▶今日はミュンヘンまでグラッサー探訪の旅をしてきました。
❤ 2つの塔が有名なミュンヘンの聖母教会(教会・修道院㉞)
▶ミュンヘンはグラッサー彫刻の宝庫なのです。
ミュンヘンのバイエルン国立博物館で忙しく働いている博士マティアス・ヴェニガーさんのことは写真集にもこのブログにも何度も書いてきましたが、彼の案内でエラスムス・グラッサーの「モーリス・ダンスの踊り手」(『完・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』153~166頁 「刊行に寄せて」もヴェニガーさん)という躍動感あふれる作品に出会いました。そしてグラッサーのカタログで彼の宗教彫刻が、ミュンヘンの有名な聖母教会にたくさんあることがわかり、次にミュンヘンに行ったらまずここを訪ねようと思っていました。今日はようやくそのグラッサー彫刻を見られる日です。
◆2022年9月30日(金曜日)10917歩
朝、インゴルシュタット中央駅で開いていたパン屋さんは1箇所だけでしたのでここでサンドイッチを買いましたが、値段表より高い料金を請求され、三津夫が「高すぎる」と言うのでそう伝えると「値段表の方が間違っているんです」とうるさそうに言われて朝から不愉快なスタートでした。買ったパンもパサついていて、気持ちまでパサつきました。今までのドイツ旅行より今回はこうした「馬鹿にされる体験」が増えているような気がします。以前は「これに税金が入るから変わってくる」と言われたこともあり、税率を知らない私には返す言葉がなかったこともあるのですが…。友だちに確認しておこうと思いながら会うとつい忘れてしまいます。
今朝の列車は8時2分きっかりに出発、ミュンヘンにも8時41~2分に着きました。でも久しぶりのミュンヘン中央駅は方向感覚が戻ってこなくて少しうろたえました。
聖母教会(教会・修道院㉞)に着いたときはまだ9時前で拝観者も少なく、静かな中で撮影を始めました。売店で準備している男性に「三脚を使っても良いですか」と聞くと「どうぞ」と言われたので安心して撮影していたら、しばらく経ってから大柄な男性が乗った掃除機(車?)が私めがけてどんどん来るので慌てて避けたところ、三脚をバンバン叩いて「これはダメだ」とにらみつけるのです。その勢いに押されてつい謝ってしまいましたが、日本人の悪い癖だと悔しくなりました。「ダメならダメで最初に断って欲しい」と喧嘩できたら良かったのに…。
その後は三脚無しで撮影しましたがこの件で気分も落ち込み、あまりにも多い彫刻の数(カタログでは48体となっていましたが、何だかもっとありそう??)にくたびれてしまいました。三津夫のカメラも全体像を捉えているので私は途中まで写して終わりにしました。後から聞いたところでは、三津夫も普通に見ているだけだったのに、このおじさんにぶつけられそうになったというので、朝の嫌な体験も含め、アジア人いじめのように感じました。世界のコロナパンデミックによる負の側面が出ているのかもしれません。それともたまたま何か不機嫌なことがあって八つ当たりされたのでしょうか。
❤ このように何十体もの彫刻がズラッと並んでいます。 エラスムス・グラッサー 1495~1502(写真:三津夫)
❤上: 聖アンナ三代像 左下:聖ラッソ 右下:聖ゲオルクの礼拝堂(写真:緑)
上の写真で竜の上にいる聖ゲオルクはハンス・ラインベルガーの1515~1520年頃の作、聖ラッソの制作者はラインベルガーの周辺作家と言われるラーベンデンのマイスターによる1520年頃の作、空中の聖アンナ三代像はシュテファン・ロッタラーによる1515/1520年頃の作だそうです。
下の写真のクリストフォロスもラインベルガーの1525年頃の彫刻です。
❤ クリストフォロス ハンス・ラインベルガー 1525年頃 (写真:緑)
▶今日2軒目の教会は聖ペトロ教会(教会・修道院㉟)です。
聖ペトロ教会は聖母教会からマリエン広場を通りぬけて右奥に位置する教会で、ここにもグラッサーの「ミュンヘン聖ペトロ教会司祭 ウルリヒ・アレジンガーのための墓碑」があります。小さくて目立たないのですが、よく見るとレリーフでも相当深い彫りで、ペトロの迫力にも心動かされます。
❤ 「ミュンヘン聖ペトロ教会司祭 ウルリヒ・アレジンガーのための墓碑」 エラスムス・グラッサー 1482年(写真:緑)
▶再度グナーデンタール修道院へ。
ミュンヘン中央駅に戻る途中でマリエン広場の時計がちょうど12時を打ちました。時計塔で人形が踊る時間です。以前にも見たことがありますが、案外動きが地味なのです。たまたま通りがかったので見上げておっとりした動きに心和み、ミュンヘン中央駅まで戻りました。
駅では乗った列車が時間になっても動かず「下車してください」とのアナウンス。隣のホームの各駅停車に乗りましたが、こちらもなかなか発車せず。30分ほどしてようやくインゴルシュタットに向けて走り出しました。インゴルシュタット駅で朝とは違うもう一軒のパン屋さんに行ってサンドイッチを買い、部屋でトマトや果物と一緒に食べて再びグナーデンタール修道院へ。
今日はバス11番でのHarderstraße で下車。修道院の真ん前に停まってくれることが昨日の帰りにようやくわかったので、今日は迷わずに修道院の正面ドアから入りました。するとすぐにシスター・サロメさんが窓口から顔を出して、横の通りのドアから入ってくださいと言われます。そちらが教会に通じるドアだったのです。でも入ってみると内部には鉄柵があり、鍵がかかっていました。サロメさんが見えると、笑みを絶やさず、鍵を開けて招き入れてくださいました。何と小柄な可愛らしい方でしょう。昨夜書いておいた和風のメッセージカードをお渡しするとニコニコしながら読んでくださいました。
しばらくサロメさんのお話を伺い、正面の大きな聖母子像もこの修道院の宝だとわかりました。戦争中は3m先まで爆撃があったそうですが、「神のご加護で難を免れたんですよ」とお話しくださいました。壁のパステルカラーのフレスコ画はシスターたちの共同作業だそうです。戦後の苦しかった時代のお話をされるときには涙ぐんでいらっしゃいました。そして右横の壁にはラインベルガーの代表作「聖アンナ三代像」が堂々とはめ込まれていました。やっと拝観できたラインベルガーの代表作です。サロメさんも、これはラインベルガー彫刻の中で最高傑作だとおっしゃっていました。
❤ グナーデンタール修道院 Harderstraßeのバス停は真ん前でした。右角にある工事中の柵の上に聖母子像のステンドグラスが見えます。
❤ シスター・サロメさんの笑顔 貴重なお話をありがとうございました。
❤ 「ランツフートの聖母子像」 作者名不詳、後期ゴシック(写真:緑)
❤ ハンス・ラインベルガー「聖アンナ三代像」 1513年 (写真:三津夫)
今日の目的はこれで達成です。この静かな時間のおかげでミュンヘンでの嫌な体験もすっかり洗い流されました。優しいシスター・サロメさんに感謝しつつ、戦火で多くの人々が殺され、傷ついて苦しむ姿をこれ以上見たくない、一日も早く世界中から戦火が消えていきますようにと祈りながらこの修道院を後にしました。
※今まで作品写真を写したものは名前だけを括弧書きで記入していましたが、たまたまこの文章を目にした方にはわかりにくいかもしれないと考え直し、今号から(写真:三津夫)といった形で記入しておくことにしました。ご了承ください。なお、景色やスナップ写真については数が多くて大変なので撮影者名は省略させていただきます。
※このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015-2023 Midori FUKUDA