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伊集院静さん(69)-「くも膜下出血で手術,断筆の可能性も。」

2020-01-24 14:16:05 | 男ぷり

作家の伊集院静さん(69)-「くも膜下出血で手術,断筆の可能性も。」


 「大人の流儀」シリーズなどで知られる直木賞作家の伊集院静さん(69)が21日,くも膜下出血で倒れ,翌22日に受けた手術は成功し,経過は良好だが予断は許さない状況だという。
 妻の西山博子さん(元女優・篠ひろ子さん)は「週刊誌,新聞など連載を多く抱えている立場におりますが道半ばで書く事を断念せざるを得ないとしたら,こんなに悲しい事はありません。願いが叶うのであれば又,ペンを持って皆様に作品をお届け出来る事が私の心からの思いです。いままでのように穏やかな執筆生活を取り戻せる日まで精一杯頑張って参りますので,どうかそれまでは静かに見守って頂けますよう心よりお願い申し上げます。いままでのように穏やかな執筆生活を取り戻せる日まで精いっぱい頑張ってまいります」とコメントを寄せた。
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 作家になるまで麻雀,競輪,カジノなどのギャンブル,ゴルフ場や酒場と修羅場を経てきた男。近藤真彦の「ギンギラギンにきりげなく」の作詞をして100万枚以上売らせた男。そして若くして亡くなった美人女優夏目雅子を妻にしていた男。その人の名は,「大人の流儀」シリーズで知られる伊集院静。どん底を味わった男の話は面白い。そして役に立つ。ご回復を心から願う。 

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 生きていれば

 夏の終りから初秋にかけて、私にとって大切な命日が続く。
 毎年、〝海の日″ の近くは海難事故で亡くなった弟の命日で、九月に入り、風が少し冷たく感じられ、雲のカタチが変わったナ、と思うと先妻の命日を迎える。
 私はその二日を一人で過ごすことが多い。敢えてそうしているわけではないが、なぜかそうなってしまう。だからと言って、悲しみを抱いたり、追憶の時間を持つわけではない。
 ただ何年かに一度、
 生きていれば何歳になっていたのだろうか……。
 と思うことがある。
 今年は先妻が亡くなって三十三年目で、彼女が生きていれば還暦を迎えていたことになる。

  『誰かを幸せにするために』p40 伊集院静著

 

 

ひとりで生きる

 人は一人では生きていけない。
 若い人たちの中には、僕は、私は、一人で生きることにしたんだ、という人もいよう。それはそれで若い時に、一人で生きること、独りを知ることは悪いことではないし、他人の力は借りず生きようという人や、自分の性格は他人と上手にやっていけないから一人で生きることにしたという人もいるだろう。一人で生きることは、孤独というものを学ぶということでも、己を見つめてみる時間を持つということでも、良いことだろう。
 しかし世の中は若い人だけではない。いろんな人が生きている。
 そんな人の中には、一人で生きざるを得ない状況、立場の人は、私たちが想像するより多勢いる。
 家族、伴侶を失った人もいれば、置かれた立場が一人で生きざるを得ない人もいる。
 そういう人たちが、何かの折に、一人でいることに戸惑い、不安になり、どうしたら
よいのか途方に暮れることがある。
 私の周囲にも、そういう人たちがいて、その切ない気持ち、揺れ動く感情を耳にする
こともある。
「何やら淋しくて、どうしようもないんです」
「一人でいると不安でしかたありません」
 中には開き直ってしまったのか、       
「伊集院さん、所詮、人間は一人で生まれ、一人で死んで行くのよね」
 と言う人もいる。私はそう言われると、
「人は一人では生まれないし、一人で死んで行くことはないと思います」
 とはっきりと言う。
 両親が存在していたから生まれたとか、孤独死は、その死の状況を見るから、そう思
えるのだとか、屁理屈でそれを否定しているわけではない.
 極端な言い方をすると、人は生まれた時から一人ではないし、この世を去る時も一人
ではない、と私は思っている。
 人間という生きものは一人で生きるようにできていない。
〝依るべきもの〃 という言葉がある。
 この言葉に馴染みのない人には、寄り添うことと思ってもらえばいいが、〝寄り添
う″ のニュアンスの中には、互いの意志のようなものがあるが、〝依るべきもの″ とは人と人だけのことではない。
 たとえば、〝希望〃 というものがある。〝夢" というものもある。
〝希望″も〝夢″も、人が人生の中で一度ならず抱くものだ。そのかたちはさまざまだ
が、長い航海に出た船が、夜の航海で仰ぎ見る、船の目指す方角を教えてくれる星のよ
うなものだ。
 古代、船乗りたちにとって、星の灯りは希望の光であり、まさに依るべきものであっ
たろう。
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              出典: 『ひとりで生きる」p3~p6 伊集院静著

 

 

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