「希望と安心」の国 経済財政諮問会議(平成19年第32回)説明資料 日本経済の進路と戦略(案)(PDF:758KB)
(2)目指す経済社会の姿
我が国が今後目指すのは、若者が明日に希望を持ち、お年寄りが安心できる、「希望と安心」の国
①成長力の強化、②地方の自立と再生、③安心と信頼のできる財政、社会保障、行政の構築、の3つが重要 これらは相互に補強し合う関係、一体として「希望と安心」の国の実現を目指す。
①成長力の強化
日本経済が直面する課題を克服し、「希望と安心」の国を実現するためには、国民が目指すべき日本の経済社会の姿を共有し、勇気をもって柔軟に、人口減少やグローバル化等の大きな変化に対応していかなければならない。
そのためには、「自立と共生」の新たな理念で、これからの成長をとらえることが必要である。
「共生」の理念とは、格差のひずみの小さな国を目指し、都市も地方も、老いも若きも、大企業も中小企業も、連携してともに成長する仕組みを創るという「つながり」を重視する考え方である。
優れた人材が育ち、年齢、地域、業種や規模などの壁を越えて、知恵や情報が循環・共有されることで、新たな成長の力が生まれる。
また、「共生」が成長力となるには、それぞれの主体が「自立」し、それぞれの強みを発揮することが不可欠であり、それによってつながりは、もたれ合いや依存体質ではなく、「つながり力」とも呼ぶべき相乗効果を発揮することが可能になる。こうした「自立と共生」の理念に基づく成長メカニズムを生み出すことが、いま求められている。
②地方の自立と再生
地方は、経済成長の原動力であるとともに、国民一人一人の生活の場である。「希望と安心」の国を目指すためには、全国すべての地方がそれぞれ「希望と安心」に満ちたものに変わっていかなければならない。その場合においても、求められるのは「つながり力」の発揮である。
まずは、各地域が自らの取組を推進し、独自の魅力を高めていく必要がある。そのためには、生活及び産業基盤の整備や、地域の持つ人材、文化、観光資源等の潜在力を最大限に発揮できる仕組みや環境作りが求められる。
また、そこに住む人々が、毎日の生活において、あるいはより広域的な活動において、交流し協力し合うことが重要である。それにより人々の生活や活動の質を相互に高め合っていく関係が、地域社会に根付いていくことが期待される。
これらを通じて、地域において、独自に人材育成、新しい情報発信、文
化の育成が進み、全国すべての地域で、そこに生活する人々がその地域に
希望と安心を感じられるようにしていく必要がある。
生活を支える基盤である行政については、真の地方分権を実現し、受益
と負担を勘案して、自らの判断と責任で行政サービスを選択する仕組みを
構築するため、権限・財政両面での地方の自立を進める必要がある。
③安心と信頼のできる財政、社会保障、行政の構築
財政については、将来に負担を先送りしない構造を実現していかなければならない。また、それに向けた取組を着実に進めていくとともに、長期的な財政健全化の道筋を明確にしていくことで、将来の負担増に対する国民の不安感を取り除くことも重要である。それは、グローバルな金融市場で全世界がつながっている今日において、海外からの信頼を確保することにもつながる。
社会保障については、国民の安心や安定を支えるセーフティネットとしての役割・機能を果たし続けられるようにするとともに、自立の精神を大切にしつつ、分かりやすく親切で信頼でき、かつ持続可能な制度を構築する。そのために、受益と負担のバランスを常に点検し、その両面から見直しを図るとともに、経済、財政とバランスの取れたものとする必要がある。
行政については、21世紀にふさわしい行政システムの構築に向けて、政府がやるべきこと、民間がやるべきことの仕分けを行いつつ、無駄のない効率的な行政を実現することが重要である。また、生活者・消費者の視点に立った行政にしていく必要がある。
第2章 成長力の強化に向けて
(1)「つながり力と環境力」の成長戦略
(3つの目標)
日本経済が直面する課題を克服し、「希望と安心」の国を実現するためには、目指すべき日本の経済社会の姿を共有することが必要である。我が国が今後10年程度の間に実現を目指す姿として次の3つの目標を掲げ、重点的に改革戦略を講ずる。こうした目標の下、人口減少下にあっても、実質2%以上の経済成長が視野に入ることが期待される。
目標1:世界とともに発展するオープンな国~世界に誇れる魅力ある国~
ヒト・モノ・カネ・情報のグローバルな流れを拡大し、ダイナミックに成長し続ける。アジアの発展に貢献し、行ってみたい国、暮らしてみたい国になる。ものづくりや環境・エネルギーなどの技術において、世界トップの水準を堅持する。
目標2:人生90年時代を安心して生活できる国 ~質の高い労働、質の高い暮らし~
生産第一の発想や大量消費型生活から脱却し、質の高い暮らし方や働き方、住まい方を実現する。環境と経済を両立し、ものを大切にするライフスタイルを創る。
目標3:人口減少下でも経済成長を持続する国 ~人口減少の克服~
我が国の強みである「人材」、「技術」、「文化やライフスタイル」を最大限に活かし、消費者・生活者主導で、格差のひずみの小さい、またオープンで内需・外需のバランスのとれた、持続的成長を実現する。
3つの目標に共通し、より高次の社会を目指す姿として、地球環境との共生があり、環境と両立した経済社会を創ることが不可欠である。省エネ技術等でトップに立つ日本は、今後とも「環境力」を発揮すること、すなわち環境に配慮するマインドの共有や、地球環境問題における先導的役割の遂行、低炭素社会構築等のための環境イノベーションの強化などが求められる。
(目標を実現するための経済成長の姿) 上記の3つの目標を実現するための経済成長の姿は、次のようなものであり、そのカギは、それぞれの主体が自立し、強みを発揮しながら連携する「つ
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ながり力」である。
①全員参加型の経済 )消費者が成長を牽引する
生産第一の発想から脱し、消費者重視の社会をつくる。優れた商品・サービスが生活の豊かさをもたらし、所得と雇用につながる好循環を目指す。
)ITを徹底活用する
ITの全面活用により、すべての人がつながる社会にする。新たなコミュニケーションを広げ、新たなサービスや雇用機会を拡大する。幅広い産業・組織の生産性向上や地域活性化を実現する。
)高齢世代と現役世代が支え合う
高齢者と若者が交じり合って働く労働市場にする。健康や介護、子育てなど生活の安心につながるサービスを少子高齢化社会における成長産業として育てる。
)未来世代に責任を持つ
環境と両立した経済を構築し、将来世代に引き継ぐ。こうした経済モデルを、あらゆる分野・地域で展開し、将来にわたって持続力がある社会を構築する。
)正規と非正規の壁を越える 多様で柔軟な働き方が選択でき、就労形態にかかわらず、公正な処遇が確保される社会にする。 )業種や企業規模を超えて連携する 大企業と中小企業、製造業と農業・サービス業などが知恵や情報を循環・共有して連携し、発展する。 )都市と地方が支え合う 広域経済圏を形成し、その中で都市と地方が連携することで、双方の生活と産業をともに支え合う。
②強みを伸ばす経済 )強みを活かすことで、国際競争力を高める グローバル化の中で、“オンリー・ワン”の付加価値を追求し、世界トップの技術水準を堅持する。 )リスクを好機に転換して成長する
人口減少・高齢化、海外依存度の高いエネルギーや食料の安定確保、環境制約など、リスク要因となる課題を克服し、逆に成長のカギにする。
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)“長持ち・ゆったり生活”で質の高い生活を創造し世界に広げる
狭い住空間、使い捨て消費の生活から、ライフサイクルコストを下げて、ゆったり長く使う、楽しみを広げながら使うストック型社会に転換する。
)誰もがいつでも能力を磨き、能力を発揮する 所得を高める機会がすべての人に開かれるよう能力開発の機会を用意する。努力が報われる社会にする。
③世界とともに成長する経済 )経済をオープンにし、ヒト・モノ・カネ・情報の流れを拡大する 欧米やアジア等との連携・協調を拡大し、優れた要素・仕組みなどを日本に積極的に取り込み、新しい成長エネルギーとする。 )日本の強みを活かして地球的課題に主導的役割を果たす 気候変動対策等の環境保全、水資源確保など、先進諸国と新興国・発展途上国の共通課題の解決を主導する。 )日本の魅力を世界に発信する ソフトパワーとしての日本の文化、コンテンツ、ライフスタイルなど日本の魅力を世界に広め、暮らしたい国、行ってみたい国にする。 )それぞれの地方が強みを伸ばし、世界とつながる 日本の地域と世界の地域の多様なつながりをつくる(ローカル to ローカル)。 )最大の成長センターたるアジアに位置する強みを活かす
アジアの経済圏の中で、アジアとともに成長するため、経済諸制度の高度化・調和を図るとともに、金融資本市場の成長性と安定性を高める。地球環境等を巡る問題にともに取り組み、ともに成長する枠組みをつくる。
)日本で国際的な人材を育成する
日本をアジアの人材育成の拠点とする。国際的人材を育成すると同時に、外国の優れた人材を日本に受け入れ、能力を発揮しやすい社会にする。
(2)成長戦略の具体化
具体的には、以下の3つを新たな成長戦略として推進していく。すべての戦略において、「環境力」を共通の基盤とするとともに、「つながり力」の効果的な発揮を図る。
(2)目指す経済社会の姿
我が国が今後目指すのは、若者が明日に希望を持ち、お年寄りが安心できる、「希望と安心」の国
①成長力の強化、②地方の自立と再生、③安心と信頼のできる財政、社会保障、行政の構築、の3つが重要 これらは相互に補強し合う関係、一体として「希望と安心」の国の実現を目指す。
①成長力の強化
日本経済が直面する課題を克服し、「希望と安心」の国を実現するためには、国民が目指すべき日本の経済社会の姿を共有し、勇気をもって柔軟に、人口減少やグローバル化等の大きな変化に対応していかなければならない。
そのためには、「自立と共生」の新たな理念で、これからの成長をとらえることが必要である。
「共生」の理念とは、格差のひずみの小さな国を目指し、都市も地方も、老いも若きも、大企業も中小企業も、連携してともに成長する仕組みを創るという「つながり」を重視する考え方である。
優れた人材が育ち、年齢、地域、業種や規模などの壁を越えて、知恵や情報が循環・共有されることで、新たな成長の力が生まれる。
また、「共生」が成長力となるには、それぞれの主体が「自立」し、それぞれの強みを発揮することが不可欠であり、それによってつながりは、もたれ合いや依存体質ではなく、「つながり力」とも呼ぶべき相乗効果を発揮することが可能になる。こうした「自立と共生」の理念に基づく成長メカニズムを生み出すことが、いま求められている。
②地方の自立と再生
地方は、経済成長の原動力であるとともに、国民一人一人の生活の場である。「希望と安心」の国を目指すためには、全国すべての地方がそれぞれ「希望と安心」に満ちたものに変わっていかなければならない。その場合においても、求められるのは「つながり力」の発揮である。
まずは、各地域が自らの取組を推進し、独自の魅力を高めていく必要がある。そのためには、生活及び産業基盤の整備や、地域の持つ人材、文化、観光資源等の潜在力を最大限に発揮できる仕組みや環境作りが求められる。
また、そこに住む人々が、毎日の生活において、あるいはより広域的な活動において、交流し協力し合うことが重要である。それにより人々の生活や活動の質を相互に高め合っていく関係が、地域社会に根付いていくことが期待される。
これらを通じて、地域において、独自に人材育成、新しい情報発信、文
化の育成が進み、全国すべての地域で、そこに生活する人々がその地域に
希望と安心を感じられるようにしていく必要がある。
生活を支える基盤である行政については、真の地方分権を実現し、受益
と負担を勘案して、自らの判断と責任で行政サービスを選択する仕組みを
構築するため、権限・財政両面での地方の自立を進める必要がある。
③安心と信頼のできる財政、社会保障、行政の構築
財政については、将来に負担を先送りしない構造を実現していかなければならない。また、それに向けた取組を着実に進めていくとともに、長期的な財政健全化の道筋を明確にしていくことで、将来の負担増に対する国民の不安感を取り除くことも重要である。それは、グローバルな金融市場で全世界がつながっている今日において、海外からの信頼を確保することにもつながる。
社会保障については、国民の安心や安定を支えるセーフティネットとしての役割・機能を果たし続けられるようにするとともに、自立の精神を大切にしつつ、分かりやすく親切で信頼でき、かつ持続可能な制度を構築する。そのために、受益と負担のバランスを常に点検し、その両面から見直しを図るとともに、経済、財政とバランスの取れたものとする必要がある。
行政については、21世紀にふさわしい行政システムの構築に向けて、政府がやるべきこと、民間がやるべきことの仕分けを行いつつ、無駄のない効率的な行政を実現することが重要である。また、生活者・消費者の視点に立った行政にしていく必要がある。
第2章 成長力の強化に向けて
(1)「つながり力と環境力」の成長戦略
(3つの目標)
日本経済が直面する課題を克服し、「希望と安心」の国を実現するためには、目指すべき日本の経済社会の姿を共有することが必要である。我が国が今後10年程度の間に実現を目指す姿として次の3つの目標を掲げ、重点的に改革戦略を講ずる。こうした目標の下、人口減少下にあっても、実質2%以上の経済成長が視野に入ることが期待される。
目標1:世界とともに発展するオープンな国~世界に誇れる魅力ある国~
ヒト・モノ・カネ・情報のグローバルな流れを拡大し、ダイナミックに成長し続ける。アジアの発展に貢献し、行ってみたい国、暮らしてみたい国になる。ものづくりや環境・エネルギーなどの技術において、世界トップの水準を堅持する。
目標2:人生90年時代を安心して生活できる国 ~質の高い労働、質の高い暮らし~
生産第一の発想や大量消費型生活から脱却し、質の高い暮らし方や働き方、住まい方を実現する。環境と経済を両立し、ものを大切にするライフスタイルを創る。
目標3:人口減少下でも経済成長を持続する国 ~人口減少の克服~
我が国の強みである「人材」、「技術」、「文化やライフスタイル」を最大限に活かし、消費者・生活者主導で、格差のひずみの小さい、またオープンで内需・外需のバランスのとれた、持続的成長を実現する。
3つの目標に共通し、より高次の社会を目指す姿として、地球環境との共生があり、環境と両立した経済社会を創ることが不可欠である。省エネ技術等でトップに立つ日本は、今後とも「環境力」を発揮すること、すなわち環境に配慮するマインドの共有や、地球環境問題における先導的役割の遂行、低炭素社会構築等のための環境イノベーションの強化などが求められる。
(目標を実現するための経済成長の姿) 上記の3つの目標を実現するための経済成長の姿は、次のようなものであり、そのカギは、それぞれの主体が自立し、強みを発揮しながら連携する「つ
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ながり力」である。
①全員参加型の経済 )消費者が成長を牽引する
生産第一の発想から脱し、消費者重視の社会をつくる。優れた商品・サービスが生活の豊かさをもたらし、所得と雇用につながる好循環を目指す。
)ITを徹底活用する
ITの全面活用により、すべての人がつながる社会にする。新たなコミュニケーションを広げ、新たなサービスや雇用機会を拡大する。幅広い産業・組織の生産性向上や地域活性化を実現する。
)高齢世代と現役世代が支え合う
高齢者と若者が交じり合って働く労働市場にする。健康や介護、子育てなど生活の安心につながるサービスを少子高齢化社会における成長産業として育てる。
)未来世代に責任を持つ
環境と両立した経済を構築し、将来世代に引き継ぐ。こうした経済モデルを、あらゆる分野・地域で展開し、将来にわたって持続力がある社会を構築する。
)正規と非正規の壁を越える 多様で柔軟な働き方が選択でき、就労形態にかかわらず、公正な処遇が確保される社会にする。 )業種や企業規模を超えて連携する 大企業と中小企業、製造業と農業・サービス業などが知恵や情報を循環・共有して連携し、発展する。 )都市と地方が支え合う 広域経済圏を形成し、その中で都市と地方が連携することで、双方の生活と産業をともに支え合う。
②強みを伸ばす経済 )強みを活かすことで、国際競争力を高める グローバル化の中で、“オンリー・ワン”の付加価値を追求し、世界トップの技術水準を堅持する。 )リスクを好機に転換して成長する
人口減少・高齢化、海外依存度の高いエネルギーや食料の安定確保、環境制約など、リスク要因となる課題を克服し、逆に成長のカギにする。
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)“長持ち・ゆったり生活”で質の高い生活を創造し世界に広げる
狭い住空間、使い捨て消費の生活から、ライフサイクルコストを下げて、ゆったり長く使う、楽しみを広げながら使うストック型社会に転換する。
)誰もがいつでも能力を磨き、能力を発揮する 所得を高める機会がすべての人に開かれるよう能力開発の機会を用意する。努力が報われる社会にする。
③世界とともに成長する経済 )経済をオープンにし、ヒト・モノ・カネ・情報の流れを拡大する 欧米やアジア等との連携・協調を拡大し、優れた要素・仕組みなどを日本に積極的に取り込み、新しい成長エネルギーとする。 )日本の強みを活かして地球的課題に主導的役割を果たす 気候変動対策等の環境保全、水資源確保など、先進諸国と新興国・発展途上国の共通課題の解決を主導する。 )日本の魅力を世界に発信する ソフトパワーとしての日本の文化、コンテンツ、ライフスタイルなど日本の魅力を世界に広め、暮らしたい国、行ってみたい国にする。 )それぞれの地方が強みを伸ばし、世界とつながる 日本の地域と世界の地域の多様なつながりをつくる(ローカル to ローカル)。 )最大の成長センターたるアジアに位置する強みを活かす
アジアの経済圏の中で、アジアとともに成長するため、経済諸制度の高度化・調和を図るとともに、金融資本市場の成長性と安定性を高める。地球環境等を巡る問題にともに取り組み、ともに成長する枠組みをつくる。
)日本で国際的な人材を育成する
日本をアジアの人材育成の拠点とする。国際的人材を育成すると同時に、外国の優れた人材を日本に受け入れ、能力を発揮しやすい社会にする。
(2)成長戦略の具体化
具体的には、以下の3つを新たな成長戦略として推進していく。すべての戦略において、「環境力」を共通の基盤とするとともに、「つながり力」の効果的な発揮を図る。