朝日が昇りはじめたとき、二人は神宮前でしゃがんでいた。
陽が昇るのを哲也と香織は見ながら、
手をつないだまま、香織は笑いながら左手で目を拭いていた。
哲也は、いつもどおり何も考えず、ボーットしながらすわっていた。
香織は何かを考えながら、日が昇るのをみていたと思う。
哲也はなさけないくらい、言葉に詰まってた。
香織は、下向きになり、じっと道路をみていた。
数時間、この状態が続いた。
お互いに会話などなくなった。
スナックでの状態と一緒だと思った。
ただ、違う事は、香織は哲也の手を握っていたことだ。
軽く握られていた手を哲也は強く握りしめた。
香織は顔を上げて哲也を見てる。
「これでいいだろ」
哲也は声をかけると、香織は深い深呼吸を何度かして、寄り添ってきた。
「私達ってなんなんだろうね、知り逢って、これからどうなるんだろう」
香織のこの言葉で、哲也は、いたためられないものを感じた。
お互い立ち上がり、ここにいたら前へ進めないよと哲也は言った。
彼女に見送られながら電車に乗った。
哲也は、原宿駅から電車に乗って家に向かった。
電車の中で哲也は涙が、抑えきれなかった。
「僕は香織は、いったい何なんだ」
哲也は、そう思いながら、
都会の空を見上げていると、夢や希望ばかりが、一人よがり。
香織に夢を与えてくれるが、はかない夢になるかもしれない。
もし、神様が本当にいるのなら、香織を幸せにして欲しい。
相手が僕でなくてもいい、別の誰でもいいから、
香織に幸せを感じさせて欲しい。
夢など希望などなくてもいいから、ただ平凡でもいい、
香織の心を満たして欲しい。
夢に惑わされて一人にしないで欲しい。
そう願わずに入られなかった。
家に戻った哲也は、そのまま、眠る事ができなかった。
その日の夜遅くに、香織からの電話があった。
「仕事みつかったよ」
その後、哲也も専門学校の後期に入り、何かと忙しくなり、
哲也と香織は、しばらく逢わなくなった。
そして、電話の鳴る音もなくなった。
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