ブラジルには死刑がないので日本では、考えられない判決が出ることがある。
1995年から2007年にかけて経営する不妊治療クリニックで元患者ら39人の女性を強姦 し、08年に逮捕・起訴された元医師のロジェル・アブデルマッシー被告(66)の1審判決が23日、サンパウロ第16法廷であり、ケナリック・フェリッペ 判事が懲役278年を言い渡した。審理は弁護側証言が170人という異例の多さで行われ、全伯各地からの証人らが「被告は大変面倒見がよく親切」といった人物像を述べた。弁護士はまた、「被告は犯行当時、心神耗弱の状態にあり、冷静な判断能力がなかった」と主張した。
これに対しケナリック判事は、「被告の人物像は起訴事実を退けるものではない」とし、犯行の半数が卵巣摘出手術直後で、麻酔で動けず心身ともに衰弱した女性を狙ったものだと指摘。被害者らは恐怖や怒り、吐き気、悲嘆などを訴えており、情状酌量の余地はないとした。
起訴事実によれば、被告はクリニック診察室や検査室などで、手術や検査後の患者を本棚やテーブルなどに縛りつけるなどして性的暴行を加えた。複数回にわたって暴行を受けた被害者もいて犯罪件数は56件に上る。
強姦は最少6年、未遂は5年という量刑を加算した結果、「懲役278年」の判決が下った。ただ、刑法が定める最長懲役期間は30年。70歳以上の服役者は刑期が半減されることからも、検察側はさらに重い量刑を求めて控訴する方針だ。
被告はなお、逮捕後に保釈申請し、4か月の未決拘置後、最高裁予審により昨年12月に釈放された。同裁は来週、保釈適用の是非について審議し、無効が決定すれば再逮捕となる。