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鹿児島国際大学での集中講義を終えてーマーケティング論・4-鹿児島の能天気①

2011-08-31 10:55:47 | 大学教員として


 集中講義初日,一限での私の発言は学生たちの度肝を抜き,彼らの眠気を吹き飛ばしたようである。その要点は,次の通りです。

◆鹿児島の能天気
 「マーケティングの観点から言うと,鹿児島の“観光立県”はナンセンスであり時代錯誤もいいところだ。桜島は確かに鹿児島のシンボルではあるが,日本のシンボルにはなり得ない。また,指宿の砂風呂や霧島温泉郷は確かに魅力的ではあるが,だが,日本中から観光客を呼びこむ魅力には欠ける。

 九州新幹線の全線開通で浮かれているが,博多以外は,大きなメリットとはならない。県内に目を向ければオレンジ鉄道の慢性的赤字をどうするつもりだ。

 鹿児島中央駅前では,高層ビルが建設中でそこには西鉄系列の高級ホテルのソラリアが出店するとのことであるが,採算がとれるとは思えない。また,ビル裏手にある“朝市”の存在は,鹿児島のマチづくりの無策ぶりを象徴している。
 また,天文館にシネマ劇場(映画館)の設置が決まったようだが,箱物を作る前に,やるべきことがある。

 鹿児島県内には,ファミリーマートの200店舗を筆頭に400店舗のコンビニが出店している。そこへ,セブン-イレブンは2年間で200店舗の出店を打ち出している。これは何を意味するか,県内の商業者はもとより,行政はどのように捉えているのか。また,産業道路沿いの大型店舗「ビック」が撤退し,その跡へ大型のホームセンターが出店するとのことであるが,時代錯誤もいいところだ。

 ▼鹿児島の持続的発展に向けての戦略形成
 鹿児島はこれからの日本の命運を担うエリアと言っても過言ではない。その理由,根拠は次の四点にある

1)鹿児島と中心に宮崎,熊本は日本有数の食料供給基地である。
 福島原発事故の影響で,地元福島県はもとより農業が盛んな近隣の盛岡,岩手,山形,茨城,千葉県の農産物,畜産物,さらには水産物の放射能汚染が深刻化している。また,セシウム137は半減期が約30年であることから,その影響が長期におよぶことは避けられない。
 こうした状況からして,鹿児島県を核としての南九州エリアの日本の食糧基地としての役割と重要性は高まるばかりである。

2)石油備蓄基地としての役割
 鹿児島県内には,鹿児島市南部の喜入には世界最大級とも言われる735万キロリットルの備蓄能力を持つ原油中継備蓄基地とともに,いちき串木野市の国家備蓄基地(貯油能力175万キロ)や志布志国家備蓄基地(貯油能力502万8千キロ)と3つの石油備蓄基地があり,日本の石油消費量の約98日分を蓄えている。これは,鹿児島が経済活動に欠かすことのできないエネルギー基地であることを示すものである。

3)陸海空の三拍子が揃う交通網
 九州では福岡空港に次ぐ規模の鹿児島空港,鹿児島港をはさんでの志布志港,川内港と3つの国際港湾,陸路では九州新幹線と肥薩線,日豊線,指宿枕崎線のJR在来線,さらに東九州自動車道,南九州西回り自動車道と高速道路網も整備されている。現在のところ,このインフラを十分に生かし切れず,宝の持ち腐れとなっている。

4)日本近代化へ尽くした歴史とくらしやすい風土
 鹿児島(薩摩)は,明治維新による日本の近代化に大きく貢献したという歴史がある。また,日本の南端にいちするという立地特性は暮らしやすい風土を育んできた。いま,殺伐感増す時勢であるが,こんな時こそ,薩摩の歴史とよき風土がよき日本再生に向けの礎となるのである。

▼学生の反応
 上述の私の問題提起に対しての,学生の反応をレポートからお示しします。

1)A君-
 普通に聞いていればタダの野次ですが,よくよく考えて聞くと,「マーケティング」の考え方があってこその発言であり,,今までの自分の中であり得ない発想に出会うことができました。そういった意味でもこの授業をうけて実によかったと思いなす。

2)B君
 先生の農業の話にとても感動しました。私自身も農業経済に興味を持っていたので,非常に興味深かったです。鹿児島の農業も流通ももっと発展していくといいと思いました。

3)C君
 人とは違う視点でモノゴトを考える先生で,ちょっと理解,共感することのできなかったところもありましたが,正しいものは正しい,違うものは違うなど,はっきりのべられるところがすごいと思った。 


▼ブログ-バックナンバー

・カゴシマ天文館 ◆「マルヤガーデンズ」は,戦略的赤字施設?
 
http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/156e64128a1aeafd3743e5a165cac343

・集中講義を終えてーマーケティング論・8-天文館2
 
http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/e000314d88450027b57eb59b02b07a62

 

・集中講義を終えてーマーケティング論・7-タウンウォッチング天文館
 
http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/7b4c1a2fddf7e5aa7c912f63fc84fd9b

・集中講義を終えてーマーケティング論・6-マーケティング発想①
 
http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/7dbdfc99d0d4d2038169f887c2b12b90

・集中講義を終えてーマーケティング論・5-いま,なぜセブンーイレブンは200店舗出店するのか
http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/7d70e95ee08b527c0e14cb5217da94d5

 

・集中講義を終えてーマーケティング論・3
  http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/56fac1eeece645ebed191a2a448f763e
・集中講義を終えてーマーケティング論・2
 http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/0f96fc092e638a80f87ee9abad3cc1a8
・集中講義を終えてーマーケティング論・1
  http://blog.goo.ne.jp/rk_kobayashi/e/8d85e38bb8fe858f029362bbcf9eb7bf

◆関連HP
 マーケティング&マニュアルゼミー
  

 

「身の丈」を強みとする経営―
縮小の時代に勝つ「新リージョナルマーケティング
小林 隆一
日本経済新聞出版社

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1 コメント

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「観光」という切り口 (鈴木五郎)
2011-08-31 15:36:15
 自分も、集中講義、聴講したかったな・・・。

 でも、小林先生自身このブログで、しばしば鹿児島のイベント情報等取り上げてくださるように、よその人に対して、その土地を語ろうとするとき、
 やっぱり「観光」というのは、重要な切り口ですよね?

 上手く書けませんが・・・
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