山王アニマルクリニック

日々の診療、いろんな本や音楽などについて思い巡らしながら、潤いと温もりのバランスを取ってゆこうと思います。

マムシ咬傷2

2022-08-19 19:21:54 | 診療よもやま

これは中型犬の後肢なのですが、一見ちょっと血がついているだけに見えます。

でも、上の方を見てみると……

 

こんなにパンパンに腫れちゃってます。

 

出血部位の毛を刈ると、マムシの毒牙と思われる痕がありました。

前回(マムシ咬傷)書いたように、後肢を咬まれるケースは少ないんですよね。

お薬を投与して3日後には、ここまで腫れや出血所見はなくなりました。

このワンちゃんは、前日夜の散歩中に咬まれたようで、その時はキャンとも鳴かず翌日になって肢を引きずり、腫脹していたので気づいたそうです。

咬まれた可能性のある場所は、やはり草むらみたいですね。

マムシに咬まれるワンちゃんは数年に一度くらいしかなかったのに、今年はこれで2件目なんです。

単なる偶然かもしれませんが、もしかしたら今年は多い可能性もあるので、これから秋まではマムシに注意して下さい!!

気持ち悪くて見たくもない人もいるでしょうが、避けるための練習(保護色なので気づきにくい)として群馬県にあるジャパン・スネークセンターの動画を貼っておきます。

人も年間3000人くらい被害にあってるんですね――気をつけましょう!

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マムシ咬傷

2022-04-25 23:40:11 | 診療よもやま

「散歩中、突然、蛇に咬まれた!」とラブちゃんが来院しました。

少し出血があり、直後だというのに咬まれた左側だけ腫脹しています。

写真ではわかりにくいのですが、出血部位をよく見ると穴が2つあいています。

これは2つの牙を持つ毒蛇――マムシに咬まれたことを意味します。

そもそも毒のない蛇であったなら出血はしても、直後にここまで腫れあがることはないでしょう。

この子は何年か前のマムシ被害にあったワンちゃんですが、

右側を咬まれたのに次の日には左右も下も腫脹し…

 

左肘や胸部付近まで腫れてしまいました。

 

 

治療して3日後にはだいぶ腫れが引いてきています。

 

 

これも上と同じ日の写真です――だいぶ腫れが引きましたね。

 

これはマムシに咬まれてから12日後の写真です。

腫れは完全に引いていますが、2つの毒牙の傷跡がはっきりと残っています。

犬がマムシに咬まれて亡くなることは、まれであり、ちょっとした治療で治っていくことが多いのですが、小型犬では死亡してしまうこともあるようです。

(当院では死亡例はなく、中型犬での発生が多いです。大型犬であるラブラドールの例では食欲が落ちず、中型犬の例では一週間くらい食欲が落ちてしまったので、体重当たりの毒の注入量によって重症度が変わるのでしょう)。

マムシは、カエルやトカゲ、ネズミ、鳥などを食べています。

最近、当院の駐車場でもアマガエルがぴょこぴょこ跳ねていましたし、田んぼではカエルたちの大合唱が響いていますからね。

獲物となる生き物が潜む所には、マムシも潜んでいる可能性があります――水田や畑、草むらなどを散歩するときは気をつけましょう!

当院では、田んぼなどの草むらに顔を突っ込んだ時に顔周囲を咬まれるケースが一番多く、次いで前肢での発生が多いです。

3日後の写真では、2つの毒牙の跡がはっきりと確認できますが、腫れは引いてきています。

この子を咬んだマムシは、なんと草むらを通る道の真ん中でとぐろを巻いていたそうです。

(二匹で散歩中、もう一匹のワンちゃんに気を取られているうちに咬まれてしまったとのこと)

咬まれた周囲は腫れがひいたのに、顎の下から首にかけては浮腫を起こしています。

マムシ咬傷は5月くらいからみられ始め(上のラブちゃんは4月下旬)、8~9月の発生が一番多い(マムシの繁殖&出産シーズンなので活発化との説あり/もう一匹のワンちゃんは8月上旬でした)ようなので、これからの季節は特に気をつけて下さい!!

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猫の咬傷~膿瘍

2022-02-08 19:30:32 | 診療よもやま

この猫ちゃん…外にも出ている子なのですが、何か元気がなく歩き方がおかしいので来院しました。

痛みがあるようで、触診すると場所によってはシャーと怒ったりします。

痛そうな所を注意深くチェックすると…毛が小さく固まった所をいくつか発見!

その周辺の毛をバリカンで刈ってみると……

咬まれた傷が出てきました!

咬まれたり引っかかれたりした傷の多くは、点のように小さいのです。

しかし、小さくても深い傷であると、口腔内や爪に潜む細菌を皮下に注射されたのと同じようになってしまい……

膿(細菌と戦って崩壊した白血球)が皮膚の下に溜まって、このように腫れてしまうのです。

猫は毛が細く柔らかいため、傷ができると、すぐにそこから出た血や漿液をまとった毛のカサブタができて蓋をされ、細菌が密閉されやすいんですよね。

この状態であると発熱するので、たいていの子は食欲がなくなります。

こういう場合、穴をあけて膿を出す処置をしないと熱は下がりません。

排膿処置をしないと、どんどん増える膿の圧力によって皮下の血流が失われ、壊死していきます。

上の写真の皮膚が黒くなっている所は、壊死してしまっています。

これをさらに放置すると、壊死した皮膚はとうとう破裂し、膿が流れ出てきます。

場所によっては腫れていることがわかりにくく、かなり壊死していても表面的に生えた毛によって一見わからないことが多いので気をつけてください(この写真は毛を刈ってあります)!

これを防ぐためには、小さな毛のかたまりの下にあったりする点のような傷を見つけ、なるべく早く消毒&抗菌薬を投与する必要があります。

年末から2月上旬は発情している猫が多く、春に向けて恋を巡るバトルも増えます。

外猫ちゃんのバトルの声が響いた後などに、歩き方が何かおかしいとか、熱っぽく食欲が落ちている時は、なるべく早く信頼できる動物病院へ行きましょう!

早ければ早いほど皮膚の壊死は防げるので、小さい傷だからと放置しないでください(壊死が広範囲であるほど、高額の治療費がかかります)!!

(追記)

…と書いていたら、室内のみでも複数飼育で咬まれてしまった子が来院しました。

こういうことは外猫よりかなり少ないのですが、これはけっこうひどく、膿が出ています。

毛を剃ってみると、こんな感じです。

大きな傷だったおかげで早めに排膿され(一部壊死)、あまり発熱せず食欲もありました。

室内のみでも、複数飼育の時は同様に気をつけてください!!

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猫プラズマ細胞性肢端皮膚炎2

2021-11-06 15:59:47 | 診療よもやま

以前、猫プラズマ細胞性肢端皮膚炎のことを書きましたが、それを見て、これまたひどいケースの子が来院されました。

今まで診察した中でも、パッドの一部がここまでひどく飛び出してしまっている例は初めてです。

やはり10匹以上の多頭飼育の環境(レトロウイルスの関与が疑われる)であり、かなりメタボな猫ちゃんでした。

食が細い子もいれば太い子もおり、多頭飼育であるほど飼養管理が難しいんですよね。

ごはんの時だけ個別ケージにして一日摂取量をきちんと把握するのが理想ですが、多頭であるほどフードが常にてんこ盛り傾向となってしまうのでしょう(ナイト キャット & ビジー ドッグ)。

ここまで出っ張ってしまっていると外科的に切除した方がいいのか?とも思いましたが、取りあえず抗炎症作用のある抗菌薬で治療してみました。

しかし、一ヵ月以上投与してもほとんど変化がなかったので(10週ほどで8割は治るらしいのですが…)、この治療はやめて前回と同じ漢方薬ブレンド(抗菌薬もクラシックなものに変更しています)を使ってみました。

こういう症例では「ホントにそれで治ったのかよ…」とインチキ臭く感じることも多いでしょうから、徐々に治っていく過程の写真もしっかり載せます。

少し引っ込んできたけど、何か治療に対する反応が微妙…やはり外科切除?と思ったら、1日2回与えなければならない薬を1回しかやらなかったとのことでした。

薬袋にはちゃんと書いてあったのですが、前の薬が1日1回だったので、間違ってしまったようです。

習慣とは、恐ろしいですね!!

きちんと1日2回にしたら、3週間後(実は2週間分の薬しか出してなかったのです)、ほぼ平面になってきました!

でも、少し出血傾向…これはいい兆候なのか??

更にしっかり薬を投与してもらうと、2週間後、こんなに小さくなりました!

投薬コンプライアンスは、とても重要ですね。

みなさんも、しっかりと確認して投与量を守ってください!!

 

そのまた2週間後には赤い部分はなくなり、薄いカサブタのみとなりました!

 

飼い主さんは愛情ある方で、この子はとてもおとなしくていい子だったんですよね。

最初の頃は少々おびえている感じでしたが、治った後のこの写真では何か余裕を感じさせる表情となってくれました!!

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チカラシバ/犬の耳や肢間に注意!

2021-09-28 17:05:18 | 診療よもやま

道端に生えているこの植物…何となく見覚えがありませんか?

大きな猫じゃらし様の穂(15cmくらい)なのですが、これがかなりのクセモノなのです。

引っこ抜くのに力がいるこの雑草は、チカラシバといいますが、この写真は一部の穂がまだ黒っぽいですね。

 

 しかし、冬が近づくにつれ乾燥し、小麦色になってくると……

 

 

ちょっと触れただけでポロポロと落ち、ワンちゃんの毛や服にくっつくのです。

体にくっつくだけならまだいいのですが、運悪く耳の中に入ってしまうと……

 

種子の外殻にあるトゲトゲが反発力を生み、ワンちゃんが耳をかけばかくほど、奥へ奥へと進んでしまうのです!!

一度だけですが、けいれん様発作で来院した例もあるくらいなので、かなりつらいと思います(来院が遅れ、亡くなってしまった例もあり)。

この写真はワンちゃん3例分です――向かって右のものは来院が遅れたため、耳垢で汚れています。

中には一匹で8個も入っていたケースも!!

 

アメリカではFoxtailという植物で同じようなことが起こるようです。

Foxtail in a Dogs Ear: Removing a Plant Seed

耳の中に異物があったりすると、この動画のように頭を傾けながら振ったり、前肢で耳付近をかいたりすることを繰り返します。

タトゥーの入った助手さんがしっかりと保定してくれていて頼もしいですね。

Foxtail in Pet Ear - Pet Ear Care Center

耳鏡で見ると、こんな感じです。

 

時に鼻の中に入ることも!!→Crazy Case 

 

このようなトゲトゲがあったりする植物は、肢の間や裏などに刺さることもあります。

 

草むらに入るのが好きなワンちゃんで、突然このような症状が一本の肢だけに出た時は、何かトゲのようなものが刺さっている可能性があります(ちなみに上のワンちゃんは一本の肢だけでしたが、内科的治療のみで治りました)

トゲのようなものが大きければ大きいほど内科的な治療は効かないので、外科的に探索して除去するか、トゲが刺さってそうな病変部全体を切除するしかありません(こんな例も→肢間の炎症?)。

しかし…何か刺さっていても、毛が生えているため確認しにくく、「その辺がチクチクする…」と場所を教えてくれるわけでもないため、明らかな腫脹などがないとどこを切るべきか判断に困るケースも多いのです

そのようなケースでは、内科的な治療でそれなりの効果があっても完全には治らなかったりします)。

これらを予防するには、草むらに入らないのが一番なのでしょうが、元気なワンちゃんは草むらでクンクンしたりするのが好きな子が多いんですよね。

アメリカでは、こういうもの(→ Foxtaildogprotector.com)などがあるみたいですが、日本でも犬用スヌードで代用できるのかもしれません(種子などがくっつかず、耳が蒸れない素材のものを探して下さい)

肢にトゲ的なものが刺さるのを防ぐには、犬用シューズを履かせるしかないのですが、蒸れることが原因の肢間炎も多いため要注意!

チカラシバの草丈のせいか、耳の中へ迷入してしまった例は、立ち耳の中型犬が多く(今のところ小型犬の経験はなし)、肢間にトゲなどが刺さる例も中型以上のパワフルな傾向のワンちゃんが多いです。

秋から冬にかけて様々な植物の種子がくっついたりするので、これからの季節は特に気をつけて下さい!!

最近この記事を見ている人が多いようなので、超危険ポイントの写真を追加しておきます。

ここは何十メートルにわたってチカラシバが生えており、犬の散歩で通るとかなり危険です。

幸い、この写真を撮った何日か後、草刈作業にて除去されましたが、全国にはまだこのような場所があると思われますので、気をつけて下さい(この写真は数年前の写真で、千葉県においてチカラシバは10月上旬~下旬に穂を傾げるようです)!!

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