森の奥の荒れ野には、風だけが吹いていた。
ある日、遠い地から運ばれた種たちが蒔かれ、
芽吹き花咲き実を結んだ。
そして荒れ野は、鮮やかな色に満たされた庭になった。
ある日、花々を見かけた旅人はそれを摘み、
きれいに形を整え運んで広場に置いた。
そして広場は、より多くの人と物とが集う町になった。
ある日、商人たちが町を訪ねて庭を知り、
もっともっと花々を得ようと、庭と町とに道路を敷いた。
そして辺りは、花を荒らす恐ろしい獣たちの巣になった。
ある日、庭に住む者たちは身を守ろうと、
無数の矢を掛け罠を置き、あらゆる獣を追い出した。
そして庭は、道路も塞がれ密やかに森にこもった。
どうか誰も忘れないで。
そもそも、町に置かれた花はどこから来たか。
そもそも、庭に蒔かれた種はどこから来たか。
今日も荒れ野に花が咲く。
色を変えても。
かつて旅人が惹かれた美しさは変わらずに。