個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会 第9回検討会資料
厚生労働省労働基準局が実施する有識者会議「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」の第9回検討会が、先週の月曜日(2023年2月13日に開催。
議案は「(1)フリーディスカッション(論点1及び論点3関係)、(2)その他」となっており、その資料が厚生労働省のサイトで公開されている。
まず、読むべき資料は資料1「第8回検討会における主な意見」。そして個人的に関心をもった資料は資料4「危険有害作業以外の個人事業者等対策(過重労働、 メンタルヘルス、健康管理等)に関する論点整理」。
資料1「第8回検討会における主な意見」
1 「検討会での議論を踏まえた対策の検討方針(案)」関係
<検討の方向性について>
・建設業における個人事業者の死亡災害の発生状況の分析結果を踏まえれば、省令改正をするのは過剰であり、十分に効果を挙げている通達やガイドラインの積極的な活用が必要。
・個別論点で意見が対立するところもあると思われるため、個人事業者等の災害の状況を踏まえ、省令改正以外の方法も含めて議論を行うべき。
・安全衛生分野の危害防止基準は、想定されるリスクを定型化して規制してきた歴史があり、すべて明確な裏付けが必要となると一歩も進まなくなってしまう。産業が急速に変化している中、諸外国の状況や日本の今後を考えた場合、今までの指標で見て現場で問題が起きているものだけに対応するという発想でよいのか疑問。災害原因も分析の仕方による面はある。安全衛生は産業の後追いではなく、戦略的展開をすべきではないか。
・これまでは「再発防止」に力点をおいて規制を行ってきたが、最高裁判決を契機として、「作業場所」や「有害物」、「設備」、「作業方法」といった切り口で、新しい業態が出てきたとしても対応出来るような「普遍的」な規制づくりを進めていくことが重要。
・最高裁判決の直接の射程は省令改正で手当したが、今回の検討は、この判決を踏まえつつ、その延長線上にある問題について今後どうあるべきかを議論しているものと認識。リスクの発生や管理可能性に着目し、関係者に相応の役割を担ってもらう方向で検討するのが適切。注文者の役割についても「影響を及ぼすと考えられる場合」ではなく、表現を工夫すべき。
<業種・職種別の特性を踏まえた検討について>
・これまで、広範囲な議論がなされたため、例えばWGを使って個別具体的な専門的な検討の場を設けることも一つの方法ではないか。
・色々な業種のヒアリングを行ったが、建設業とは異なる実態であるため、建設業で積み上げてきた取り組みについて深掘りするWGのようなものが必要。
・個人事業者には色々な実態があるが、「作業場所」に着目し、誰がリスクを管理可能かという観点から整理すれば大枠の議論は整理できるのではないか。
・具体的にそれぞれの業態でどこまでの措置を求めるのかは、具体化の段階で、各業界で議論すればよいと考えられる。
資料4「危険有害作業以外の個人事業者等対策(過重労働、 メンタルヘルス、健康管理等)に関する論点整理」
論点(案)
(1)過重労働等の健康障害防止のための措置及びその実行性を確保するための仕組みのあり方
<長時間の就業による健康障害の防止>
就業時間の把握
・個人事業者等は、自らの就業時間を把握・管理していないケースが多いとみられることから、自分自身で就業時間を把握・管理することを促してはどうか。その際、就業時間を容易に管理できるツールの提供などの支援が必要ではないか。
・また、個人事業者等に仕事を発注する者又は当該仕事を管理する者(プラットフォーマーも含む。以下「発注者等」という。)から依頼される業務の性質上、就業時間が特定される場合も考えられるが、そのような場合に発注者等に対してどのようなことを求めることが考えられるか。
長時間の就業の防止
・個人事業者等に対し、就業時間が長時間になりすぎないようにすることを促してはどうか。また、就業時間が長時間になってしまった場合に、疲労の蓄積があると感じる場合は、医師による面接指導を受けることを促してはどうか。
・発注者等から依頼される業務の性質上、就業時間が特定される場合も考えられるが、そのような場合に個人事業者等の就業時間が長時間になりすぎないように、発注者等に対してどのようなことを求めることが考えられるか。また、就業時間が長時間になってしまった個人事業主等の健康を守るために発注者等に対してどのようなことを求めることが考えられるか。
発注時や発注内容変更時における配慮
・現行法(*)を踏まえ、発注者等に対し、仕事の発注(発注内容変更時を含む)において、どのようなことを求めることが考えられるか。
*労働安全衛生法第3条第3項は「建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない。」と規定して請負契約の発注者に安全衛生の確保のための必要な配慮を求めている。
<メンタルヘルス不調の防止>
・個人事業者等は、自らのストレスの状況を把握していないケースが多いことから、個人事業者等に対し、定期的にストレスチェックを受けることを促してはどうか。その際、現在労働者向けに提供されている調査票を個人事業者等向けに改良するなど、個人事業者等が活用できるツールの提供などの支援が必要ではないか。
・個人事業者等に対し、高ストレスと判定された場合は、医師による面接指導や看護職による健康相談を受けることを促してはどうか。
・個人事業者等に過度なストレス等が生じないようにするため、発注者等に対しどのようなことを求めることが考えられるか。
<健康管理>
・個人事業者等は、健康診断の受診率が低く、また脳・心臓疾患で労災認定された者の約半数が健康診断を受けていないことから、個人事業者等に対し、保険者が実施する特定健康診査等を活用し、1年に1回、一般健康診断と同様の健康診断を受けることを促してはどうか。
・発注者等に対し、個人事業者等に対する健康診断に関する情報提供や受診機会提供について配慮を求めることとしてはどうか。
<その他の健康障害の防止>
腰痛等の筋骨格系疾患等の防止
・個人事業者等に対し、長時間の座り作業や運転業務による腰痛を防止するため、作業姿勢、適切な椅子等の調整、休憩など、必要な対応の実施を促してはどうか。
・パソコン等を使用しての作業(情報機器作業)を行う個人事業者等に対し、作業による眼科疾患や筋骨格系疾患を防止するため、作業場所の明るさやディスプレイ・入力機器の選択・調整、作業台や作業姿勢の調整など、必要な対応の実施を促してはどうか。
・情報機器作業に従事する個人事業者等に対し、定期的に情報機器作業に係る健康診断を受けることを促してはどうか。
就業場所の管理
・発注者等から依頼される業務の性質により就業場所が特定される場合も考えられるが、そのような場合に発注者等に対して就業場所の適切な環境確保についてどのようなことを求めることが考えられるか。
*例えば労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則では、室内の温度管理、気積の確保、照度の確保、便所の設置などを事業者に求めている。
・個人事業者等に対し、自宅も含め自らが就業する場所について、適切な環境を確保するよう促してはどうか。
(2)個人事業者等や小規模事業者に対する支援のあり方
ヘルスリテラシーの向上
・個人事業者等の自らの健康管理に対する意識を向上させるため、行政、業種・職種別の団体等が協力し、個人事業者等に対する周知・啓発を進めてはどうか。
行政等による支援
・産業保健総合支援センターで行う健康管理に関する研修や、こころの耳などの情報提供サイトの対象に、労災保険に特別加入している個人事業者等も加え、必要な研修や情報発信を行うこととしてはどうか。
地域産業保健センターによる支援の対象に、労災保険に特別加入している個人事業者等も加えてはどうか。
業種・職種別団体による支援
・個人事業者等に対する健康診断やストレスチェック等について、業種・職種別の団体が支援を行うこととしてはどうか。
・個人事業者等に対する健康管理に関する研修や情報提供について、業種・職種別の団体が支援を行うこととしてはどうか。
・業種・職種別の団体が個人事業者等に対して行う活動について、何らかの支援が必要ではないか。
個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会 第9回資料(厚生労働省サイト)
厚生労働省労働基準局が実施する有識者会議「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」の第9回検討会が、先週の月曜日(2023年2月13日に開催。
議案は「(1)フリーディスカッション(論点1及び論点3関係)、(2)その他」となっており、その資料が厚生労働省のサイトで公開されている。
まず、読むべき資料は資料1「第8回検討会における主な意見」。そして個人的に関心をもった資料は資料4「危険有害作業以外の個人事業者等対策(過重労働、 メンタルヘルス、健康管理等)に関する論点整理」。
資料1「第8回検討会における主な意見」
1 「検討会での議論を踏まえた対策の検討方針(案)」関係
<検討の方向性について>
・建設業における個人事業者の死亡災害の発生状況の分析結果を踏まえれば、省令改正をするのは過剰であり、十分に効果を挙げている通達やガイドラインの積極的な活用が必要。
・個別論点で意見が対立するところもあると思われるため、個人事業者等の災害の状況を踏まえ、省令改正以外の方法も含めて議論を行うべき。
・安全衛生分野の危害防止基準は、想定されるリスクを定型化して規制してきた歴史があり、すべて明確な裏付けが必要となると一歩も進まなくなってしまう。産業が急速に変化している中、諸外国の状況や日本の今後を考えた場合、今までの指標で見て現場で問題が起きているものだけに対応するという発想でよいのか疑問。災害原因も分析の仕方による面はある。安全衛生は産業の後追いではなく、戦略的展開をすべきではないか。
・これまでは「再発防止」に力点をおいて規制を行ってきたが、最高裁判決を契機として、「作業場所」や「有害物」、「設備」、「作業方法」といった切り口で、新しい業態が出てきたとしても対応出来るような「普遍的」な規制づくりを進めていくことが重要。
・最高裁判決の直接の射程は省令改正で手当したが、今回の検討は、この判決を踏まえつつ、その延長線上にある問題について今後どうあるべきかを議論しているものと認識。リスクの発生や管理可能性に着目し、関係者に相応の役割を担ってもらう方向で検討するのが適切。注文者の役割についても「影響を及ぼすと考えられる場合」ではなく、表現を工夫すべき。
<業種・職種別の特性を踏まえた検討について>
・これまで、広範囲な議論がなされたため、例えばWGを使って個別具体的な専門的な検討の場を設けることも一つの方法ではないか。
・色々な業種のヒアリングを行ったが、建設業とは異なる実態であるため、建設業で積み上げてきた取り組みについて深掘りするWGのようなものが必要。
・個人事業者には色々な実態があるが、「作業場所」に着目し、誰がリスクを管理可能かという観点から整理すれば大枠の議論は整理できるのではないか。
・具体的にそれぞれの業態でどこまでの措置を求めるのかは、具体化の段階で、各業界で議論すればよいと考えられる。
資料4「危険有害作業以外の個人事業者等対策(過重労働、 メンタルヘルス、健康管理等)に関する論点整理」
論点(案)
(1)過重労働等の健康障害防止のための措置及びその実行性を確保するための仕組みのあり方
<長時間の就業による健康障害の防止>
就業時間の把握
・個人事業者等は、自らの就業時間を把握・管理していないケースが多いとみられることから、自分自身で就業時間を把握・管理することを促してはどうか。その際、就業時間を容易に管理できるツールの提供などの支援が必要ではないか。
・また、個人事業者等に仕事を発注する者又は当該仕事を管理する者(プラットフォーマーも含む。以下「発注者等」という。)から依頼される業務の性質上、就業時間が特定される場合も考えられるが、そのような場合に発注者等に対してどのようなことを求めることが考えられるか。
長時間の就業の防止
・個人事業者等に対し、就業時間が長時間になりすぎないようにすることを促してはどうか。また、就業時間が長時間になってしまった場合に、疲労の蓄積があると感じる場合は、医師による面接指導を受けることを促してはどうか。
・発注者等から依頼される業務の性質上、就業時間が特定される場合も考えられるが、そのような場合に個人事業者等の就業時間が長時間になりすぎないように、発注者等に対してどのようなことを求めることが考えられるか。また、就業時間が長時間になってしまった個人事業主等の健康を守るために発注者等に対してどのようなことを求めることが考えられるか。
発注時や発注内容変更時における配慮
・現行法(*)を踏まえ、発注者等に対し、仕事の発注(発注内容変更時を含む)において、どのようなことを求めることが考えられるか。
*労働安全衛生法第3条第3項は「建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない。」と規定して請負契約の発注者に安全衛生の確保のための必要な配慮を求めている。
<メンタルヘルス不調の防止>
・個人事業者等は、自らのストレスの状況を把握していないケースが多いことから、個人事業者等に対し、定期的にストレスチェックを受けることを促してはどうか。その際、現在労働者向けに提供されている調査票を個人事業者等向けに改良するなど、個人事業者等が活用できるツールの提供などの支援が必要ではないか。
・個人事業者等に対し、高ストレスと判定された場合は、医師による面接指導や看護職による健康相談を受けることを促してはどうか。
・個人事業者等に過度なストレス等が生じないようにするため、発注者等に対しどのようなことを求めることが考えられるか。
<健康管理>
・個人事業者等は、健康診断の受診率が低く、また脳・心臓疾患で労災認定された者の約半数が健康診断を受けていないことから、個人事業者等に対し、保険者が実施する特定健康診査等を活用し、1年に1回、一般健康診断と同様の健康診断を受けることを促してはどうか。
・発注者等に対し、個人事業者等に対する健康診断に関する情報提供や受診機会提供について配慮を求めることとしてはどうか。
<その他の健康障害の防止>
腰痛等の筋骨格系疾患等の防止
・個人事業者等に対し、長時間の座り作業や運転業務による腰痛を防止するため、作業姿勢、適切な椅子等の調整、休憩など、必要な対応の実施を促してはどうか。
・パソコン等を使用しての作業(情報機器作業)を行う個人事業者等に対し、作業による眼科疾患や筋骨格系疾患を防止するため、作業場所の明るさやディスプレイ・入力機器の選択・調整、作業台や作業姿勢の調整など、必要な対応の実施を促してはどうか。
・情報機器作業に従事する個人事業者等に対し、定期的に情報機器作業に係る健康診断を受けることを促してはどうか。
就業場所の管理
・発注者等から依頼される業務の性質により就業場所が特定される場合も考えられるが、そのような場合に発注者等に対して就業場所の適切な環境確保についてどのようなことを求めることが考えられるか。
*例えば労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則では、室内の温度管理、気積の確保、照度の確保、便所の設置などを事業者に求めている。
・個人事業者等に対し、自宅も含め自らが就業する場所について、適切な環境を確保するよう促してはどうか。
(2)個人事業者等や小規模事業者に対する支援のあり方
ヘルスリテラシーの向上
・個人事業者等の自らの健康管理に対する意識を向上させるため、行政、業種・職種別の団体等が協力し、個人事業者等に対する周知・啓発を進めてはどうか。
行政等による支援
・産業保健総合支援センターで行う健康管理に関する研修や、こころの耳などの情報提供サイトの対象に、労災保険に特別加入している個人事業者等も加え、必要な研修や情報発信を行うこととしてはどうか。
地域産業保健センターによる支援の対象に、労災保険に特別加入している個人事業者等も加えてはどうか。
業種・職種別団体による支援
・個人事業者等に対する健康診断やストレスチェック等について、業種・職種別の団体が支援を行うこととしてはどうか。
・個人事業者等に対する健康管理に関する研修や情報提供について、業種・職種別の団体が支援を行うこととしてはどうか。
・業種・職種別の団体が個人事業者等に対して行う活動について、何らかの支援が必要ではないか。
個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会 第9回資料(厚生労働省サイト)