何を書きたいのか。とか、何を描きたいか。じゃなく
その時、自分が何者であるかが、分かる人は
まっすぐで、捻じ曲がってても
爽やかに笑いながら アングラな風を漂わせても
そこが魅力となるわけで・・・
やっぱり 私にとって、ヒーローなのである。
・・・・・と思った。。。。。。
~寺山修司への七〇行~より
谷川 俊太郎
でっかい鼻の大男よ
きみはフレンチ・ホルンを吹くことが出来なかった
だがきみはある晩パリで
私をクスクス料理に連れていってくれた
そして私にくろずんで
かさかさに乾いた手を見せた
否定形で語るのも
きみに敬意を払うひとつの方法
きみは子どもを残さなかった
家を残さなかった
土地を残さなかった
勲章を残さなかった
残さぬことできみが残した
目に見えぬもの
執着していたものは一体なんだったのだろう
夥しいきみの比喩は
丈高いポックリをはき
肩にレイン・コートを羽織ったきみの姿ほどには
世界を語らない
でっかい鼻の大男よ
きみはフォルクスワーゲンを運転できなかった
だがその助手席できみは
決して眠ることはなかった