~Words~

心に宿る言葉たち

Heroes

2008-06-15 | Favorite 詩

 

何を書きたいのか。とか、何を描きたいか。じゃなく

その時、自分が何者であるかが、分かる人は

まっすぐで、捻じ曲がってても

爽やかに笑いながら アングラな風を漂わせても

そこが魅力となるわけで・・・

やっぱり 私にとって、ヒーローなのである。

・・・・・と思った。。。。。。

 

 

 

 

~寺山修司への七〇行~より

         谷川 俊太郎

 

 

でっかい鼻の大男よ

きみはフレンチ・ホルンを吹くことが出来なかった

だがきみはある晩パリで

私をクスクス料理に連れていってくれた

そして私にくろずんで

かさかさに乾いた手を見せた

 

         

 

否定形で語るのも

きみに敬意を払うひとつの方法

きみは子どもを残さなかった

家を残さなかった

土地を残さなかった

勲章を残さなかった

残さぬことできみが残した

目に見えぬもの

                               

執着していたものは一体なんだったのだろう

夥しいきみの比喩は

丈高いポックリをはき

肩にレイン・コートを羽織ったきみの姿ほどには

世界を語らない

でっかい鼻の大男よ

きみはフォルクスワーゲンを運転できなかった

だがその助手席できみは

決して眠ることはなかった