前記事(「若き血・今昔」)で
深紅の優勝旗をもちかえった塾高(慶應義塾高校)ナインと
同じ慶應義塾の日吉にある第一校舎(現・慶應義塾高校校舎)で学んだ
かつて学徒出陣で出征、特攻死した二人について触れた。
ちょうど、そのとき
梨木香歩『歌わないキビタキ 山庭の自然誌』(毎日新聞出版)を
読んでいた。
梨木さんは、わたしの敬愛してやまない作家さんのひとり。
勝手に四半世紀のおつきあいの友人気分でもいるw
もちろん新作小説が出れば、予約して買いに走る!
今回はエッセイなので、図書館の本を借りて読んだのだが・・・w
やっぱり買わなくちゃな、と今、思っている。
というのは、梨木さんご自身が「持病」を患われたことと
(わたしにとっての「大病」と同義、前作のあとがきで触れていらした)
ほぼ同世代(梨木さんの方が少しお姉様)の共感が尽きなかったからだ。
さすが梨木さんだなぁと、うなずきながら読み進めていたら・・・
心臓がギュッとつかまれたような驚き!
突然に「岩井忠正/岩井忠熊」ご兄弟の名が出てきたのだ。
しかも、お二人の『特攻 最後の証言 100歳・98歳の兄弟が語る』
(河出書房新社)について一章をあてられている!
岩井兄弟は、学業半ばで学徒出陣。
兄・忠正氏が特攻兵器「回天(人間魚雷)」と
「伏龍」(潜水して上陸する敵を突こうというとんでもない兵器)に
弟・忠熊氏は特攻ボート「震洋」の乗務員だった。
『特攻』は、お二人の対談で進む。
梨木さんは、各章4頁ほどの2頁ほどを、
この本からの引用にあてている。
図書館に返却したので、
梨木さんの引用部分はわからなくなってしまったのは残念、
だからやっぱり手元にほしい。
わたしが又聞きした、岩井兄弟の言葉を挙げると・・・
「特攻で死ぬ気だったなら、死ぬ気で戦争反対を叫ぶべきだった」と
晩年、おっしゃっていたそうだ。
『特攻』では、こんな風に書かれている。
ーー兄 多くの若者が戦争に妥協してしまった…
時の権力に対して口をつぐんでいた。その自責の念は75年経った今も
胸に深く刻まれている。「自分の意見を言えないことがどれだけ
恐ろしいことなのか」若い人たちは歴史から学んでほしい。
弟 そうですね。今の若い人たちは、「日本はこのままずっと戦争とは
無縁だ」と思っているんではないでしょうか (131頁)ーー
弟が兄に対し、敬語を使うところが大正生まれ!?
兄・忠正氏は、この春、亡くなられた。(享年103歳)
そして、弟の忠熊氏は、「学徒出陣80年」の特集記事で
お元気に答えられるご様子を拝読していたのだが・・・
今月初め、急に食欲をなくされ、翌日亡くなったとのこと。
(享年101歳)
戦後、京都大学に働きながら復学し、
「戦争の無意味さを後世に伝えなければならない。
そのために生涯を懸けて戦争の真実を突き止めていく」と
近代史の研究に打ち込まれた。
「これからも身体が続く限り、ご要望があれば、どこへでも出かけて
『戦争の愚かさ』を伝えていく覚悟です」と、
『特攻』の「おわりに」のまさに末尾に書かれている。
それが2020年のこと、御年98歳でいらっしゃった。
頭が下がる・・・
兄・忠正氏は慶應義塾から学徒出陣している。
前記事で挙げた「塚本太郎君」についての記憶も語っておいでだ。
「回天」の基地に、塚本君が訪ねてきたのだという。
同じ慶應義塾に学んだ二人ならばの出会いだった。
先日、慶應義塾/三田キャンパスへ「建築さんぽ」に出かけ、
塚本太郎ら慶應義塾から学徒出陣した若者について
考えていたら・・・
大好きな作家・梨木香歩さんが、岩井兄弟について書かれたていた、
この偶然。
他人様からしたら、どうってことのないささやかなことながら、
梨木氏が同じように岩井兄弟のご本を読み、
熱く語られていらしたことが嬉しくてならない。
梨木さんも、岩井兄弟の訃報を聞かれただろうか・・・
最後に、岩井ご兄弟のご冥福を祈りたい。
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おつきあいいただき、どうもありがとうございます。
書影は、それぞれの出版元HPよりお借りしました。
とても読み応えのある素晴らしいブログでした。
梨木香歩さんの本は随分前に読んだきりでした。
「西の魔女が死んだ」は私には衝撃的でした。今日ブログ拝読して、改めて本当に素晴らしい作家が沢山おられ、もっと本を読まなければと思いました。とても知的で素敵なお話に、私は感動しています。 なおとも
嬉しいコメントをどうもありがとうございます。
お褒めの言葉は元より過分ですが・・・
梨木さんに注目していただいたことが、とても嬉しくて❤
「西の魔女が死んだ」は、あのジャンルの児童文学の嚆矢、
若い人があとから読んで「よくある話」と言うので、
熱く語ったことがありますww
梨木作品は、ときどきついていけないこともあるのですが、四半世紀にわたる愛読者です。
世の中には、まだまだ作家さんも画家さんも音楽家さんも、素晴らしい方がたくさんいらして
忙しいですね~~~お互い頑張りましょう!