『島耕作』シリーズで知られる弘兼憲史さんと,『東京ラブストーリー』など,時代に合わせて幅広い世代の恋愛ストーリーを執筆し,「恋愛の神様」とも呼ばれる漫画家の柴門ふみさんは,ともに売れっこの夫婦である。
この漫画界の大物カップルとして知られる2人だが,柴門ふみさんは「婦人公論」2015年6月23日号で,『浮気よりも許せなかったのは家族への無関心』というタイトルで,夫であり漫画家の弘兼憲史さんとは離婚せず,家庭放棄を続けてきた夫を受け入れて,程よい距離感をもって夫婦を続けるとことを選択したと告白した。この冷めた夫婦関係は話題をよんだ。
この間の事情は,弘兼憲史・柴門ふみ夫妻に見る,「家庭放棄の夫」と「離婚しない妻」の冷めた実態 https://news.allabout.co.jp/articles/d/85273/, 「島耕作」作者の弘兼憲史氏が家庭放棄? 妻の柴門ふみ氏が暴露 http://news.livedoor.com/article/detail/10256746/ , 浮気よりも許せないこと http://ameblo.jp/chie-kiku/entry-12244984195.html などに掲載されている。
冷めた夫婦関係にある二人。柴門さんが『老いては夫を従え』(2016年12月刊),弘兼さんは『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』(2016年11月刊)と,ほぼ同時期に老いてゆく日々を踏まえてのエッセイを上梓している。私はこの二冊を読み,身につまされる思いである。
┏┓
┗■ 『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』-はじめより-
「常識」という棚にしまったすべてのものを一度おろして,ひとつひとつ吟味してみませんか。そうすれば,きっとこれからの人生に必要なものと必要でないものが見えてくるはずです。
┏┓
┗■ 適切な距離を保ち,奥さんに嫌われない
出典: 弘兼流 60歳からの手ぶら人生 159~160ページ
○奥さんに嫌われないための2つの心構え
奥さんから自立し,嫌われないために,あなたが心がけることは2つあります。 それは,「奥さんとなるべく一緒にいないこと」,「お互いの距離を保つこと」。 距離が近づき過ぎると事故が起きる確率が高まるのは,人間もクルマも同じなのです。
60歳にもなれば,子どもはすでに独立し,夫婦2人だけで暮らしている,というケースが多いと思います。
2人きりになると,今まで目に入ってこなかったお互いの存在が自然と視界に入ってくることになります。
すると,今までは気にならなかった短所やアラなどのマイナス面が急に目立ち始めたりします。
しかも,年を取ると互いに頑固になっていますから,ケンカになっても譲りません。そして,取り返しのつかない状況になってしまう。「もう2人だけなのだから,これからは一緒にいる時間を増やそう」なんて発想は,奥さんにとってはいい迷惑ですから,早いこと捨てることをおすすめします。
奥さんとの距離を保つには,奥さんのテリトリーに侵入しないことが大事です。奥さんの行動にも干渉しないこと。
例えば,奥さんが出かけると知ると,「どこへ行くんだ?」「誰と行くんだ?」「何時に帰るんだ?」などと尋問を始め,その挙句に「なるべく早く帰ってこいよ」などと命令口調で言う人もいますが,奥さんからすれば余計なお世話でしかありません。奥さんの身を案じて言うのであればまだしも,こんなことを言う人はたいてい 「ひとりだと寂しい」とか,「自分で食事やお風呂を用意するのが面倒」なんてことが理由ですから,煙たがられるわけです。
弘兼さんは,『弘兼流 60歳からの手ぶら人生』で,同窓会への参加をすすめ,その理由のひとつとして「異性とのつきあいを楽しむ」をあげている。といっても「焼けぽっくりに火がつく」といった不純異性行為のすすめではない。
┏┓
┗■ 異性とのつき合いも楽しむ
出典: 弘兼流 60歳からの手ぶら人生 90~92ページ
○60歳からは男女の友情もあり!
同窓会に行くと,多くの異性の友人にも会うことになります。自分のことを棚に上げて言うのも何ですが,みんな見事なおばあちゃんです。
よく「焼けぼっくいに火がつく」などと言いますが,60代後半同士ではそんな色っぽい雰囲気は期待できません。
(略)
僕自身も40代ぐらいまでは男女間で友情が成立するという意見には懐疑的だったのです。ところが,この歳になってからは完全に「成立する派」に鞍替えです。
ひとつには冒頭で述べたように,知り合う女性の年齢が自分の歳相応になる,ということが挙げられます。20代や30代というよりは,40代,50代以上が増えてくる。そうすると若い時のような見方を女性に対してできなくなるのです。
○駆け引きがない男女関係も楽しい
性欲,それがほとんどなくなってしまったら,女性とのつき合いは,変な煩悩にとらわれず,ただ楽しいだけで,とても楽になります。
特に僕が好きなのは同世代の女性との懐かしい話。「あの頃,あんなだったね」とか,こんなものが流行ったね」という同世代トークほど盛り上がるものはありません。
そこには男女間によくあるような駆け引きや打算といったものは無関係です。
しかし,男同士の会話ともまた違います。やはり,そこは男と女,若干のワクワク感と2人っきりになった時の緊張感もあります。
カウンターで並んで座った時,男同士だと肩がふれあったら,少し離れたりしますが,相手が同世代でも女性だったら悪い気持ちはしません。男と女って不思議なものですね。
●━●━●━●━●━●━●━●━●━●━●━●━●━●━● ●━●━●━●━●━●━●━●━●━●━●━●━●━●━●
┏┓
┗■ 柴門ふみ『老いては夫を従え』--
「最後に男が頼るのは,結局女房なんだよな」
いつも強気なウチの夫でさえ,65歳過ぎた頃からそんな言葉を口にするようになった。どうして,男は妻に頼るのか?それは孤独が怖いからである。(8ページ)
.........(中略)
男が最後に頼るのが女房というのは,我慢を許してくれる最後の人間だから,ということなのだろうか。 しかし,いずれに配偶者もどちらかが先立つ。
夫に先立たれた女は最後に,我慢を聞いてくれる(聞くふりをしてくれる)女友達と,警備会社と,お巡りさんに頼ろっと。(13ページ)
老いては夫を従え | |
恋愛のエキスパートとして女性向けエッセイも多い著者が,今度は自らを題材に「老い」を綴る。歳を重ねることを怖れず抗わず楽しむ術が満載の「人生の教科書」ともいえる前向きエッセイ全27編。 | |
小学館 ¥ 1,404 |
>>>柴門 ふみ(さいもん ふみ、1957年1月19日 - ) 漫画家,、エッセイスト。徳島県徳島市出身。
バブル期に既発漫画がトレンディドラマの原作として使用される一方で,恋愛エッセイを数多く執筆。恋愛の巨匠,恋愛の教祖等と呼ばれた。夫は同じく漫画家の弘兼憲史さん。弘兼との間に1男1女がある。
>>>弘兼憲史・柴門ふみ夫妻に見るありたい夫婦像 掲載ブログ一覧
弘兼憲史・柴門ふみ夫妻に見るありたい夫婦像-5 2017-05-01
弘兼憲史・柴門ふみ夫妻に見るありたい夫婦像-4 2017-04-28
弘兼憲史・柴門ふみ夫妻に見るありたい夫婦像-3 2017-04-27
弘兼憲史・柴門ふみ夫妻に見るありたい夫婦像-2 2017-04-26
弘兼憲史・柴門ふみ夫妻に見るありたい夫婦像-1 2017-04-25
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
弘兼流 60歳からの手ぶら人生 | |
弘兼憲史、身辺整理始めました! 漫画も人生もエンディングが大事。 60歳を過ぎたら、身につけていた余計なものは捨てて、手ぶら人生を楽しもう。 第1章 持ちものを捨てる ・60歳とは起承転結の「結」 ・実践! 「持ち物を半分にしよう運動」 第2章 友人を減らす ・年賀状、中元・歳暮はやめる ・「孤独力」を身につける 第3章 お金に振り回されない ・使いきって死ぬ ・ゲーム感覚で節約生活 第4章 家族から自立する ・「家族はひとつ」という幻想を捨てる ・定年後の男の価値はゼロ、奥さんからはそう思われている 第5章 身辺整理をしたその先 ・60歳以降の仕事探しは求められる場へ ・旅行へ、小さな冒険へ ・どんと来い逆境。カモン、ストレス! |
|
海竜社 ¥ 1,080 |