スーパーの激戦地では,価格で勝負するなら地域で一番安く,価値で勝負するなら一番価値あるものを提供できる店舗だけが勝ち残れるというのが,厳しい現実です。そこではこれまでの勝ち組も容赦なく振るいに掛けられています。その状況を全国に先駆けて見せているのが,九州の流通業界です。2011年度にはイオン九州がコスモス薬品に売り上げ首位の座を奪われ,トライアルにも抜かれて3位に転落しました。
九州はトライアル,ミスターマックス,ダイレックス,ルミエール,安売りドラッグ・コスモス薬品の本拠地でもあるだけに,価格競争が日本一激しい激戦地です。その価格競争に巻き込まれ,佐賀の近松ストアーなど,弱小スーパーが一社また一社と脱落していきました。中堅・大手といえども安泰としてはいられません。サンリブ・マルショクグループ,マルキョウ,タイヨー、トキハインダストリーなどの有力スーパーが軒並み不振に喘ぎ,西友に吸収されたサニーも九州では安さが目立たず苦戦しています。安さで,スーパーを圧倒してきたトライアルカンパニー,ミスターマックスといったデスカウントストアもこの限りではありません。
そんな中,断トツに安く,生鮮・惣菜の品ぞろえや品質がデスカウントストアの中では群を抜くルミュールが圧勝。店舗がきれいで冷凍食品がどこよりも安く充実しており,薬も化粧品もあるコスモス薬品も好調を維持しています。逆に苦戦しているのは「今やの特徴もないDS」(食品メーカー) と言われるトライアルとミスターマックスで,ダイレックスも既存店が苦戦しています。トライアルは激安PBを大幅に縮小してNB中心の品揃えに切り替えてましたが,コスモス薬品にお客を奪われ続けている状況です。
未完の流通革命 大丸松坂屋,再生の25年
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J・フロントリティリング相談役 奥田務 著
大丸社長から松坂屋との経営統合を経てJ.フロントリティリングへ。本書は改革者といわれた奥田務氏の回想録。話は,アメリカ留学で見た本場の百貨店経営と栄枯盛衰,帰国後の大丸梅田店の開業,百貨店改革と波乱万丈に富む。百貨店経営の具体的な内実,現在も残る経営課題も語られて,とても勉強になる一冊。今後の百貨店はどこへ行くのか。それを見据える上でも過去を振り返る。