筆者が有機農業を体験したリオグランデ・ド・ノルテ(RN)州が今、50年ぶりの大干ばつに見舞われている(本紙12月5日付で報道)。20年以上も前から、東北伯地方での干ばつと砂漠化問題が地域経済への影響が大きいことで問題になっていた。基幹産業である農業ができなくなってきていたからだ。
十数年前に現地で有機農業を実践していたころも、干ばつ被害が大きく報道されていたにもかかわらず、水問題を認識して千数百キロにもわたり50センチほどの水道管の敷設をしただけで、恒久的な解決になっていなかった。
そのころから筆者は、干ばつ被害を気象の関係を調べ、大きく地球温暖化の問題にぶつかった。もちろん、州政府でもいろいろな面から専門家を呼んで対策を検討していた。干ばつ資料の中からその被害の発生と雨量などの気象条件との関係をもっと真剣に考えるべきであった。結論は、常に干ばつ被害が出ているのなら、雨を呼ぶ方法はないものか検討すべきである。
雨は大気中に含まれる水蒸気が上昇気流に運ばれて気温の低い上空で凝結して雨粒を含む雲になり、さらに雨粒が大きくなって地上へ落下する。これが雨である。この雨が寒冷地では雪になる。雨には冷たい雨と暖かい雨とがある。RN州の雨はこの暖かい雨に入る。これに対して干ばつとは、雨が降らない原因がある地域に起こる長期間の水不足の状態をいい、雨が降らない。干ばつはその地域の水資源の存在量と人間の水需要のバランスが崩れることによって発生するため、純粋な物理現象ではない。
RN州地域は砂漠化が進んでいる地域で、森林地のない陸地の水蒸気発生源はなく、海からの水蒸気も海岸に山脈がないために水蒸気が風で陸地内部へ飛ばされてしまう。そのため、上空に水蒸気が停滞できない。対策の一つとしては砂漠化を食い止め、緑地を増やし、化学肥料の使用を禁止し、地元樹の植林を永続的に継続することしかない。
アスー市やモソロー市では広大な砂地にわずかばかりの有機質(炭素材)をすき込んで、後は溶解した化学肥料を点滴潅水している栽培農家が多くある。しかも、この用水は地下水からくみ上げている。そのため、地下水が枯渇し、砂漠化を助長していると考えられる。今の状況でこのままの農業が永続的に続くとは考えにくい。こうした水循環を知らない農業者が招いたのが大干ばつである、といっても過言ではないだろう。
この地域の農場で起こっている地下水の塩化問題もある。地下水があっても飲めないのである。砂地のために海水が砂山を浸透して部分的な塩化した地下水域ができていると考えられている。この塩化水を真水にして人間が飲めるようにする技術を導入すれば、水不足もしのげる。その技術が日本で完成している。筒状のフィルターを通した水がほぼ真水に近い水として飲める状態になるというのだ。これを州政府が率先して導入すべきではないだろうか。
さらに、作物種も真水にだけに頼るやり方ではなく、多少の塩化水でも栽培できる作物品種改良も日本では実践されているという。東日本大震災で津波被害を受けた農耕地では塩害が懸念されていたが、塩化水で生育する品種を導入して、栽培を行っているというのだ。干ばつ被害を受けている地域にはそうした発想の転換も必要ではないだろうか。
人間の衣食住の問題は深刻な問題である。それにもまして、水不足の問題は生死にかかわる大きな問題である。今後も地球温暖化が進む傾向にあるのは人間の欲が招いていることは確かで、食糧問題、水不足問題など身近で起こっている現象から逃げられなくなっている。
こうした問題への対策は、今では一人一人の認識の下に個人ではなく集落、共同体で対策を講じなければ大きな成果が得られない時代に突入している。