好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

EP.2 亜月菜摘編(JC第1巻)考察。

2020-02-26 | 『シティーハンター』原作考察
『BMW(ベーエムベー)の悪魔』

何で「びーえむだぶりゅー」じゃないのかと首を捻った初読時代の私。
(まだドイツ語という概念を知らなかった)

依頼人は、暴行殺人の被害に遭った女子高校生の姉。
つまり、本作の重要モチーフ「姉妹」が初めて扱われた事件である。
菜摘は、前回の岩崎めぐみと異なり、当人が死を背負っていないため、なかなか勝気。
結果、「獠がちょっかいかける→美女がはり倒す」の様式美が、
この事件でほぼ完成している事は注目に値する。
ただし、今回初登場の「もっこり」描写は、一見真顔で実は……
というギャップネタであり、まだギャグとして昇華しきれていない。

さて、この事件で示唆されるのは、獠の「仕事」に対する態度。
依頼人をはじめ他者を全力で救う彼は、実は一番肝心な人物を忘れている。
それは他ならぬ自分自身。
獠は救うべき「人間」の中に、自分を勘定に入れていない。
自らの左手を犠牲にする場面は、象徴的である。
後の『萩尾直行編』から考えれば、彼なら人混みに弾丸を通すくらいお手の物。
つまり、ひとえに自身の身体を、解決のための道具扱いしているのだ。
夜、自分をベッドで囮にし、敢えて撃たせる場面も同じ。

と、そこまで(滅私奉公ならぬ)滅私奉他の一方で、終盤の獠は
非常に残酷だ。殺人鬼をボウガンで「処罰」している場面は、
私は今も正視できない。この事件では他にも殺人予告をつきつけるなど、
いわゆる劇場型の行動をし、その時に歪な笑みを浮かべる。
まるで、どす黒い犯罪行為を楽しんでいるようにも、私には見えてしまう。

倫理的な権威に従うローフル的でなく、
自分自身の信念に従うカオティック的なダークヒーロー。
それが本編初期での、シティーハンターの立ち位置だったと定義したい。

それでは。また次回。

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