『続・発想法』-を読み返しよみかえしてみて。
現代の危機的状況を打開するために
体系だった知識そのものをかりに科学とよぶならば、「科学」と「科学する」ということはおなじではないのである。「科学する」とは、すなわち、混沌とした現実のなかから、なんらかの秩序を見出して、体系づけることを指している。
1『続・発想法』 p6~p7
Ⅰ現代の危機的状況を打開するために
今日までの民主主義には救いがたい欠陥があった。たとえば民主主義を、すなわち多数決主義と考える誤解もあった。あるいは少数意見を尊重すると称しながら、実際には少数意見を生かすとは、ほんとうはどういうことなのか、すこしもあきらかにされていなかったように思われる。
その結果、人びとは民主主義に失望し、深い挫折の淵に落ちこもうとしている。これはきわめて危険なことであって、現代の最大の危機はまさにここにやどされているといっても過言ではない。
人びとが心から喜んで参画意欲のもてる社会を「参画社会」とよんでみよう。参画社会に対立する概念は、管理社会とよんでよかろう。今日は、一方では情報化社会とか脱工業社会などとよばれながら、組織にたいする古い観念のために、実際にはそのことが管理社会への転落を意味していると思われる。なかには悲観のあまり、管理社会への転落は避けることのできない必然であると考えている人びともおびただしくいる。
しかし、KJ法を含む創造的な問題解決の方法を、身をもって実践してみたものは、管理社会化が必然的な唯一の道であるとはいえないということを、希望と勇気とをもって自覚するこにいたるのである。ここにおいて人びとは猛然と、新しい希望にみちた地平線を切りひらこうとしてたちあがることができる。このことがあまりにもロマソチックな空想であるのかどうか。その勝負は論争できまるのではなくて、実践によって決せられるのである。KJ法の問題は、このようなことにつながっている。
『続・発想法』 p16~p17
Ⅱ 探検のしかたについて
W型問題解決モデル
つぎの図が、現在私の考えているW型問題解決モデルである。簡便のため、しばしばW解決とよぶ。
Kl法にはいるまえに、前著にも述べたが、ここでふたたびこのモデルについて説明したい。
まず、体系だった知識そのものをかりに科学とよぶならば、「科学」と「科学する」ということはおなじではないのである。「科学する」とは、すなわち、混沌とした現実のなかから、なんらかの秩序を見出して、体系づけることを指している。その体系づけられたものが科学とよばれる。科学するとは、すなわち探究することである。しかしここでご注意したいのは、探究するというのはなにも学者が研究するだけではないので、人間はことごとく探究することによって、その歴史をきずき、生活を支えてきたのである。探究することはあとで述べるように、人間にとって欠かすことのできない根源的な要求の一種で、学問のみならず、企業の世界で利益を追うのも、また家庭上の問題解決に従事するのも、すべてはある意味で探究の過程といえるし、これを問題解決とよんでもよい。
目 次
I 現代の危機状況を打開するために
現代の危機解消に役だつのはなぜか KJ法の思想的、理論的背景
ソフトウェアの開発とKJ法
Ⅱ 探検のしかたについて
W型問堪解決モデル 手順-実施-検証、そして新たな問題解決へ
問題提起のしかた 探検の方法 内部探検と外部探検
「思いだし探検」とブレーンストーミング 面接の技術
会議における探検法 順番ブレーンストーミング法
Kl法のための準備と用具
Ⅲ グループ編成を経てA型図解化まで
Ⅳ B型文章化と累積的活用
Ⅴ 創造への道
Ⅵ 組織と研究への適用