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┗■ 高倉健さん - 大俳優が抱えていた闇
俳優の高倉健さんの急逝は,ほとんどの関係者すら知らなかったという。生涯205本の映画に出演した名優は,みずからの素顔をさらすことを極端に嫌い,極端な秘密主義を貫いた。そして,その死に際までもが闇に包まれていた。
早いもの昨日10日で,俳優の高倉健さん(享年83)が亡くなって3年を迎えた。西日本新聞の記事によると,出身地である福岡県中間市のお隣,北九州市の映画館「小倉昭和館」に健さんの写真が飾られ,大好きだったコーヒーが供えられた。
昭和館は毎年秋に出演作品を特集しており,今年も17日まで時代劇「四十七人の刺客」などを上映。命日には来場者にコーヒーを振る舞い「献杯」する催しも恒例となっている。
コーヒーは,館が健さんに贈っていたオリジナルブレンド。奥深い味が名優の演技と重なり,来場者は「また健さんに会いに来ます」としのんだ。
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┗■ 高倉健さんの私生活浮き彫りに
『高倉健 七つの顔を隠し続けた男』(森功著)は,その隠された私生活を関係者たちの取材で浮き彫りにしたノンフィクションである。健さんには,知られざる七つの顔があるとして,その謎解きに挑んだ書である。
◇高倉健には知られざる七つの顔がある
高倉健には知られざる七つの顔がある---。
本書では、取材のなかで感じた高倉の素顔をそう分類してみた。善光寺参りを欠かさない 信仰心の原点となった先祖との出会いや、放蕩の大学生活の末にたどり着いた俳優の道、江利チエミに注いだ愛情と別離の苦悩、山口組大物組長に対する友情、そして最後の女性となった養女の存在と死‥‥。
『 高倉健 七つの顔を隠し続けた男 』 4ページ
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「死はたたみ一畳で足る爽やかに」という句がある。
名声と富を極めた高倉健は、その骨すら家族の手元に残らなかった。数え切れない思い出を紡ぎ出してきた家は取り壊され、墓すらも更地になってしまった。
人の世の栄華とは何を指すのだろうか、生涯をまっとうするとは、いったいどういうことなのか。高倉の人生に接していると、そんな疑問が湧く。生きる伝説とまで称されながら、その生き様はわれわれと同じように、いやそれ以上に泥臭く、奥深い悩みを抱えてきた。きらびやかなスポットライトの裏で必然的に生まれる陰影に支配されてきたともいえる。一隅を照らすという言葉がある。人生の陰影に火を灯しながら、日々、与えられた務めを果たしていく。高倉健は誰もが悩み惑いながら進む生への営みに、正直に向き合ってきた。そこがこの男の、最大の魅力なのかもしれない。
『 高倉健 七つの顔を隠し続けた男 』 287ページ
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高倉健 七つの顔を隠し続けた男 |
人間の栄華とは何か? 名優を支配した闇・・・ そこに光る人生の意味!! |
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講談社刊 森功著 1600円 |