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山王アニマルクリニック

日々の診療、いろんな本や音楽などについて思い巡らしながら、潤いと温もりのバランスを取ってゆこうと思います。

チカラシバ/犬の耳や肢間に注意!

2021-09-28 17:05:18 | 診療よもやま

道端に生えているこの植物…何となく見覚えがありませんか?

大きな猫じゃらし様の穂(15cmくらい)なのですが、これがかなりのクセモノなのです。

引っこ抜くのに力がいるこの雑草は、チカラシバといいますが、この写真は一部の穂がまだ黒っぽいですね。

 

 しかし、冬が近づくにつれ乾燥し、小麦色になってくると……

 

 

ちょっと触れただけでポロポロと落ち、ワンちゃんの毛や服にくっつくのです。

体にくっつくだけならまだいいのですが、運悪く耳の中に入ってしまうと……

 

種子の外殻にあるトゲトゲが反発力を生み、ワンちゃんが耳をかけばかくほど、奥へ奥へと進んでしまうのです!!

一度だけですが、けいれん様発作で来院した例もあるくらいなので、かなりつらいと思います(来院が遅れ、亡くなってしまった例もあり)。

この写真はワンちゃん3例分です――向かって右のものは来院が遅れたため、耳垢で汚れています。

中には一匹で8個も入っていたケースも!!

 

アメリカではFoxtailという植物で同じようなことが起こるようです。

Foxtail in a Dogs Ear: Removing a Plant Seed

耳の中に異物があったりすると、この動画のように頭を傾けながら振ったり、前肢で耳付近をかいたりすることを繰り返します。

タトゥーの入った助手さんがしっかりと保定してくれていて頼もしいですね。

Foxtail in Dogs Ear - Incredible Removal!

耳鏡で見ると、こんな感じです。

 

時に鼻の中に入ることも!!→Crazy Case 

 

このようなトゲトゲがあったりする植物は、肢の間や裏などに刺さることもあります。

 

草むらに入るのが好きなワンちゃんで、突然このような症状が一本の肢だけに出た時は、何かトゲのようなものが刺さっている可能性があります(ちなみに上のワンちゃんは一本の肢だけでしたが、内科的治療のみで治りました)

トゲのようなものが大きければ大きいほど内科的な治療は効かないので、外科的に探索して除去するか、トゲが刺さってそうな病変部全体を切除するしかありません(こんな例も→肢間の炎症?)。

しかし…何か刺さっていても、毛が生えているため確認しにくく、「その辺がチクチクする…」と場所を教えてくれるわけでもないため、明らかな腫脹などがないとどこを切るべきか判断に困るケースも多いのです

そのようなケースでは、内科的な治療でそれなりの効果があっても完全には治らなかったりします)。

これらを予防するには、草むらに入らないのが一番なのでしょうが、元気なワンちゃんは草むらでクンクンしたりするのが好きな子が多いんですよね。

アメリカでは、こういうもの(→ Foxtaildogprotector.com)などがあるみたいですが、日本でも犬用スヌードで代用できるのかもしれません(種子などがくっつかず、耳が蒸れない素材のものを探して下さい)

肢にトゲ的なものが刺さるのを防ぐには、犬用シューズを履かせるしかないのですが、蒸れることが原因の肢間炎も多いため要注意!

チカラシバの草丈のせいか、耳の中へ迷入してしまった例は、立ち耳の中型犬が多く(今のところ小型犬の経験はなし)、肢間にトゲなどが刺さる例も中型以上のパワフルな傾向のワンちゃんが多いです。

秋から冬にかけて様々な植物の種子がくっついたりするので、これからの季節は特に気をつけて下さい!!

最近この記事を見ている人が多いようなので、超危険ポイントの写真を追加しておきます。

ここは何十メートルにわたってチカラシバが生えており、犬の散歩で通るとかなり危険です。

幸い、この写真を撮った何日か後、草刈作業にて除去されましたが、全国にはまだこのような場所があると思われますので、気をつけて下さい(この写真は数年前の写真で、千葉県においてチカラシバは10月上旬~下旬に穂を傾げるようです)!!

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蚊アレルギー

2021-08-23 20:18:55 | 診療よもやま

(何年か前の記事ですが、続編を書き、つなげました)

どんよりとした7月でしたが、8月になったら今年も暑いですね。

夏と言えば蚊に刺される季節なのですが、猫を外出自由にしていると、写真の子のように、鼻や耳介など毛が短い所を蚊に刺されボツボツができてしまうことがあるのです。

これは蚊に刺されたことよるアレルギーなのですが、ひどい子になると出血するほど引っかいてしまうこともあります。

 

見ての通り、けっこうかゆそうでしょう?

 

外猫でも全くかゆがらない子も多いのに、不思議ですね。

この症状…私の臨床経験の中では、黒猫の発症率がやけに高いです。

蚊は黒い色に最もひきよせられる(黒、青、赤、黄、白の順)からなんでしょうか?

そう言えば、真っ白な猫で発症したケースは、今のところないですかね(黒と白の差は3~4倍)。

(いきものを調べたりできるアプリなどを作っている会社のまとめ→蚊に好かれる人の特徴とは?

この病態は外出させず、蚊に刺されない環境にすれば治るのですが、それが難しいケースも多いのでしょう(蚊に刺されないシーズンになると治ります)。

ネット上では、首輪に装着するタイプの虫よけ製品で治ったと書いている人もいますね。

 

そんなわけで、日焼けを防ぎ、白い服を着れば少しは蚊に刺されにくくなるのかもしれません?!

(ここから続編です)

最近来院した毛色がぼぼ白のこの猫ちゃんですが……

 

なんと、この子の白い耳介にもプツプツがあります。

しかし、頭部は黒も含んだトラ模様がありますね。

まだ初発なので軽症ですが、年を追うごとに悪化する子もいます。

全身真っ白な猫ではまだ見たことがない気がするのですが、そんなに甘くはないんでしょうね。

この猫ちゃん、2日前に来たばかりなのに猫同士のケンカ傷にてまた来院…蚊アレルギーのかゆみには免疫を抑制するステロイドが効きますが、ケンカ傷の治りは悪くなってしまうのです。

外にでてしまう猫は、常にこのような外傷リスクがあるので、なるべくステロイドを使わない方がいいと思います(そもそも外に出ない子はこの病態にならないので、この矛盾を解決するためには蚊よけ対策が必要です)。

今年来たもう一匹の蚊アレルギーの子は、蚊よけ対策をせずステロイドのみを使っていたら、いわゆる風邪のようになって発熱してしまいました(問題ないことも多かったのですが、寒暖差があったりタイミングの悪いことが重なると…)。

最近、この他にも蚊アレルギーの子の来院が多いので、なるべく外に出さないか、蚊よけ対策をしましょう!!

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犯人逮捕!

2021-07-25 07:17:48 | 診療よもやま

これは、ある地域猫ちゃんの胸部レントゲン写真です。

2年ほど前に当院で撮ったものなのですが…小さなてるてる坊主のような形のものが確認できます。

 

実はこれ、空気銃の弾だったのです。

普通、空気銃というと玩具としてのモデルガンが思い浮かびますが、その場合はプラスチック製の弾ですよね(丸いBB弾とかが有名)。

でもプラスチックはレントゲン写真では認識できず、骨や石、金属ならば白く写ります。

そして、これは金属の弾(鉛製が多いよう)だったからこのようにはっきりと写っているのです。

「玩具でこんなあぶない弾を使う銃なんてあるのか?」と思っていたら、狩猟用空気銃(免許が必要!)というのがあり、それで撃たれていたのでした。

 

幸い当院に来たこの地域猫ちゃんは、弾が胸部皮下に留まっていたため、元気でした。

しかし千葉市や習志野市では2019以降、猫が撃たれて死傷するケースが多発していたのです。

 

そして2年を経て、とうとう犯人が逮捕されました!

【速報】「猫100匹近く殺傷した」 地域猫に空気銃発射、動物愛護法違反などの疑いで男再逮捕 千葉県警

 空気銃で地域猫を撃って殺したとされる事件で、県警は14日、動物愛護法違反と銃刀法違反の疑いで千葉市若葉区愛生町、アルバイト、平田雄一郎容疑...

 

 

なんと100匹近くの猫を殺傷していたとのことで、骨折してしまった子や亡くなってしまった子までいたのです。

どうしてこんなことをするのか理解できませんが、ボランティアの方々の地道な活動のおかげで追い詰められていったのでしょう。

「猫100匹近く殺傷」空気銃で粉砕骨折か 男再逮捕(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

 千葉県八千代市で狩猟用の空気銃でネコを射殺したとして逮捕・起訴された男が別のネコにも空気銃を撃って粉砕骨折させたとして再逮捕されました。 ...

Yahoo!ニュース

 

この映像をみると、押収された弾とレントゲン写真のシルエットが一致します。

「弱い立場であるネコを征服した気分になる」と供述しているようですが、その心はどんな呪いに征服されていたのでしょう。

こんな残酷なことをしたって心がより空虚になるだけだし、様々な証拠が残るから必ず捕まるのにね!

銃刀法違反は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金、動物愛護法は19年に改訂され、違反すると、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に引き上げられています。

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瞳孔膜遺残(PPM)

2021-06-02 23:10:03 | 診療よもやま

時々来院されるこのような目をした子なのですが…まあ、見た目だけで何かおかしいと思いますよね。

これは瞳孔膜遺残と言って、胎児の時に目のレンズに当たる水晶体へ栄養を与えていた血管性の膜が残ってしまった状態なのです(通常は残っていたとしても4~5週齢で吸収されてなくなります。犬でもありますが、猫の方が多いですね)。

この糸のように伸びたものが角膜の内側に張りつくと、写真のように白くなってしまうのです(水晶体にくっついても白濁するようです)。

クモの巣状ではなく、このように虹彩から広範囲に角膜へ付着しているケースもあります(目の中にある虹彩から内側角膜へ張りついて見えるかがポイント)。

この角膜が白くなった状態が、角膜の外側の異常である角膜潰瘍や角膜炎などと同じように見えるためか?角膜治療の点眼薬などを処方されているケースが時々あります。

でも瞳孔膜遺残は、角膜の内側の問題なので、そのような点眼薬は全く効果がありません。

人(persistent-pupillary-membrane→人のケースの画像)では残存した瞳孔膜を取り除く手術が行われ、犬や猫でもできるようですが、写真の猫ちゃんのように角膜内側の白濁がある場合、なかなか難しそうですね。

重症度にもよりますが、全く見えないわけではないし、片目だけのケースが多いですからね。

犬や猫の場合、本を読んだりテレビを見たりするわけでもなく、両目が見えなくても優れた嗅覚や聴覚、ヒゲなどのセンサーで驚くべき適応力を発揮します。

(スペインで保護された猫シエテちゃん――よくある子猫の呼吸器感染に付随する眼結膜炎を悪化させ両目を失明…でも、まるで目が見えるかのよう猫じゃらしで遊んでいます。

OGPイメージ

Meet The Stunning Blind Kitten Who Found The Perfect Home After Being Rescued From The Streets Of Spain!

 

Facebook Watch

 

目ヤニでまぶたとまぶたがくっつき目が閉じたままの状態を長時間放置してしまうと、失明の危機あり!こんな時は、お湯でびしょびしょに濡らしたタオルで目ヤニをふやかして、少々強引にでも目を開けてください。この病態では早期に対応すれば目薬などが効きます。)

 

瞳孔膜遺残の子を保護しても落ち込まず、効果のない点眼薬などはやめて、かわいがってあげましょう!!

コメント (2)
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犬のニキビダニ症

2021-04-10 20:06:47 | 診療よもやま

この子は、とっても元気で人懐っこいブルテリアちゃん。

病院では、注射などいろいろ嫌なことをされることも多いのに、人を信用している表情ですね!

ある日、この子の首のあたりに、強い炎症を伴う脱毛が起こってしまいました。

かゆみもあり、化膿もしていたので抗菌薬を処方したのですが、あまり効果がありません。

こういうパワフルな犬種は、あっという間にかき壊してしまうことがあるのですが、皮膚の検査をしてみると……

活発に動く犬ニキビダニがたくさんいました!

人間に寄生するニキビダニもおり、顔ダニとも呼ばれ、ほぼ100%の人にいるんだそうです。

人も犬も母親から皮膚の接触によって感染する…ということですが、なんだか不思議な存在ですね。

すべてに存在するのに病変を発症しないケースの方が多いのですから…。

局所的な免疫機能の低下により大発生するらしく、このような病変付近でニキビダニが検出されれば、駆除薬が効くことが多いです。

この子も一週間後には、だいぶ赤みがなくなって乾燥してきました!

しかし、ニキビダニ症は再発するケースもあり、この子も何回か再発しています。

 

昨日フィラリア予防のため久しぶりに来院されましたが、すっかりきれいになっています!

 

さて、この子は保護されたトイ・マンチェスター・テリアなのですが、顔周囲の毛が薄いですね。

活発で気が強い子も多いミニチュア・ピンシャーかと思っていたのですが、よく似た犬種であるトイ・マンで、とてもおだやかでいい子でした。

 

なぜ、こんないい子が捨てられてしまったのでしょう?

体は痩せており、全身的に毛が薄くフケも多い…まあ、みすぼらしい雰囲気でした。

炎症はあまりない感じなのに、毛が薄くなっているパターンは、このような犬種に多いですね。

こういう毛質の犬の皮膚病としてはひどい方だったので、注意深く皮膚の検査をしてみると…

先ほどの子よりも少ないですが、ニキビダニが検出されました。

これは治療して一ヵ月後の写真です。

少し脱毛が改善してきました!

 

これも同じ日の写真です――フケも減って、表情も明るくなってきました!

 

これは二ヵ月後の写真です。

黒い子って写真を撮るのが難しく、この写真ではわかりにくいのですが、さらに改善しています。

これも二ヵ月後の写真ですが、毛のツヤもよくなってきました

その後再発することもなく、ニキビダニも一度しか検出されなかったので…もしかしたら?この子は漠然とステロイドを使い続けたため免疫が低下し発症していたのかも?と思いました(ニキビダニは、医原的に発症してしまうケースもあります)。

ボランティアさんと協力していると、このように慢性の皮膚病などでお金ばかりかかって治らないため捨てられてしまったのでは?と思われるケースが時々あります。

皮膚病に限らず、短期的には速効性があって飼い主受けのいい薬が、長期的には本質からずれ、このような弊害(時に寿命にさえ関わる)を生んでいることが少なくないのです。

ちなみにステロイドに関しては、なるべく使わない方がいい薬ですが、注意深く使うしかないケースもあり、「ステロイドを全肯定する人も全否定する人も信用できない」というのが私の現在の見解です。

(新型コロナにおいても使い方が難しいようで、「デキサメサゾンが効く」というエビデンスがあっても、軽症の段階で安易に使うべき薬ではないのです)

こういったことは、白黒はっきりしないので、なかなか伝わりませんが(速効性の奴隷となっている人には難しい)、ケースバイケースで非合理な事態にも対応するしかないのが臨床現場なのです。

時に誤解され効率が悪いのですが、ワンちゃんやネコちゃんのことを本質的に考えてくれる人たちのために少しでも伝えていきたいと思います。

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