盃の殿様(さかずきのとのさま)
心の病に臥せった江戸屋敷の大名が、傾城の錦絵に興味を示した。
大名が吉原に行くのは如何なものかと重役が協議をした結果、病気治癒のためなら止むを得ないということになり、三百人の行列で繰り出した。
冷やかしのはずだったが、殿様が花扇花魁に夢中になった。
それから、毎日のように吉原に通ったが、一年間国表に戻る日が来た。
国表に戻っても、花扇のことが忘れられず、江戸までの三百里を十日で往復するという藩内一番の速足、足軽の早見東作に命じて、江戸の花扇に七合盃の使いに出した。
花扇は快く飲んで盃を返した。
国に帰る途中で早見は、さる大名行列を妨げた廉で捕らわれ、詮議の結果、話を聞いた大名が感銘して、盃を空けて主君に返すように命じた。
国元に戻って子細を説明すると、殿様が盃を空け、その大名に返盃をするように命じた。
返盃を命じられても、どこの大名か分からず、早見は未だに探しているという。
|
クリックをお願いします↑↑↑↑