S&R shudo's life

ロック、旅、小説、なんでもありだ!
人生はバクチだぜ!!!!

真冬の狂想曲22-3

2007-06-01 17:31:12 | 真冬の狂想曲
 俺がテーブルについたときにはもう、松は本題に入っていた。ノブの後ろからゆっくりだが威圧的な声が聞こえる。
「坂本さん、どうしてくれるん?どう納得させて貰えるんやろうか?こっちは引っ掛かった銭以外にも、あんたら探すのに経費もかなり掛かってるんだけど。酔うた様な話なら、あんたここから帰られんよ」
 坂本も、裏の世界の住人らしく動じた素振りは見せずに、少し間を置いて口を開いた。
「松崎さん、分かっています。こちらもここまで出向いたんですから、それなりの答えは用意してきています。出来ればそれで納得して欲しいのですが」
「何をどう納得させて貰えるんやろうか?坂本さん」
 松は相手があまりビビッてないのに少しイラついてるようだ。声が少し大きくなっていた。
「もちろんお金は全額お返しします。とりあえず今日ここに5000万持って来てますんで納めてください。残りはすぐにでも用意しますんで」
 背中越しにも松がイラついてるのが簡単に感じ取れるようになってきた。俺とノブはそれを感じながらもどうする事も出来ないので、ただ聞き耳を立ててコーヒーラウンジの入口を見ていた。
「坂本さんよ、金は返して貰うんは当然やけど、今日5つで残りはいつ持ってきて貰えるんやろうか?それに引っ掛けられた銭以外の気持ちはどうするの?仮にあんたがどこに頼んで仲に入って貰っても、筋道はこっちにあるんやけ行く道は行かして貰うよ。恥かくんはそっちやけ」
「分かってます。残りのお金のほうは3日以内に何とかします。後はどのようにしたらよろしいですかね?松崎さんのご希望になるべく沿うようにしたいとは思っていますが…」
 坂本の腹は決まっているようだ。その声には、出来る事は出来るが、出来ない事は出来ないんだと言う強い意志が感じ取れた。ここであまり攻めると逃げ道を塞いでしまうかも知れない。追い込むときには必ず一つは逃げ道を用意してやる必要がある。そうしないと相手が破れて話がどう転ぶか分からなくなるからだ。居直られでもしたら面倒だし、死なれても面倒くさい。松もその辺は良く判ってるはずだ。俺は実際イケイケのチンピラだったが、松のヤツは金に物を言わせてヤクザでも上の方の連中と付き合いが深かった。
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真冬の狂想曲22-2

2007-04-26 10:08:27 | 真冬の狂想曲
「ノブ、あのおっさんがたぶん坂本やと思うんやけど、変わった様子ないか?まわりに仲間らしいのおらんか?」
「何もおかしい動きないですよ。一人みたいです」
 どうやら、とりあえずは大丈夫そうだ。俺はノブにあの男の一つ前テーブルに座るように言った。俺はもう少しここで周りの状況見てからノブのいるテーブルへ行く事にした。念には念を入れて、入れすぎる事は無い。今日がうまい事行けば、俺は何も考えずに、全てを忘れて、家に帰る事が出来る。いや、そうなって貰わなければ困る。もうすでに平穏な日常を忘れかけていた。

 4時を少し過ぎた頃、松が「リーガロイヤルホテル」に現れた。松は俺をチラッと見てコーヒーラウンジに入っていった。松はノブの後ろのテーブルの男に坂本である事を確認して、そのテーブルについた。俺はそれから3分待ってコーヒーラウンジに入った。そしてノブのいるテーブルについた。ノブは松と背中合わせ、俺は坂本と向かい合わせになっている。俺はさりげなく店内を見回した。どうやら本当に坂本は一人でやって来たみたいだ。
「おかしなヤツが入ってきたら、すぐ分かるように入口のほう見よけよ」
俺は坂本に聞こえないように小声でノブに言った。
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真冬の狂想曲22-1

2007-03-09 10:16:39 | 真冬の狂想曲
 ノブが1211号室のドアをノックしたのは2時を少しまわった頃だった。俺の用意はもう出来ていた。俺はノブと一緒に部屋を出た。「小倉ステーションホテル」から「リーガロイヤルホテル」までは駅の連絡通路でつながっている。歩いても10分もかからない。俺達は「ラフォーレ小倉」で時間を潰し3時になると「リーガロイヤルホテル」に行った。
 ロビーを見渡し、待ち合わせのコーヒーラウンジをチェックして、またロビーに戻りホテル入口が確認出来る場所にあるソファーに座った。ここなら誰が入って来ても見逃すことは無い。あと30分で約束の4時になる。
 何人かの人がホテルに入ってきたが、みんなまっすぐフロントに向かった。俺はコートの袖を少し捲くりGショックを見た。後10分程で4時になる。ちょうど俺が顔を上げるた時、フロントに向かわず、コーヒーラウンジに向かう男が一人現れた。50代前半といったその男は、高そうなスーツでビシッと決めていた。頭は少し薄いが恰幅の良いなかなかいい男だ。筋者っぽくは見えないがたぶんこの男が坂本だろう。俺はノブにその男から目を離さないように指示して、視線をホテル入口に戻した。
 それから何人かがホテルに入ってきたが、あの男の仲間らしい奴等はいなかった。俺はノブにあの男の様子を聞いた。
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真冬の狂想曲21-5

2007-02-15 01:41:36 | 真冬の狂想曲
「どうした?誰やったん?」
 松は事の成り行きを話し出した。俺は平井を嬲る手を止めてその話を聞いた。
「やっちゃん、向こうはもう泣きが入っちょんわ。もうこの辺で勘弁して欲しいってよ。今電話してきた坂本ってヤツが頭みたいなんやけど、そいつらの商売を譲るけ、それで勘弁してくれってよ。どうもこっちの裏もバッチリ調べとるみたいやのー。完全に泣きが入っちょんけ。そらそうやろ、向こうがヤクザに泣きついてもこっちの方が筋が通っとるけ、向こうは恥かくだけやけのー。それに九州のヤクザは確実に殺すからな~」
「ほんで、向こうの手打ちの条件は何なん?」
 松はニヤッと笑い、テーブルの上に出しておいた煙草を手に取り、それに火を点けた。
「条件も糞もないやろ。ようは坂本ってヤツの保身だけやろ。条件つけるのはこっちやけ。まー明日のお楽しみよ」
 松は安堵感と優越感で顔が緩んでいる。平井は涙と血にまみれて気絶している。俺は未だにイライラしていた。
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真冬の狂想曲21-4

2007-02-08 17:59:55 | 真冬の狂想曲
 平井を散々いたぶって2時間ほど過ぎたとき、テーブルの上で松の携帯電話が振動しだした。松は携帯電話のディスプレイに映った電話番号を訝しそうに見て首を傾げた。知らない番号のようだ。その電話を取るかどうか悩んでいるみたいだったが、意を決したように通話ボタンを押した。
「…松崎ですけど、どちらさん?」
 そう言ったあと、しばらく相手の話を黙って聞いている。
「それはいいけど、電話で話して終わりもなんやけ、ちょっとあんた坂本さんやったけ?1回こっちに出て来んね。こういう話はやっぱ顔つきあわせて話しせんとやろ」
 また黙って相手の話を聞いている。
「おう、分かった。そんじゃー明日リーガロイヤルで4時やな」
 10分近くの通話を終えて松は電話をテーブルに置いた。事態は急展開をみせているようだ。
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