20億円にのぼる身代金を要求されていたことも外務、首相官邸サイドは知っていたとしている。
 このような状況にありながら、首相が中東に出向き、いわば“イスラム国”の面前で「ISIL(“イスラム国”)と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束すれば、“イスラム国”を刺激し、人質となっている2人の日本人の命を危うくすることは十分想定出来たはずである。
 日本が、国際テロとの戦いに各国と協力することは当然であろう。しかし“イスラム国”に対し、米、英両国を始めジョルダンなど50カ国近くの有志連合が“イスラム国”掃討のため連日のように空爆している最中に、日本が米国との同盟関係を強化し、集団的自衛権行使の実現を推進すると共に、中東での反“イスラム国”諸国を支援することを表明すればどのような結果を招くかを十分認識すべきであろう。
 事前の地域情勢判断の甘さと危機管理意識の欠如を指摘されても仕方がない。
更に後藤氏殺害の映像を受けて、安倍首相は安保関係閣僚会議の後、記者団に対し、これを非難すると共に、「テロリストたちを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携する」としつつ、「食糧支援、医療支援などの中東への人道支援を更に拡充する」とした。テロを容認出来ないことについては全く同感であるが、「イスラム国」側が、後藤氏を殺害した後、“今後日本の国民は何処にいても殺戮されるだろう”としており、日本人への危険が高まっている時に、「中東への支援を拡充する」との趣旨を何故この時点で表明するのだろうか。日本は今回の事件の対応で、2人の尊い命を失った上、世界における日本人の安全をも悪化させる結果となった。もう少ししたかな熟慮があって良いのかもしれない。世界における日本人の安全確保において政府首脳の言動が大きな影響を与えるものと予想され、日本が今後どのように外交を展開し、対外説明して行くのかなど、課題が残った。
 2、「積極的平和主義」等の犠牲と代償
 安倍政権は、ベトナムからインド、トルコに至る諸国を‘自由と繁栄の弧’とし、これら諸国との関係を増進すると共に、世界の平和と安定に積極的に貢献するという‘積極的平和主義’を推進しようとしている。今回の中東訪問もその一環と見られ、これら諸国に総額25億ドルの支援を表明すると共に、「ISIL(イスラム国)と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度の支援」を約束した。
 このような外交姿勢は日本にとって一つの選択肢であろうが、‘積極的平和主義’には国民の大きな犠牲や代償が必要となることを国民は認識すべきであろう。今回の事件からそれが国民の目に明らかになった。
 また安倍政権は、日米同盟関係の強化を図り、更に集団的自衛権の行使を可能にし、海外での軍事行動には参加しないまでも、世界の平和と安全に米国と行動を共にし、‘積極的平和主義’を推進する方針としている。日米同盟関係の強化も日本にとって選択肢の一つであろうが、そのような対外姿勢により、日本は米国の外交、安全保障政策と同一視され、犠牲や代償を強いられることになろう。国民はそれを十分に認識すべきであろう。それ以上に、自・公政権は、このような国家目的の遂行のために、国民に犠牲、代償を強いることがあることを説明する責任があろう。同時に国民の生命、財産に大きな犠牲を強いる以上、政権側には結果責任を取る覚悟が必要であろう。
 そして日本がどのような対外姿勢をとるかは、最終的には国民が選択することになるので、国民の一人一人が日本の取るべき道を選択し、明らかにする必要があろう。
 なお、1月20日に“イスラム国”側から身代金要求がなされてから、日本政府は米国を含む関係各国と連絡を取り合ったが、米国が早い段階から‘テロとの戦いに日本と連携し対応する’旨表明する一方、国務省報道官が‘イスラム国側の要求に応じるべきではない’ことを再三にわたり内外に表明していたことは、心強かった反面、自国民なら兎も角、日本国民の生命が掛かっている時に、他国の手を縛り、日本人の命を危うくするような言動を表明することは踏み込み過ぎではなかろうか。日本側が、「イスラム国」が“有志連合による十字軍”と非難し、敵対関係にある諸国に協力や情報提供を求めることは良いとしても、それを公にし、米国が‘連携’を約束することにより、日本の反「イスラム国」色が際立つ結果となったと言えよう。
 またシリア、イラクに隣接し、日本と友好関係にあるヨルダンに現地対策室を設けたことは一見適切のように見えるが、ヨルダンが‘有志連合’による空爆に参加しており、「イスラム国」にとっては敵対国であるので、情勢判断の甘さが指摘されても仕方がないであろう。
 3、国民の側の危機管理意識と自己責任
同時に、“イスラム国”の支配地域に足を踏み入れた2人の日本人についても、地域情勢の認識の甘さや危機管理意識の欠如、安易さが指摘されると共に、後藤氏自身が同地域に向かう前にビデオで表明していた通り、無謀な行為に対する自己責任意識をより強く持つことが望まれる。
今回犠牲になられた日本人及びそのご遺族には、心から哀悼の意を表したい。このような残虐な国際犯罪を遂行する“イスラム国”の行為を容認することは出来ない。
しかし“イスラム国”域内は内戦やテロ活動が続く一方、米英などの‘有志連合’による空爆が連日のように行われている戦闘地域であり、著しく危険な地域であることは分りきっていることである。そのような地に赴く行動の責任は重く、今回のような行為は容認出来ないが、残念ながらその結果は本人自身が受けていることを認識すべきであろう。
なお、湯川氏が設立した‘民間軍事会社’とは一体どのような目的があるのか疑問だ。湯川氏自身も、自動小銃を保持して“イスラム国”領内に入り捕虜となったと見られている。民間戦闘要員や民兵の派遣・訓練、軍事物資の提供を“イスラム国”などに行うためなのか。警備会社ならともかく、‘民間軍事’事業の内容如何では非社会性も疑われるところであり、日本において認めて良いのか疑問は多い。また後藤氏については、家族へ身代金要求が来ているなどが明らかにされているが、湯川氏については‘民間軍事会社’へのこのような要求があったのか、或いは昨年8月以降救出のための努力はなされていたのかなど一切明らかにされていない。会社側に説明責任があるのではなかろうか。
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 1月20日午後(日本時間)、“日本政府及び日本国民へ”として「イスラム国」(ISIS)からと見られるビデオメッセージがインターネット動画YouYubeに投稿され、人質としている日本人2名(湯川、後藤両氏)をひざまずかせ、“身代金2億ドルを72時間以内に支払わなければ殺害する”旨表明した。動画に映る男は、背丈や、左手にナイフを持ち、拳銃をホールダーに吊るしており、手の動きや、喋る時に首を左右にかしげる仕草、英語のなまりなどから、昨年米国人や英国人を前にして同様の通告をし、その後殺害した人物と酷似している。営利目的にせよ、政治的な目的にせよ、許し難い国際犯罪行為だ。
 この戦闘員姿の人物は、“日本の首相よ”と呼び掛け、“「イスラム国」から8500キロ以上も離れているのに、自ら進んでイスラム国に対するこの十字軍に参加した”としつつ、2人の命は2億ドルとした。更に日本国民に呼び掛け、“日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを払うという愚かな選択をした”とし、命を救うための金額を2億ドルをとした理由に言及しつつ、期限は72時間などと迫った。
 安倍首相は、1月16日から1月21日までの予定でエジプト、イスラエル、パレスチナ等の中東諸国を訪問中であった。そして1月17日、最初の訪問国エジプトの経済合同委員会において演説し、「中東全体を視野に入れ、人道支援、インフラ整備など非軍事の分野で、25億ドル相当の支援」を新たに実施することを表明すると共に、イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISIL(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるためとしつつ、「人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束した。
 その2日後に、「イスラム国」側から首相に宛てた2人の日本人人質に対する上記の身代金要求と殺害予告が行われた。
 そして「イスラム国」(ISIS)側は期限までに身代金は支払わられないとの心証を得たのだろうか、1月24日、後藤氏が湯川氏の遺体と見られる写真を持つ映像をインターネット動画サイトで公開しつつ、後藤氏が英語で、身代金ではなく、ヨルダンの首都アンマンで連続ホテル自爆テロ事件に関わった‘サジダ・リシャウィ死刑囚’を釈放するようにとの「イスラム国」側の要求を伝えた。次いで1月27日午後11時頃、後藤氏が2014年12月にISの捕虜となったヨルダン軍パイロットと見られる男性の写真を手にし、“私には24時間しか残されていない”と述べ、‘リシャウィ死刑囚の釈放’を求めた。1月29日、「イスラム国」側は、リシャウィ死刑囚(ヨルダンで収監中)を29日日没(現地時間)までにトルコとIS支配地域との境界に連れてくるよう要求する声明をインターネットに公開した。しかしヨルダン政府側は、捕虜となっている同国パイロットとの交換を優先しつつ、同パイロットの安否の確認が得られない限り応じないとしていた。しかし2月1日午前5時過ぎ、「イスラム国」側は、“日本政府へのメッセージ”として、最初に登場した戦闘員と見られる男が“日本が有志連合に加担していること”を非難した後、後藤氏を殺害したとする映像をインターネットに公開した。そして男は、“日本の愚かな決定”により後藤氏は死ぬが、“今後日本の国民は何処にいても殺戮されるだろう”と結んだ。日本は今回の事件の対応で、2人の尊い命を失った上、世界における日本人の安全を著しく低下させる結果となった。
日本人2名の「イスラム国」側による人質事件は、大変残念ながらこうして最悪の結末となった。
 このような犯罪行為が許されて良いものではない。しかし同時に次のような課題もある。
 1、甘い国際情勢認識と危機管理意識の欠如
昨年8月に湯川氏がいわゆる“イスラム国”領内で捕まっていることや米国や英国のジ
ャーナリストが捕まり、米、英が要求に応じなかったため処刑されたことなどは広く知られていたところであり、また、その救出のために昨年10月に後藤氏が“イスラム国”領内入って捕まり、11月頃より家族に対し10億円、或いは20億円にのぼる身代金を要求されていたことも外務、首相官邸サイドは知っていたとしている。
 このような状況にありながら、首相が中東に出向き、いわば“イスラム国”の面前で「ISIL(“イスラム国”)と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援」することを約束すれば、“イスラム国”を刺激し、人質となっている2人の日本人の命を危うくすることは十分想定出来たはずである。
 日本が、国際テロとの戦いに各国と協力することは当然であろう。しかし“イスラム国”に対し、米、英両国を始めジョルダンなど50カ国近くの有志連合が“イスラム国”掃討のため連日のように空爆している最中に、日本が米国との同盟関係を強化し、集団的自衛権行使の実現を推進すると共に、中東での反“イスラム国”諸国を支援することを表明すればどのような結果を招くかを十分認識すべきであろう。
 事前の地域情勢判断の甘さと危機管理意識の欠如を指摘されても仕方がない。
更に後藤氏殺害の映像を受けて、安倍首相は安保関係閣僚会議の後、記者団に対し、これを非難すると共に、「テロリストたちを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携する」としつつ、「食糧支援、医療支援などの中東への人道支援を更に拡充する」とした。テロを容認出来ないことについては全く同感であるが、「イスラム国」側が、後藤氏を殺害した後、“今後日本の国民は何処にいても殺戮されるだろう”としており、日本人への危険が高まっている時に、「中東への支援を拡充する」との趣旨を何故この時点で表明するのだろうか。日本は今回の事件の対応で、2人の尊い命を失った上、世界における日本人の安全をも悪化させる結果となった。もう少ししたかな熟慮があって良いのかもしれない。世界における日本人の安全確保において政府首脳の言動が大きな影響を与えるものと予想され、日本が今後どのように外交を展開し、対外説明して行くのかなど、課題が残った。
 2、「積極的平和主義」等の犠牲と代償
 安倍政権は、ベトナムからインド、トルコに至る諸国を‘自由と繁栄の弧’とし、これら諸国との関係を増進すると共に、世界の平和と安定に積極的に貢献するという‘積極的平和主義’を推進しようとしている。今回の中東訪問もその一環と見られ、これら諸国に総額25億ドルの支援を表明すると共に、「ISIL(イスラム国)と闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度の支援」を約束した。
 このような外交姿勢は日本にとって一つの選択肢であろうが、‘積極的平和主義’には国民の大きな犠牲や代償が必要となることを国民は認識すべきであろう。今回の事件からそれが国民の目に明らかになった。
 また安倍政権は、日米同盟関係の強化を図り、更に集団的自衛権の行使を可能にし、海外での軍事行動には参加しないまでも、世界の平和と安全に米国と行動を共にし、‘積極的平和主義’を推進する方針としている。日米同盟関係の強化も日本にとって選択肢の一つであろうが、そのような対外姿勢により、日本は米国の外交、安全保障政策と同一視され、犠牲や代償を強いられることになろう。国民はそれを十分に認識すべきであろう。それ以上に、自・公政権は、このような国家目的の遂行のために、国民に犠牲、代償を強いることがあることを説明する責任があろう。同時に国民の生命、財産に大きな犠牲を強いる以上、政権側には結果責任を取る覚悟が必要であろう。
 そして日本がどのような対外姿勢をとるかは、最終的には国民が選択することになるので、国民の一人一人が日本の取るべき道を選択し、明らかにする必要があろう。
 なお、1月20日に“イスラム国”側から身代金要求がなされてから、日本政府は米国を含む関係各国と連絡を取り合ったが、米国が早い段階から‘テロとの戦いに日本と連携し対応する’旨表明する一方、国務省報道官が‘イスラム国側の要求に応じるべきではない’ことを再三にわたり内外に表明していたことは、心強かった反面、自国民なら兎も角、日本国民の生命が掛かっている時に、他国の手を縛り、日本人の命を危うくするような言動を表明することは踏み込み過ぎではなかろうか。日本側が、「イスラム国」が“有志連合による十字軍”と非難し、敵対関係にある諸国に協力や情報提供を求めることは良いとしても、それを公にし、米国が‘連携’を約束することにより、日本の反「イスラム国」色が際立つ結果となったと言えよう。
 またシリア、イラクに隣接し、日本と友好関係にあるヨルダンに現地対策室を設けたことは一見適切のように見えるが、ヨルダンが‘有志連合’による空爆に参加しており、「イスラム国」にとっては敵対国であるので、情勢判断の甘さが指摘されても仕方がないであろう。
 3、国民の側の危機管理意識と自己責任
同時に、“イスラム国”の支配地域に足を踏み入れた2人の日本人についても、地域情勢の認識の甘さや危機管理意識の欠如、安易さが指摘されると共に、後藤氏自身が同地域に向かう前にビデオで表明していた通り、無謀な行為に対する自己責任意識をより強く持つことが望まれる。
今回犠牲になられた日本人及びそのご遺族には、心から哀悼の意を表したい。このような残虐な国際犯罪を遂行する“イスラム国”の行為を容認することは出来ない。
しかし“イスラム国”域内は内戦やテロ活動が続く一方、米英などの‘有志連合’による空爆が連日のように行われている戦闘地域であり、著しく危険な地域であることは分りきっていることである。そのような地に赴く行動の責任は重く、今回のような行為は容認出来ないが、残念ながらその結果は本人自身が受けていることを認識すべきであろう。
なお、湯川氏が設立した‘民間軍事会社’とは一体どのような目的があるのか疑問だ。湯川氏自身も、自動小銃を保持して“イスラム国”領内に入り捕虜となったと見られている。民間戦闘要員や民兵の派遣・訓練、軍事物資の提供を“イスラム国”などに行うためなのか。警備会社ならともかく、‘民間軍事’事業の内容如何では非社会性も疑われるところであり、日本において認めて良いのか疑問は多い。また後藤氏については、家族へ身代金要求が来ているなどが明らかにされているが、湯川氏については‘民間軍事会社’へのこのような要求があったのか、或いは昨年8月以降救出のための努力はなされていたのかなど一切明らかにされていない。会社側に説明責任があるのではなかろうか。
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シリーズ平成の本音―しぼむ経済回復

2015-02-04 | Weblog
シリーズ平成の本音―しぼむ経済回復
 1月12日、政府(総務省)は2014年度の国内総生産(GDP)の成長率を実質マイナス0.5 %となるとの見通しを公表した。2013年7月での政府見通しは、実質1.2%のプラス成長であったので、実質1.7%の落ち込みとなり、見通しの甘さが露呈した形だ。
 政権側は、昨年4-6月期は、4月からの消費増税により消費は落ち込むが、7-9月期は賃金引き上げ等により消費は回復するとしていただけに、言行不一致は甚だしい。その上で政権側は、回復の効果を‘全国つずうらうらまで届ける’などとしているが、‘回復の効果’は輸出産業や観光産業などを中心とする局部的なもので、都市においても地方においても実質的な成果は感じられず、消費は非常に慎重であることが数値で明らかになった。
 国民全体としては、景気が回復し、生活が楽になったという実感に乏しいのが実態のようだ。数値上も、名目成長率が1.7%であるので、実質成長率との差の2.2%が物価デフレータであり、名目成長率以上に物価上昇が激しいことを示している。アベノミクスの金融政策は、インフレ目標2%として大量の通貨を市場に供給することであり、それにより株価は上昇し、円安となり、物価も上昇することを意図している。現実は、軒並み物価が上がり、給与アップは極く局部的、限定的となっているので、全体とすると生活は苦しくなり、1円でも安いものを求める空気が強くなっている。物価上昇は、公表されている物以上に、量やサイズが小さくなっており、実質的に政府公認の便乗値上げとも言うべき軒並みの物価上昇となっている。
 しかも円安にしろ株高にしろ、結局は米国の景気頼みであり、日本の内需が景気を牽引しているものではない。株が上がっても、恩恵を受けているのは6割以上を占める外国人投資家と機関投資家であり、個人投資家はごく少数の上、バブル期に大損をしている人が多いので、証券会社や株式自体に対する不信感は根強い。
 しかし年令を問わず多くの国民の将来不安の根源は、年金を中心とする社会保障への不信感にある。戦後自民党政権の下で′100年安心’と銘打って作られた年金制度、特に国民年金は、バブル経済崩壊、資産デフレ期に各種の贅沢な施設などに流用され食い潰された形となり、年金財源の不足から給付年齢の引き上げや給付額の引き下げが行われるなどに加え、膨大な消えた年金問題が表面化し、そのずさんで無責任な運営振りが明らかになっている。更に、介護保険料が漸増し、国民年金給付額より天引きされるなど、年金の信頼度は低下の一方だ。
 生活保護受給者が216万人、160万世帯を超え、65歳以上の高齢者世帯が全体の47%以上も占めている。65才以上といえば年金受給対象者であり、夫婦共に年金受給対象者であっても、年金では生活出来ないということを示している。そのような年金に加入する意味もないので、国民年金加入者は減少する一方だ。だから若い世代も、将来不安から、消費を抑える傾向にある。
 65才以上の年金受給対象者は、原則として生活保護を停止し、年金一本に切り替えるべきであろう。双方を受給するというのは2重の保護、過保護に当たり、政府、行政自体が、年金の意味を否定するようなものだ。
 年金への信頼性が回復しない限り、多くの国民の将来不安は解消しないであろう。そこを理解し、年金への信頼性を回復するよう措置しない限り、多少の給与増があっても貯蓄が優先され、本格的な消費増にはなかなか繋がらないであろう。年金の信頼性を失わせたのは政権与党であるので、年金関係業務の人件費を含む管理費を抜本的に節減すると共に、行政全体について人件費の削減や公務員住宅・議員宿舎や国有財産の処分を含め、管理費を節減し、社会保障分野に振り向けるなどの、予算資源の再配分が必要になっていると言えよう。  
消費増税を重ね、国民に負担を強いるだけでは問題は解決しない。そもそも年金制度が破綻し、財政が膨大な公的債務で破綻状態になっていれば、まず抜本的なコスト削減を行うことが常識だ。地方を含め、歳出分野の抜本的な節減による予算資源の再配分を行うことが不可欠になっている。(2015.1.15.)(All Rights Reserved.)
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2015-02-04 | Weblog
シリーズ平成の本音―しぼむ経済回復
 1月12日、政府(総務省)は2014年度の国内総生産(GDP)の成長率を実質マイナス0.5 %となるとの見通しを公表した。2013年7月での政府見通しは、実質1.2%のプラス成長であったので、実質1.7%の落ち込みとなり、見通しの甘さが露呈した形だ。
 政権側は、昨年4-6月期は、4月からの消費増税により消費は落ち込むが、7-9月期は賃金引き上げ等により消費は回復するとしていただけに、言行不一致は甚だしい。その上で政権側は、回復の効果を‘全国つずうらうらまで届ける’などとしているが、‘回復の効果’は輸出産業や観光産業などを中心とする局部的なもので、都市においても地方においても実質的な成果は感じられず、消費は非常に慎重であることが数値で明らかになった。
 国民全体としては、景気が回復し、生活が楽になったという実感に乏しいのが実態のようだ。数値上も、名目成長率が1.7%であるので、実質成長率との差の2.2%が物価デフレータであり、名目成長率以上に物価上昇が激しいことを示している。アベノミクスの金融政策は、インフレ目標2%として大量の通貨を市場に供給することであり、それにより株価は上昇し、円安となり、物価も上昇することを意図している。現実は、軒並み物価が上がり、給与アップは極く局部的、限定的となっているので、全体とすると生活は苦しくなり、1円でも安いものを求める空気が強くなっている。物価上昇は、公表されている物以上に、量やサイズが小さくなっており、実質的に政府公認の便乗値上げとも言うべき軒並みの物価上昇となっている。
 しかも円安にしろ株高にしろ、結局は米国の景気頼みであり、日本の内需が景気を牽引しているものではない。株が上がっても、恩恵を受けているのは6割以上を占める外国人投資家と機関投資家であり、個人投資家はごく少数の上、バブル期に大損をしている人が多いので、証券会社や株式自体に対する不信感は根強い。
 しかし年令を問わず多くの国民の将来不安の根源は、年金を中心とする社会保障への不信感にある。戦後自民党政権の下で′100年安心’と銘打って作られた年金制度、特に国民年金は、バブル経済崩壊、資産デフレ期に各種の贅沢な施設などに流用され食い潰された形となり、年金財源の不足から給付年齢の引き上げや給付額の引き下げが行われるなどに加え、膨大な消えた年金問題が表面化し、そのずさんで無責任な運営振りが明らかになっている。更に、介護保険料が漸増し、国民年金給付額より天引きされるなど、年金の信頼度は低下の一方だ。
 生活保護受給者が216万人、160万世帯を超え、65歳以上の高齢者世帯が全体の47%以上も占めている。65才以上といえば年金受給対象者であり、夫婦共に年金受給対象者であっても、年金では生活出来ないということを示している。そのような年金に加入する意味もないので、国民年金加入者は減少する一方だ。だから若い世代も、将来不安から、消費を抑える傾向にある。
 65才以上の年金受給対象者は、原則として生活保護を停止し、年金一本に切り替えるべきであろう。双方を受給するというのは2重の保護、過保護に当たり、政府、行政自体が、年金の意味を否定するようなものだ。
 年金への信頼性が回復しない限り、多くの国民の将来不安は解消しないであろう。そこを理解し、年金への信頼性を回復するよう措置しない限り、多少の給与増があっても貯蓄が優先され、本格的な消費増にはなかなか繋がらないであろう。年金の信頼性を失わせたのは政権与党であるので、年金関係業務の人件費を含む管理費を抜本的に節減すると共に、行政全体について人件費の削減や公務員住宅・議員宿舎や国有財産の処分を含め、管理費を節減し、社会保障分野に振り向けるなどの、予算資源の再配分が必要になっていると言えよう。  
消費増税を重ね、国民に負担を強いるだけでは問題は解決しない。そもそも年金制度が破綻し、財政が膨大な公的債務で破綻状態になっていれば、まず抜本的なコスト削減を行うことが常識だ。地方を含め、歳出分野の抜本的な節減による予算資源の再配分を行うことが不可欠になっている。(2015.1.15.)(All Rights Reserved.)
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シリーズ平成の本音―しぼむ経済回復

2015-02-04 | Weblog
シリーズ平成の本音―しぼむ経済回復
 1月12日、政府(総務省)は2014年度の国内総生産(GDP)の成長率を実質マイナス0.5 %となるとの見通しを公表した。2013年7月での政府見通しは、実質1.2%のプラス成長であったので、実質1.7%の落ち込みとなり、見通しの甘さが露呈した形だ。
 政権側は、昨年4-6月期は、4月からの消費増税により消費は落ち込むが、7-9月期は賃金引き上げ等により消費は回復するとしていただけに、言行不一致は甚だしい。その上で政権側は、回復の効果を‘全国つずうらうらまで届ける’などとしているが、‘回復の効果’は輸出産業や観光産業などを中心とする局部的なもので、都市においても地方においても実質的な成果は感じられず、消費は非常に慎重であることが数値で明らかになった。
 国民全体としては、景気が回復し、生活が楽になったという実感に乏しいのが実態のようだ。数値上も、名目成長率が1.7%であるので、実質成長率との差の2.2%が物価デフレータであり、名目成長率以上に物価上昇が激しいことを示している。アベノミクスの金融政策は、インフレ目標2%として大量の通貨を市場に供給することであり、それにより株価は上昇し、円安となり、物価も上昇することを意図している。現実は、軒並み物価が上がり、給与アップは極く局部的、限定的となっているので、全体とすると生活は苦しくなり、1円でも安いものを求める空気が強くなっている。物価上昇は、公表されている物以上に、量やサイズが小さくなっており、実質的に政府公認の便乗値上げとも言うべき軒並みの物価上昇となっている。
 しかも円安にしろ株高にしろ、結局は米国の景気頼みであり、日本の内需が景気を牽引しているものではない。株が上がっても、恩恵を受けているのは6割以上を占める外国人投資家と機関投資家であり、個人投資家はごく少数の上、バブル期に大損をしている人が多いので、証券会社や株式自体に対する不信感は根強い。
 しかし年令を問わず多くの国民の将来不安の根源は、年金を中心とする社会保障への不信感にある。戦後自民党政権の下で′100年安心’と銘打って作られた年金制度、特に国民年金は、バブル経済崩壊、資産デフレ期に各種の贅沢な施設などに流用され食い潰された形となり、年金財源の不足から給付年齢の引き上げや給付額の引き下げが行われるなどに加え、膨大な消えた年金問題が表面化し、そのずさんで無責任な運営振りが明らかになっている。更に、介護保険料が漸増し、国民年金給付額より天引きされるなど、年金の信頼度は低下の一方だ。
 生活保護受給者が216万人、160万世帯を超え、65歳以上の高齢者世帯が全体の47%以上も占めている。65才以上といえば年金受給対象者であり、夫婦共に年金受給対象者であっても、年金では生活出来ないということを示している。そのような年金に加入する意味もないので、国民年金加入者は減少する一方だ。だから若い世代も、将来不安から、消費を抑える傾向にある。
 65才以上の年金受給対象者は、原則として生活保護を停止し、年金一本に切り替えるべきであろう。双方を受給するというのは2重の保護、過保護に当たり、政府、行政自体が、年金の意味を否定するようなものだ。
 年金への信頼性が回復しない限り、多くの国民の将来不安は解消しないであろう。そこを理解し、年金への信頼性を回復するよう措置しない限り、多少の給与増があっても貯蓄が優先され、本格的な消費増にはなかなか繋がらないであろう。年金の信頼性を失わせたのは政権与党であるので、年金関係業務の人件費を含む管理費を抜本的に節減すると共に、行政全体について人件費の削減や公務員住宅・議員宿舎や国有財産の処分を含め、管理費を節減し、社会保障分野に振り向けるなどの、予算資源の再配分が必要になっていると言えよう。  
消費増税を重ね、国民に負担を強いるだけでは問題は解決しない。そもそも年金制度が破綻し、財政が膨大な公的債務で破綻状態になっていれば、まず抜本的なコスト削減を行うことが常識だ。地方を含め、歳出分野の抜本的な節減による予算資源の再配分を行うことが不可欠になっている。(2015.1.15.)(All Rights Reserved.)
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シリーズ平成の本音―警察車両による追尾事故を防げ!

2015-02-04 | Weblog
シリーズ平成の本音―警察車両による追尾事故を防げ!
 12月20日午前9時過ぎ、東京都葛飾区西新小岩で、パトカーが追跡していた乗用車に女性がはねられ、病院に搬送されたが死亡した。運転していた男は逮捕されたが、警察車両の追尾活動でまた尊い命が失われた。所轄の警視庁葛飾署は‘追尾は適正だった’としている。
 この種の警察車両の追尾中の人身事故は、毎年のように全国で繰り返されている。
 2012年11月3日にも、午前1時前後に東京港臨海道路を走行していたオートバイが覆面の警察車両に追尾され、30代の運転者(男性)が死亡した。管轄の警察署は、オートバイが時速40kmオーバーのスピードで走行し、覆面警察車を追い越したので警告灯を付けサイレンを鳴らし追尾したもので、「追尾方法は適正であった」と説明している。
 警察車両による追尾による重大な死傷事故が全国各地で発生する度に、警察当局は一様に「追尾方法は適正であった」旨説明して来ている。
 しかし結果として重大な死傷事故を起こしておいて「追尾は適正であった」とする姿勢には、強い違和感を覚える。尊い人の命を奪っておいて「適正」とは何事だろうか。警察車両による追尾事故は、そのほとんどが夜間から深夜の人通りが途絶えた頃や道路で起こっているが、今回は通勤、通学の時間帯の午前中に起こっている。その他の自動車や通行人を巻き込んだ死傷事故も発生しやすい。
もとよりスピード違反や信号無視などは行ってはならない。ましてや飲酒運転などは行ってはならないので、運転者側の注意も促したい。だがスピード違反や信号無視などの交通違反で、人の命まで奪うことは行き過ぎであり、違反行為に比して警察権限の行使による事実上の罰が余りにも重過ぎる。人命軽視の取り締まり、警察行政、権限の乱用とも言える。業務上人の生命を守るという意識がもっとあって良い。人を守るための交通規則ではないか。規則が人命に優先するものではない。警察も国民の生命、財産を守るためにあるのではないか。その本旨を見失って、規則を守らせ、違反を取り締まるために国民の命を奪ってどうするのか。
警察当局にも、暗黙のノルマのようなものがあると言われている。月始めや月末に、警察官や白バイが物陰に潜んで一時停止や信号無視、右折禁止,Uターン禁止などを最近一般車両が事故を取り締まっている模様を見かけることが多い。同じ場所で行っている。違反を摘発し易いスッポトのようだ。重箱の隅をほじくるような取締を見掛けると、警察官が多過ぎて余程暇なのかと思わせる。そうかと思ったら、千葉県警で、交通死亡事故数を過小に報告していたことが指摘されている。交通事故死が全国でも多いことから、過小に報告していたとも言われている。やはり原点に戻って、国民の生命と財産を守り、国民が安全に生活出来るようにする大切な任務をしているとの意識がもっと欲しいものだ。そうでなければ国民の信頼は得られないだろう。
他方、最近事故を起こした場合、業務上の過失責任等が厳しく罰せられるようになった。警察権限の行使、取り締まりとは言え、もしこのような人命軽視の取り締まり等が続き、改善が見られない場合には、重大な死傷事件を招いた追尾事案については、事の重大性と一般車両の過失責任の厳正化との公平性を保つため、担当官の報告だけで判断するのではなく、少なくても第三者的機関による厳正な調査が行われることが望ましい。(2014.12.21.)
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2017年消費税再増税の国民投票となる総選挙! (回顧編)

2015-02-04 | Weblog
2017年消費税再増税の国民投票となる総選挙! (回顧編)
11月18日、安倍首相は、7月―9月のGDP成長率の速報値が2期連続マイナスであったことを受けて、明年10月に予定されている消費税の10%への再引き上げを18ヶ月延期すると共に、21日に衆議院を解散し、12月2日公示、14日投・開票とすることを明らかにした。同首相は、国民の負担を強いる再増税に関しては民意を問いたいとした。
しかし消費税増税関連法には、増税実施については、「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め措置を講ずる」(附則18条)と規定している。GDP成長率は、同首相側は7―9月期には景気が回復すると予想していたのに反し年率マイナス1.6%と2期連続で下がった。このような経済情勢から、明年10月の再増税を停止等することは可能であるので、何故第2次安倍政権成立後2年も経たない内に解散・総選挙とするのか、与野党を含む各方面で疑問が渦巻いている。
1、今回の総選挙は2017年4月の10%への消費増税を強行するためだ!
 安倍政権は、明年10月に予定されている消費税の10%への再引き上げは1年半先送りし、2017年4月に10%への引き上げを実施することを明らかにしている。「景気条項」も付されないので、自・公両党が総選挙で過半数以上の238議席以上確保すると、消費税は2017年4月に10%への再増税が行われることになる。
 同首相は‘10%への再増税先送り’としているが、「停止」でも「中止」でもなく、実際は目先の批判をかわすだけで、‘2017年に実施’という実施決定にほかならない。「景気判断条項」などもない。
 今回の総選挙で、自・公両党が過半数以上を取り、安倍連立内閣が再スタートすると、10%への消費税再増税は確定する。その批判を和らげるために食材等一定の商品につき‘軽減税率’を導入することを自・公両党で合意したと報じられているが、‘2017年に10%への再増税実施’を前提にしたものに他ならない。
 従って、今回の総選挙は、自・公両党が推進する‘2017年の10%への消費税再増税実施’
を問う国民投票の性格を持っている。イエスかノーでしかない。

 2、批判をかわすための先制攻撃
 9月3 日の内閣改造で目玉となっていた女性議員の小渕経産相と法相が観劇やワインの贈答、或いはうちわの無償配布などの有権者への利益供与(寄付行為)の疑いや政治資金規正法上の不適正記載などで辞任に追い込まれた上、後任の宮沢経産相の不適切な政治活動費問題、江渡防衛相の政治資金規正法上の問題など、閣僚の不適正な活動が指摘されている。明年の通常国会でもこれらの問題への批判が繰り返され、首相の任命責任などが問われる可能性がある。現与党が野党であった頃は、与党民主党議員の政治資金記載問題等で安倍議員も国会で声を荒立てて激しく追求していたのは記憶に新しい。
 また明年10月の10%への消費税再増税が1年半先送りされることについても、4月の8%への増税の際にも、アベノミクスで景気は回復を図ると述べていたのに反し、GDP成長率は、消費増税直後の4-6月期に年率マイナス7.3%と大幅に下落し、7―9月期には年率マイナス1.6%と2期連続で下がっている。
特に、GDPの約6割を占める個人消費が回復していない。これは、8%への消費増税が消化し切れていない上、日銀の2%インフレターゲットの下での大幅な金融緩和、円安是正を背景として物価上昇が先行する一方、賃金上昇は低率で局部的にとどまっていることが原因だ。一般消費者はアベノミクスにノーを突きつけているに等しい。
 これまでの効果は、円安是正による輸出産業など一部の産業の収益改善と株価上昇であるが、株式については、売買比率の67%が外国人投資家であり、国内投資家は未だ株式市場に懐疑的で、利益を受けている層も局部的でしかない。
‘第3の矢’と言われる経済刺激策は、これまでの行政当局の努力はたとするが、英国の経済誌フィナンシャル・タイムズ紙が、“1000本の針”でしかなく、複雑で効果は少ないと酷評している。確かに見るべき大胆な措置はない反面、30本を越える関連法令は、制度を更に複雑にし、自由であるべき市場を実質的に管理・規制し、規制に規制を重ねる結果となるだけだ。
今回の選挙でアベノミクスの継続の是非を問うとしているが、その内の為替と金融緩和は日本だけで決められるものではなく、国際経済金融動向に左右される側面があると共に、国内経済への副作用がある。独自に取れる施策は‘第3の矢’と言われる経済刺激策であるが、‘第3の矢’にはこれまで見るべきものはない。自・公両党は、民主党政権下の経済政策を批判するが、そもそも1990年代初期のバブル経済を放置したのは政権与党であり、またバブルが崩壊した後も、抜本的改革を先送り、先送りし、資産デフレ、景気停滞を長引かせ、国民所得の2倍以上に当たる1,000兆円以上の公的債務で借金漬けにしたのは政府与党の責任であろう。その膨大な負の遺産を民主党政権に負わせて置いて、その責任を反省もせず、批判する資格はないのではないか。国民は与野党で責任を擦り付け合うことを望んではいない。多くの国民は、国家、国民の利益のために与野党で協力して事に当たって欲しいと願っている。
 現状のまま明年の通常国会を迎えれば、野党側から首相の閣僚任命責任や経済政策等を突かれることは明らかであるので、選挙後2年弱しか経っていないが、野党側の体制が整っていない内に解散、総選挙を打つという先制攻撃を掛けたと見られている。
 解散、総選挙騒ぎで、臨時国会もあれだけ宣伝していた女性活躍推進法案が廃案になるなど、審議は十分に行われず、身勝手で他人迷惑と映る。取り組むべきことは多いと言いながら、また多くの人が仕事や所得にも恵まれず、年末を迎えようとしている時期に600億円以上と言われる選挙費用と時間を敢えて使うということは、国家、国民の利益を犠牲にし、政権延命策を図っていると批判されても仕方がない。政権側はアベノミクスの継続を問う選挙としているが、「景気判断条項」により明年10月の再増税を先送り、選挙などで時間と予算を無駄にせず、残る任期2年を通じアベノミクスに専念することが出来る。
国家、国民の利益を犠牲にし、政権延命策を図るためのいわば動機不純な総選挙か否かの判断は、有権者に委ねられている。

3、身を切る改革や無駄の削減、予算の節減は放棄される!?
自・公連立政権が発足して2年弱、消費増税に関する民主党と自・公との3党合意は、
ほとんど取り組まれることはなかった。3党合意は、3つの公党の約束であり、国会でも明らかにされているので、国民への約束でもある。多くの国民は、消費増税にやみくもに反対している訳では無く、一方で予算の無駄が実質的に節減され、他方で年金を含む社会保障が充実し、税金が真に国民のために使われるのであれば理解するであろう。自・公連立政権はその約束を守っていない。
安倍政権側は、アベノミクスの継続、その道しかないとして国民の目を外らそうとしているが、そうではない。消費税増税と並行して約束した社会保障制度改革と身を切る改革や無駄の削減、予算の節減という2つの道が残っている。
(1)国民への負担だけが強化される社会保障
 消費税収入は福祉関連に充当するとした上で、社会福祉制度改革を行うことを、自・公両党は民主党政権(当時)と合意し、国会の場で約束したのではないか。国会の場での約束であり、国民への公的な約束と言える。
 しかし、保険料を引き上げることを柱とする国民の負担増や医療費の抑制策などが自・公連立政権において厚労省で検討されている。公的年金についても、既に給付年齢が引き上げられ、介護保険料が天引きされているが、年金給付額の一層の引き下げなどの抑制策や年金保険料の引き上げなどの負担増が行われ、更なる改悪が検討されている。それは国民が期待している将来不安のない充実した社会保障改革に逆行するもので、人件費を含む管理・組織面での無駄の排除、節減が行われていない。
 この年金を中心とする社会福祉サービスの後退が、多くの国民の将来不安を高め、それが消費節約、貯蓄志向を強めることになっている。
 自・公政権は、福祉予算が不足するとして、一方で消費増税を推進するなど国民の負担を求めつつ、他方で年金支給額の削減や診療費の引き上げなどで更に国民負担を求めている。
(2)議員定数の削減、予算の節減も先送りか?
 ‘議員定数削減’についても3党合意しているが、自・公両党は政権発足後2年間で
衆院定数の‘0増5減’を実現した。これで定数は5議席減って475議席となる。しかしこれは2012年12月の衆院選挙に関し、選挙区による有権者の重み格差、いわゆる「1票の格差」の問題で全国で16件の裁判において、14件は格差が是正されないままで行われた選挙として“違憲”とされ、他2件も“違憲状態”とされた。これで全国31選挙区、2閣僚を含む31議員について憲法違反の選挙による選出となったので、違憲選挙区を回避するための措置であり、‘定数削減’からは程遠い。総定員の1%強の減にしか当たらない。
 しかも、今回‘0増5減’の状況で選挙が行われることになるが、前回以上に厳しい違憲判決が出されることが予想される。既に14の選挙区で格差が2倍を越えると伝えられている。2倍以下でも平等性の上から十分ではない。国会には是正のための充分過ぎる程の時間が与えられているので、これまで司法は独立性を放棄し政治に擦り寄った形で政治的配慮を重ねて来たが、今回の選挙ではより強く司法の独立性を発揮することが求められている。これまで以上に多くの選挙区で憲法違反判決が出ることが懸念される。圧倒的多数を占めていた自・公両党にその責任が求められることになろう。司法の軽視、憲法の軽視は許されない。
議員報酬についても2年間13%程度削減されていたものを4月末で元に戻している上、着実な人口減が予想されているのに議員定数の削減については非常に不熱心だ。それどころか、政務調査費の不適正な使用やネギの購入なども政治資金として計上しているなど、政治資金の乱脈振りが報道されている。この点は参議院や地方議会についての同様だ。
議員が予算節減に模範を示さなければ、行政組織は無駄の節減などに応じないであろう。
今回自・公両党が過半数を維持する場合、‘議員定数削減’や行政経費の無駄の削減などについての3党合意は放棄され、今回の選挙結果が優先される可能性があるので、有権者が明確な意志を表明することが求められている。

4、隠された重大な問題―原発再稼働・最終処理場問題、集団的自衛権問題等
 経済回復は支持政党を問わず、多くの国民が期待することであり、それ自体争点ではない。しかしアベノミクスについては、独自色が出せる′第3の矢’の成長戦略について、これまで6月に発表されても株価は下がる状態であり、市場に評価されていない。公共事業についても長期に亘り年間7、8兆円から10兆円内外が恒常的に支出されて来ており、限界効用は低下しているので、その程度の公共事業をいくら継続しても、需要ギャップを埋める程度の効果しかなく、成長要因にはならなくなっている。重要なのは公共事業の中身であり、限られた予算資源をどのような分野に再配分するかがより大きな問題ではなかろうか。
少子高齢化の中で福祉予算が増加するのは当然のながれであり、それを再増税だけで賄うことは国民の活力を削ぎ、社会負担を高めるだけだ。また消費税は社会福祉に充当すると言いながら、社会福祉の内容を削ったり、国民負担を引き上げようとする議論は、何のための増税か、言っていることとやっていることが違うとの疑念を国民に持たせることとなっている。社会が従来にはなかった少子高齢化に大きく転換し、社会福祉費が増加するのは当然であるので、予算の人件費を含む管理費などを大幅に削減するか、予算資源を従来の土木建設中心の公共事業から社会福祉分野に再配分して行くしかないであろう。
 経済回復自体はもはや国民にとって争点ではなく、今後の国民生活、特に新しい世代の生活にとっては、その影に隠れている原発再稼働の問題、それとの関連で答えを出さなくてはならない各種の膨大な放射性廃棄物や汚染ゴミの「最終処理場」の問題がある。自民党の今回の選挙公約では、‘将来原発依存から脱却することを目指し’との表現が消え、「原子力発電」を‘重要なベースロード電源’とすると明言している。要するに原発を今後共重要な基盤となる電源とするとしている。これは、福島原発の原子炉のメルトダウンという国民の生命と安全、そして子孫の健康に関わる深刻な問題が発生した今日、原発継続一つをとっても総選挙の一つとしても良いくらいの重要な問題と言えるのではないだろうか。福島原発の処理一つをとっても、今後40年以上は掛かると見られており、何が起こるか分からない。更に大規模地震や津波、火山爆発、荒れる気象などが日本列島を覆っているので、このような自然災害の力は計り知れない。福島原発事故だけでも、放射線汚染ゴミだけでなく、将来出るだろう高度汚染された原子炉他の解体施設の最終処理場さへ決まっていない。日本には全国に54基に及ぶ原発が存在し、各種の放射性ゴミと解体後の高放射能解体物の処理問題は深刻だ。
当面の経済回復に目を奪われて‘原発継続’の問題を見落すと、子供を含めて、将来の日本国民の安全と健康に深刻な影を落とす可能性がある。それを十分認識して票を投じる必要があろう。棄権すれば容認したことを意味する。
 また‘集団的自衛権’の問題についても、容認するとしても、支持政党を問わず全ての国民の生命、財産を守るものであるならば、国民の大宗が納得するものでなくては継続的に維持出来ない。そうでなくては短期的、或いは国民の一部にしか理解されない不安定な政策になる恐れがある。
 国連憲章は、各国の‘集団的自衛権’を保証等せるものではなく、各国がそれぞれの憲法の下で友好国との間で‘集団的自衛’や‘集団的安全保障’を取り決め、その範囲において、国連が措置をとるまでの間、集団的に自衛権を行使することを容認しているだけではないのか。また閣議決定された集団的自衛行使の要件として、‘密接な関係の他国に武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、集団的自衛権を含む「自衛のための措置」を可能’としているが、‘密接な関係の他国に武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合’とは一体どんな状態なのか明白でないばかりではなく、一体こんなことが起こるとすれば同盟国自体が壊滅状態になっている可能性があるなど、現実味に欠ける。
 また国連の下での平和維持活動や多国籍軍への参加についても、従来の既成概念にとらわれ過ぎているのではないかなど疑問は多い。
 日本の安全については、政府の専権事項ではあろうが、特定の政党を支持する国民層を守るということではなく、全ての国民の生命と財産、及び国家としての存立を守るということであれば、幅広い国民、及びその代表である主要政党の理解と協力が得られるよう、幅広い議論を通じ結論を出すことが望ましい。
 何故日本自体の安全のために、国民間、主要政党間の対立を作り出すのだろうか。日本は、もっと協議を通じた解決を模索する方法を学ぶことが望まれる。それが出来ない政党は、もはや日本のリーダーとなるにはふさわしくないのではないか。
 もし今回の総選挙で、自・公連立与党側がある程度の差をつけて勝利することになる場合、原発再稼働は進み、最終処理場は先送りされ、集団的自衛権は実施に移されることになろう。また沖縄の普天間空港の辺野古への移設についても強行されることになろう。更に、靖国神社参拝問題を含む歴史認識の問題、緊張が高まっている中国、韓国との関係などについても安倍政権の政策を容認したことになる。投票に行かなくても容認したことを意味する。
 また消費税再増税についても、公明党は、2017年に強行するに際して軽減税率を導入するとして同党の手柄のように表明している。しかし、軽減税率は従来からあった議論であり、また、一方で更に税を取っておいて、他方で食材等については再増税を軽減しますよと言うのは、‘盗人猛々しい’と言われても仕方ないであろう。また低所得者に一定の‘生活支援金’を給付する等を検討するとしている。無駄なバラ撒きや浪費をするくらいであれば、再増税せず、日本年金機構等の独法や地方自治体を含む行政組織の人件費、管理費の3年間で3割削減、及び地方議会を含む議員定数の3割削減、議員歳費等の大幅削減などを実施し、年金の立て直しや財政の再建を行う方が適切ではないか。
 従って、アベノミクスに目を奪われて安易に投票したり、或いは大した変化はないと諦めて投票しなかったりすることなく、有権者一人一人が今後4年間の生活や日本の進路、対外関係のあり方などを考えて1票を投じることが非常に重要となっている。
(2014.12.07.)(All Rights Reserved.)
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