慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において
ハビーブ・アリー・ジェフリー師(アッラーのご加護あれ)TV番組「私たちの人生16」(30:00~40:38)
https://www.youtube.com/watch?v=8IKeIlrPnnk
前回の復習:子どもを持つことの「目的」を明確にすること、このことによって、今後お話する多くの子育てに関する事柄が変わって来ます。すでにお子さんが大きくなっている方も、今からでも、子育ての正しいニーヤ(意思)、「アッラーのご満足を求めて、子どもを育てます。」というニーヤ(意思)をしておきましょう。
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イスラームにおける思春期※の子ども達とのかかわり方(7) 異性への興味
※思春期:
医学的には「第二次性徴の発現の始まりから成長の終わりまで」と定義。(ウィキペディア)
イスラーム的には「10歳からブルーグ※までの時期」
※ブルーグとは?:ムカッラフ(イスラーム法学上の義務行為を行う義務が課せられる者)になること。男の子は精通、女の子は初潮が来ると「ムカッラフ」となる。ブルーグに達した子どもたちは、すでに思春期を卒業し、「ムカッラフ」として、アッラーの元でイスラーム的な義務を負う「成人」の状態になる。
質問:子どもの異性への興味や性欲について、親はどのように対処したらいいですか?
回答:まず、親が子ども達に伝えなければならないことは、「両親に従うことと両親の満足は、現世と来世の幸せの源である。」ということです。この事は、すべてのムスリムの子どもが共通認識とすべき事柄です。特に、日本では、家庭以外にイスラーム教育を行う場所がほとんどなく、家庭で教えなければ、こういった基本的なことも知らずに育ってしまう、という危険性が大いにあるため、十分注意すべきです。
日本では、こういったことは、親が教えなければ、誰も子どもに教えてくれません。両親に対する振舞いは、実のところ、アッラーに対する振舞いであって、両親に対して行っているのではないことを理解しておくこともとても大切です。なぜなら、アッラーがお命じになられた両親への孝行によって、子どもは、アッラーへの崇拝行為を行っているからです。
【われは人間に、両親に対して親切にするよう命じた。】クルアーン29蜘蛛章8
そのためムスリムは、親を騙したり、親に対して反抗したり不誠実な態度を取る、ということはできません。もしうまく両親に隠れて何かをすることができたとしても、アッラーは、決して騙すことができないからです。
次に、親の側が、子ども達にしていくべき点がいくつかあります。
1)子どもが親孝行をできるよう助けること:
預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はおっしゃいました。
《子どもが自分に親孝行できるよう、子どもを助ける親に、アッラーが慈悲をお与えくださいますように。》イブンハッバーン伝承
自分に親孝行するように勧めること、親孝行の子どもに育てることが、アッラーのご満足を得ることになります。イスラームにおける親子の関係は、この重要な基本を忘れないことが大切です。
2)子どもの心に、いつもアッラーが見ているという感覚を育てること:
ある著名な先生のところで学んでいた生徒達が、先生が1人の生徒だけを特別に見ていると、先生に対して、不平を言いました。
「どうして彼だけ特別視するんですか?」
「彼には、特別の才能があるからです。」
「そんなことはありません。私たちも皆、同じです。」
ある日、先生は、生徒たちに宿題を出しました。鳥を一羽、自分だけの手で、誰も見ていないところで屠り(ほふり)、きれいに洗って掃除してから、翌日、学校に持ってくるように、という宿題でした。
翌日、生徒たちは、手に手にきれいに下処理をし終わった鳥を持って、得意げに学校にやって来ました。
ところが、先生に特別視されていた子だけは、手ぶらです。生徒たちは、彼を馬鹿にし笑って言いました。
「先生、これが、あなたが特別な才能があると言った子ですか?先生の言いつけも守れないじゃないか。」
先生は、その子に尋ねました。
「どうして宿題をやってこなかったのだ?」
その子は申し訳なさそうに答えました。
「先生、僕には先生の出した宿題ができなかったんです。だって、先生は、誰も見ていないところで鳥を屠る(ほふる)ようにと言いました。でも、鳥を屠ろう(ほふろう)と部屋に入っても、どんなところに行っても、アッラーがいつも僕と一緒にいるんです。」
先生は、生徒たちに言いました。
「この才能です、私が彼を特別視しているのは。」
子どもが小さい時から、このアッラーがいつも自分を見ている感覚を、子どもの心の中に育てることが、思春期の子ども達のためにとても役立ちます。子どもが自分の内側からの欲望や衝動にかられて、その強い願望にもて遊ばれる思春期の時期には、親がどんなに規制をしても、どんなにルールを作り、禁止したりしても、子どもを抑制することはできないでしょう。子どもは、自分の内側の欲求と戦って、少し弱めることや後回しにすることができたとしても、最後には欲が勝ってしまうでしょう。そして、現代では、親が子どもの行動をすべて監視し管理することは不可能です。
子どもの心の中に、アッラーへの愛情を育てることです。もちろん、アッラーへの畏怖の念やアッラーへの期待、アッラーの元にあるすばらしいものへの期待も大事です。しかし、アッラーへの愛情、アッラーのことが好きだから、アッラーを悲しませることをしたくない、という気持ちを子どもが感じていれば、欲望と戦わなければならない時期に、子どもにとって大きな助けとなります。
質問:現代は、インターネットやテレビで、欲望を刺激するものが沢山溢れています。そういったものに囲まれている中で、子ども達はとても大変だと思いますが。
回答:もちろん、そういった誘惑の多い環境を作る大人には、大きな責任と罪があります。お金儲けのために、欲を刺激するハラームの番組を作るテレビの制作会社やスポンサーや、それに歯止めをかけない政治家など、ハラームの番組制作にかかわる大人全てに責任があり、罪があります。しかし、私たちは、この番組で、社会の責任を追及する前に、自分個人の責任を追及することを目的にしています。アッラーは、自分がしたことしか追求しないからです。個人個人が改善されれば、それがすなわち、社会の改善になります。
質問:現代のような環境の中で、子ども達が、昔の敬虔な方たちのように、自分を守ることはできるのでしょうか?
回答:人々は、それが無理なこと、不可能なことのように錯覚しています。そして、実はその間違った錯覚が、善いことを実行に移すことを妨げてしまっています。しかし、実際に、現代でも、少なくない数の子ども達が、自分を守り、貞淑であることを貫いている、という事実があります。世界中で見れば、このような現代においても、その数は膨大です。
では、貞節を守る男の子達、貞節を守る女の子達は、他の子ども達のように危険な環境にさらされていないのでしょうか。彼らも他の子ども達と同じ現代に生き、目の前にある同じ誘惑の多い環境にさらされていますが、アッラーのご加護により、貞節を守っています。違いは、イスラームの人徳を守ること、アッラーがいつも自分を見ていると感じること、そして、これは重要な点ですが、間違えた時に、自分の間違いを直視して自己反省する勇気があること、です。
重要な点:
1)自分に嘘をつかないことを教える:
人は誰でも間違えることがあります。特に、まだ大人になっていない思春期の子ども達が間違えるのは当たり前のことです。ただ、後戻りできないような大きな間違いを犯さないこと、そして、小さくても何か間違いを犯した時に、自分で間違いを認め、悔悟する勇気を持つこと、が大切です。自分自身に言い訳をして、自分の罪を認めないことは、その間違いを継続して行い、もっと大きな罪に導かれることを招きます。あの時は仕方がなかった、友達に誘われて断るなんてできないから、私は本当はしなくなかったけれど、あの子があんなことを言い出さなければ、、、等、「自分が悪い」というたったそれだけのことを認める勇気がないために、他人のせいにしたり、周りのせいにしたり、様々な言い訳を考えます。それらはすべて事実ではなく、自分に対する嘘です。親は、子どもに、自分に正直になること、自分に嘘をつかないことを教え奨励すべきです。それは教育においてとても大切なことです。
2)子どもとの話し合いの扉をいつでも開けておくこと:
いつでも子どもの話を聞く態勢を保ち続けることが大切です。子どもが間違いを犯してしまった時に、すぐに親に相談できる親子関係があることは、その後に起こる間違いを防ぎ、もっと大きな間違いを犯すことから子どもを守ります。基本的に、子どもが安心して何でも親に話せるような子どもとの強い信頼関係があることが大切です。子どもが間違いを犯して正直に親に話した時に、親から怒られず、親が一緒に解決策を考えてくれるとわかっていれば、子どもは親のところにやって来ます。そうすれば、自分一人では解決が難しい深刻な問題に陥っているような場合にも、大きな問題になる前に親が救うことができます。
悪い友達からタバコを薦められてタバコ位ならと吸ってみたら、次は、覚せい剤を薦められ断れずに吸ってしまった、その事実を親にばらされたくなければ、次はコカイン、次は、、、と、子どもは、軽い気持ちから、自分では歯止めをかけるのが難しい危険な犯罪に陥ってしまうこともあります。しかし、その間違いの最初の何回かの段階で、子どもは自分自身で間違いに気付いており、止めたいけれどどうすればいいのか、、と困惑し戸惑っている期間があるでしょう。
この期間は、とても貴重な重要な期間です。その時に、親子が強い信頼関係で結ばれていれば、子どもが親に正直に、「お母さん、話があるんだけど。実は、大きな間違いを犯してしまったの。この前、友達に覚せい剤を薦められて、断り切れずに吸ってしまった。」と打ち明けられます。自分の間違いを親に話せるかどうかは、話しても、親が自分を受け止めてくれるという確信が子どもの中にあるかどうかです。親がパニックになって子どもに手をあげたり、「なんてことをしたの!!もうあなたのことは絶対に信用しない!」と子どもを切り離すような言動をとることがない、と子どもがわかっていれば、必ず子どもは困った時に親のところに来ます。
子どもが大きな問題に陥る前に、親に相談できることは、まだ一人ですべてを解決することができない子どもにとってはとても安心で、大きな助けになります。しかし、もし子どもに、親に対する信頼がなければ、シャイターンにチャンスを与えてしまい、子どもが間違った行いを継続し、引き返せないギリギリの境界線までも超えてしまうことにもなりかねません。
また、兄弟や姉妹がいる場合、彼らとの関係も重要です。兄が弟の間違いを暴露して、親の愛情を独り占めしようとしたり、反対に、兄弟が協力して、お互いの間違いが親にばれないように裏で結託したり、ということは、両方とも間違いです。家族関係の根本、アッラーへの崇拝行為として親子関係や兄弟関係を築くことを、子ども達に教える必要があります。
思春期に役立つ子ども教育にとって大切なこと:
1)アッラーがいつも自分を見ているという感覚を子どもの中に育てること
2)アッラーへの愛と畏怖の念、期待を子どもの中に育てること
3)子どもと何でも話せる信頼関係を築くこと
4)子どもが自分の間違いを認める勇気を持てるよう奨励すること
世界中のムスリムの子ども達とご両親にアッラーのご加護とご援助がありますように。