政府は環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を念頭に,農業の大規模化を柱とした競争力強化を進める方針である。
こうした国内情勢を見据えて,セブン&アイ・ホールディングス,イオン,ローソンといった大手小売業は自ら手掛ける農業の生産性向上に乗り出酢動きがみられる。こうした小売各社の取り組みは日本の農業の改革を促す可能性もある。
小売業界の両雄,セブン&&アイとイオンの農業への取り組みは,両者の企業風土や文化,経営戦略の違いを反映しており,興味深いものがある。
両者のアプローチの最大の違いは参入方法にある。イオンが「休耕地を自社で耕す」という,自社丸抱え方式のハイリスク・ハイリターン型。対してセブン&&アイは,自社の主体制を維持しながら,農家のノウハウを生かし,最小限のコストで最大の効果を生み出そうとする。まさに,農業参入にも両社の企業風土・体質の違いが持ちこまれた格好である。
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セブン&&アイは2008年8月,地元の富里市農業協同組合(千葉県富里市)との共同出資でセブン&アイグループとして初の農業生産法人となる「株式会社セブンファーム富里」を千葉県富里市内に設立し,直営農業「セブンファーム富里」で,環境に配慮した「完全循環型農業」を開始した。
セブン&&アイは直接生産には関わらず,栽培は農家に任せている。農業生産法人では,企業が経営の主導権を握るのは難しいが,この方式のメリットは,地元農協の協力を得て耕作できるのが利点。既存農家の技術や情報を生かせるので,品質の安定した農作物を生産できる。
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対してイオンは,2009年7月,100%子会社のイオンアプリ創造を設立して農業に参入した。農作物を自社で作り,自らの店で売ると言う食のSPA(製造型小売業)化への取り組みである。自らが農業を営むことで生産・流通が直結し,安心・安全で新鮮な農産物を「より安く」販売できるという目論みである。
イオンは09年7月の牛久農場(茨城県)に始まり,10年10月には宇都宮(栃木県),柏(千葉県)に,11月には羽生(埼玉県)と松伏(埼玉県)に,11年9月には大分県にも農場を開く計画である。
だが,農家に栽培を任せることから,条件の良い農地ですぐに栽培を開始できるヨーカ堂と異なり,「休耕地を自ら耕さなければならない。イオンの場合は,土壌作りを始める必要があることから,困難は尽きない」。
大きなリスクを負ってのイオンの取り組みであるが,コスト構造の把握,東大の植物病院と連携して植物病理の解明など,農業の近代化により,農業の儲かる仕組みの構築を目指している。
これまで農家の勘や経験に頼っていた部分を科学的に解明することで,農業革新を図るものである。また,イオンは「生鮮・デリカのバリューチェーン改革」にも着手。これは農業の6次産業化,すなわち農家が農産物を生産するだけでなく,それを加工販売するまでの一連の事業展開により,農家がより多くの利益を得ると言う目論みでもある。
6月からはイオンアグリの直営農場と契約農家で栽培したキャベツ,白菜を使って餃子を作り,それをPB「トップバリュ焼き餃子」として,デリカコーナーで販売している。
このようにイオンが「儲かる農業」を目指しているのに対し,ヨーカ堂は「農業単体での収益,規模は追わない」との姿勢を明確にしている。農業参入の主目的は,改正食品リサイクル法で示されたリサイクル率45%の達成にある。店舗から出る食品残渣を堆肥化し,直営農場で再利用する循環型農業の推進である。
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