日本の警官4人が伯国の現状視察
独立行政法人国際協力機構(JICA)では、ブラジルにおける治安の改善を目的に2005年から2期(1期3年)にわたり、地域に密着した日本の交番システムをブラジルに普及させるための技術支援・援助を行ってきた。今回、交番の導入により管轄地域の治安が改善している成果を踏まえ、ブラジル政府からJICAに対して新たに協力の要請があり、JICAは3年計画で「地域警察活動普及プロジェクト」を実行する予定だ。現在サンパウロ(聖)州が中心となっている交番システムを、伯国全土に広める狙いがある。9~11日に視察・指導の目的で来伯した警察庁と神奈川、埼玉両県警の警察官4人が10日、聖市ビラ・ブラルケ区のロータリー交番を訪れ、取り組みの説明を受けたりパトロールに同行するなどして現状を把握した。
ブラジルではJICAの支援により、既に12州210カ所で交番制度が導入されており、過去には普及のため日本の警察官がブラジルに長期滞在して指導したり、ブラジルの警官が日本で研修を受けるなどの協力が行われてきた。今回のプロジェクトはその延長となる。
日本から訪れたのは神奈川県警察本部警備部の遠藤克也警部(49、神奈川)、埼玉県警察本部警察学校渋谷明美警部補(43、埼玉)、警察庁長官官房国際課国際協力室長木村公彦警視長(45、大阪)、同課野口寛之警部(37、埼玉)の4人。10日に聖市マッケンジー大学近くのロータリー交番を訪れた4人はウィルソン・ド・サントス・アルベス所長(38)から活動状況の説明を受けた。
ウィルソン所長の説明によると、1996年に開設された同警察署が交番システムを導入したのは2005年で、交番制度の導入後、同管轄地区は月150件以上あった犯罪件数が現在は10件前後までに改善されたという。
説明の途中で「(交番を)普及させるには今後どういった取り組みが必要か」と遠藤警部がウィルソン所長に質問すると、「交番のシステムは警察の内部でも知られておらず、上層部でも交番に対する理解やシステムを共有できる場所が必要。ただ交番システムを導入するだけでいきなり運営を開始できるものではなく、人材育成も含めた制度改革が必要」と答えていた。
その後、パトロールへの同行や住民への聞き取りを通じて、周辺地域の状況を把握していた。木村警視庁は取材に対し「交番システムで一定の成果を挙げているサンパウロ州が中心となり、広げていける取り組みが必要なのでは」と期待を口にした。
遠藤警部は「細かい課題はいくらかあるが、警察力だけでは地域の安心安全は達成できず、地域住民の理解と信頼を勝ち得ることが必要で共同して連帯する必要がある。視察では気さくに住民と触れ合って、フレンドリーな関係が構築されていると感激した」と取材に対して答えた。
また視察に同行した同地区地域コミュニティーリーダーのジョセ・カルロス・ルイスさん(62)は「こうしたJICAの援助はとてもありがたく、交番の導入によって地域に大きな変化をもたらした。今後も引き続き支援してもらえれば」と感想を述べた。
JICAではブラジル法務省国家公共保安局やサンパウロ州警察と協議を行い、近日中に詳細な活動計画について正式に署名を交わす予定だ。