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【辛坊持論】軽減税率論じるより社会的公平実現のための税制を

2015年12月26日 | ニュース

 軽減税率の範囲が決まりました。財務省主導で突然、「マイナンバーカードで税還付」なんていうトンデモ案が出て以来、実に3か月のスッタモンダの末の決着です。どうやら新聞は軽減税率の対象になりそうで、この件についてあんまり批判的な話が紙面に載っていないようですから、あえて私が言わせてもらいます。「軽減税率なんか要らないんじゃないの!」って。

 今回の決定で一般的な庶民がいくらくらいの恩恵を受けるかって考えると、多分1人当たり、1か月で1000円にも満たないと思いますよ。私、一人暮らしの経験が長いですから感覚的に分かりますが、自炊の場合、スーパーで支出する食材費って1日平均1000円くらいでしょう。てことは、消費税10%導入時に食品が8%に据え置かれたとして、軽減される税負担は1日あたりわずかに20円、1か月で600円にしかなりません。

 一方で、たくさん消費する高額所得者の食費にも軽減税率が適用されるわけで、失われる税収はトータル1兆円にも上ります。社会的公平性から見ると、軽減税率なんか導入せずに1兆円の税収を確保して、それを低所得者に配布する方が、福祉政策としてはよほどマトモじゃないでしょうか。

 また一部にはいまだに「消費税は悪税」と思っている人もいるようですが、この発想は間違いです。年金をはじめとする高齢者の社会福祉の費用は、現役世代の所得税や保険料によって賄われているのに、日本の金融資産のほとんどは高齢者が所有しているんです。

 さらに、現役世代の将来の年金や社会福祉は、今の高齢者に比して相当にお寒い状況になるのは目に見えています。「直接税」を払っていないお金持ちの高齢者に社会保障の費用を負担してもらうには、「間接税」である消費税が一番確実です。

 そもそも消費税が悪税なら、消費税25%なんていう北欧諸国は、「悪の大国」ってことになってしまいます。日本にとっての喫緊の課題は、不毛な軽減税率の議論でなく、世代間格差是正を含めた社会的公平実現のための税制構築論議なんです。

 なんて怒っているうちに、諸般の事情で、2013年9月から続いたこの連載は今日でオシマイです。長年ご愛読ありがとうございました。読者の皆さんのご多幸、心よりお祈りします。((株)大阪綜合研究所代表・辛坊 治郎)

 

 

 

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