集中講義を終えてーマーケティング論・10-講義録「マーケティングの観点」-1
今回の集中講義では,「天文館の持続的発展に向けのシナリオづくり」をテーマに,マーケティングの観点からの演習を主体とした授業を行いました。“マーケティングの観点”の意味するところの要点を講義録として以下に示します。
〓〓〓〓 講義録-1 〓〓〓〓
1 縮小の時代のマーケティングが果たす役割
マーケティングとは,広告・宣伝,販売促進や,巧みなテクニックを駆使しての巧妙な販売のことではありません。「Marketing」の役割は,市場(顧客)とどう関わるかにあります。新製品を成功させたいと真剣に願ったところで,売上げが保証されているわけではありません。市場は,企業の意のままにならぬ存在ですが,そうもいってはいられません。ある程度,市場がコントロールできなければ,生産や開発に向けての多額の投資の回収もおぼつかないのです。
そこで,マーケティングの前提として,市場創造があります。従来の「まず,顧客ありき」で,市場ニーズや現在の競争の状況を前提にしてマーケティングに組むというのではなく,「まず,商品ありき」で商品(製品)やサービスが適応すべき市場を創造していく工夫が必要という訳です。
ピーター・ドラッカーは,「マーケティングの目的は販売を不要にすることだ」)とも論じていいます。この言葉をかみ砕くと,“マーケティングとは生産者,流通業者といった売り手から買い手である消費者に向けての,時代対応の「売れるしくみづくりとその実行」に関する一連の企業活動”と言えます。時代対応とは,的確な時代認識,風向きを読むことにある。すなわち,顧客ニーズの変化の方向を見極め,売り手や作り手は,それに敏感に対応していくことにつきます。
2 ニーズとは
ニーズ(needs)とは,「現実の状態」と「望んでいる状態」の間のギャップです。ニーズが特定の対象への欲望に変化した状態が「欲求(wants)」であり,欲求がさらに特定の商品を買う意思を持ったときに,「需要・購買(demand)」へとつながります。
ニーズ(needs)→欲求(wants)→需要(demand)
3 3Cの視点からの分析
マーケティングは,3Cに始まり4Pに終わるとの定説があります。3Cとは,自社・自身(company),競合(competitor)と顧客(customer)の3つの視点から,お客ニーズを分析することにあります。ここでの分析のポイントは,「市場」⇒「競合」⇒「自社」の順に3Cを見ていくことです。顧客が商品(製品)を購入する場合,理由が存在します。商品(製品)はその理由を満たすための解決策(ソリューション)であることから,このような手順を踏みます。
生産財や小売業などの流通業者を経由して消費者(生産財の場合はエンドユーザー)へ販売するという流通形態をとるメーカーの場合は,流通チャネル(Channel)を含めて4Cの視点からのニーズ分析が有効です。
4 マーケティング成功の条件
マーケティング成功の前提は,手順に則る計画づくりにあります。綿密な現状分析に基づき,目標を定め,市場を細分化し,様々なマーケティング手法を戦略的に組み合わせて,実施計画と成果の評価方法を策定しなければなりません。
マーケティング成功の要件は,
①「セグメンテーション(顧客の細分化・グループ化)
②ターゲティング(顧客の重点化)と競争相手(当面のライバル)の特定化
③ポジショニング(商品の市場地位による差別化)」
④新たな需要創造に向けての新商品,新サービスの開発,
の4点にあります。
セグメンテーションでは,地域,企業規模あるいは年齢別とか性別などによって,市場を複数の層に分けます。ターゲティングでは,その中から,自社(自身)にとって有利になる,いずれかの層に狙いを定めます。ポジショニングとは,それぞれの市場層で競争相手との差別化を図ることにあります。
この考え方は,「すでに市場にはビジネスの対象となる顧客がいて,それに対して複数の競争者が当社と同様に顧客を狙っている」という前提に立つものです。そして,市場を細分化し,それらグループの中からターゲットを選び,他社と差別化を図り,4Pを組み立てます。
〓〓〓〓 3Cの考え方を天文館にあてはめて分析する 〓〓〓〓
上述の3つの考え方を天文館にあてはめての私の考え方は,学生には明確に伝えました。
その結論は,「天文館にシネマ劇場映画館新設はナンセンス」であり,天文館発展の方策は,鹿児島市の中心市街地活性化基本計画にある,中央駅・天文館・ウォーターフロントの3つの拠点の回遊性向上により市街地活性化に取り組むべきということです。
(続 く)
▼論文(PDF)-鹿児島国際大学紀要 「地域総合研究」地域総合研究所
・Area Marketing Techniques in Japan(2008年)
・鹿児島県の持続的発展に向けての戦略形成(2009年)
・経済・社会の混乱期における地域経営 (2009年)
・市場縮小,地域格差拡大に対応 エリアマーケティングの実務(2010)
・書評 『地方を殺すのはだれか』 (2009年)
・書評 「躍進する中小都市「岡谷モデル」の模索 (2008年)
・地域情報 九州地方の県民性(2008年)
・地域情報 長野県丸子町(現上田市)の盛衰(2010年)
◆関連HP マーケティング&マニュアルゼミー |