S&R shudo's life

ロック、旅、小説、なんでもありだ!
人生はバクチだぜ!!!!

真冬の狂想曲21-3

2007-01-31 17:29:48 | 真冬の狂想曲
 金を握って喜ぶザキをエレベーターに乗せて、俺は1211号室に戻った。部屋の中に入ると、平井が松と向かい合わせに椅子に座っていた。俺はゆっくりと近づき、思いっきり平井を蹴り倒した。
「お前、この状況でよう椅子に座ってゆっくりしとききるのー。正座じゃ正座!椅子に座って落ち着くんは100年早いわ!」
 もんどりうって倒れた平井を踏みつけて、俺は松に振り返った。
「どうするよ、これから」
 松は深く溜息をついた。そしてゆっくりと口を開いた。
「いずれにせよ、これでこっちが動きよるんが向こうにも完璧に分かったやろうけ、何かしらアクションがあるやろ。しばらく状況見らなしょうがないやろ」
 今回ばかりは俺が平井をいたぶっても松は何も言わなかった。そんな松に平井はなおも懇願の目を向けていた。それがまた俺を苛立たせた。全ての用事をほたってここにいるのも今日で終わりのはずだったのに、それもこれもコイツ等詐欺師達のせいだ。そう思うと無性に腹が立った。
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真冬の狂想曲21-2

2007-01-29 15:05:22 | 真冬の狂想曲
 俺は松から視線を外し平井に視線を移した。平井は俺と目が合うと慌てて下を向いた。すかさず俺の右足が平井の脇腹に食い込む。平井はもんどりうって床に転がった。それでも執拗に俺の足は平井を嬲り続けた。今回は松も何も言わなかった。俺は平井の髪の毛を掴み顔を上に向けた。苦痛に顔が変形していた。
「平井よー、これはどうなっとるんやろうかの?俺達にはもうお前しかおらんのやけ、いろいろ役に立ってもらわんと、生かしとく意味もなくなるんやけどのー。まだ俺達に話し足りん事があるんやねーんか?おう?よく思い出してみぃ」
 平井は声にならない声を絞り出しながら首を何度も横に振っている。
「松よー、もういいやろ、コイツ殺してどっか捨てようや。イライラするしよー」
 平井の歪んだ顔から一気に血の気が引き、松の膝にしがみついて自分の生命の保障を懇願した。
「とりあえず、どうしようも出来んけ、とりあえず何か考えようや。やっちゃん、そのお兄ちゃん、もう帰ってもらっていいわ。今日は動こうにも動けんやろうけ」
 俺は口に出さずに返事をして、ザキをエレベーターの所まで送った。俺はコートのポケットから平井から取り上げた金を出し、ザキに5万円手渡した。
「悪いの、ザキ。これ手間賃。もしまた人手が要るときは連絡するわ」
「こんなに貰っていいんすか!こんなに要らないですよ。たいした事もしてないのに」
「いいよいいよ、どうせ平井の金なんやけ。そのかわり、また何かあったら頼むぜ」
「はい、分かりました。ありがとうございます、兄さん。それじゃー」
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真冬の狂想曲21-1

2007-01-25 11:44:46 | 真冬の狂想曲
 ステーションホテルの1211号室に帰り着いて2時間程経った頃、松のもう一台の携帯電話が震えだした。松はその電話に出て話しながら部屋を出ていった。
5分後、松は怒りに顔を赤くして部屋に戻ってきた。
「どうしたん?難しい顔して」
「中村のヤツに逃げられた…。どうもあの会社の裏口から逃がしてもらったらしい。…あんまり遅いけ、松木社長が会社に上がっていったら、中村のヤツはおらんかったらしい。向こうの会社のヤツに聞いたら、誰かが2人来て裏から連れて帰ったらしいわ」
 俺は松に食ってかかった。を
「だけ俺が一人にして大丈夫なんかっち言ったやろうが!松お前ツメが甘いんよ!」
「なってしまったもんはしょうがねーやねーか!それよりこれからどうするかの絵を描かんと…」
 こころなしか松が弱気に見える。俺はそんな松を見てそれ以上責めるのを止めた。松の言うとおりだ。これからの事を考えないといけない。とりあえずもう一度、平井を締め上げて情報を整理する必要がありそうだ。
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真冬の狂想曲20-6

2006-12-08 21:54:18 | 真冬の狂想曲
 バスセンターを通り過ぎるとその場所はすぐに分かった。俺は松木社長のクラウンの後ろにベンツを停めて車外に出た。
「平井、一歩も動くなよ」
 俺は平井を恫喝し、前に停まっているクラウンに歩み寄った。俺がクラウンのドアに近づくより早く松はドアを開けてクラウンから降りてきた。それに続きザキも反対側のドアから降りてきた。車内を覗くと松木社長と松木社長が連れてきていた若い者にか乗っていない。
「中村はどうしたん?」
 俺は怪訝な顔を松に向けた。せっかく捕まえた獲物をもう逃がしたんじゃないかと。
「なんかそこの会社で急いで整理せないけん仕事があるらしいけ、それに行かせちょん」
「一人でか?」
「大丈夫っちゃ、やっちゃん。こんな状況までなったら流石に逃げきらんっちゃ。それにその会社を整理せな俺達に金返せないっち言うけ仕方ないやろ」
「ほんで一人で行かせたん?ちょっと甘いんじゃねーの。俺なら絶対一人で行かせんけどのー」
「大丈夫っちゃ、ここで松木社長達も張っちょくんやけ。中村も俺がどんなもんか解っちょろうけ。まぁ、とりあえずホテルに帰ろうや。大丈夫っちゃ」
 松は自分にも言い聞かせるようにそう言った。俺は納得出来なかったが、所詮人事なので松に従った。俺が相手の立場なら、どんな手を使っても絶対この状況から逃げ出すはずだ。やっぱり金持ちは幸せなんだなと思いながらベンツに乗り込んだ。
「平井、お前後ろに行かんか!」
 俺はまた苛立っていた。普段からいつも何かに苛立っていた。普通に仕事をして、ロックバンドをやっていても、ガキの頃全てのものに反抗していた頃や、人の道を踏み外していた頃と変わらない。苛立ちは一つも消えない。
 俺はベンツに松とザキを乗せて乱暴に発進させた。
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真冬の狂想曲20-5

2006-12-06 00:51:47 | 真冬の狂想曲
 コーラを一口飲んだところで「シド・ヴィシャス」が歌いだした。俺はその大音量に気まずさを感じ、急いで通話ボタンを押した。
「やっちゃん、バスセンターの先にバスいっぱい停めちょん所があるけ、そこまで来てくれん?」
「今すぐかよ?」
「そう、今すぐ」
 まだハンバーグステーキが俺達の腹に入ってない。しかしここでそんな事を言っても仕方の無い事は解っていた。
「分かった、すぐ行くわ。場所が分からんかったら電話するわ」
「おう、そうして」
 俺は店員を呼んでハンバーグステーキをもう作り出したか聞いた。店員は軽く会釈して厨房に聞きに行った。
「お客様、今作っているそうです」
「悪いけど、急用が出来てもう行かないけんけ、もう要らんわ。金はその分も払うけ伝票持ってきて」
「少々お待ちください」
 アルバイトの店員は、正社員であろう年配の店員に事情を説明してるみたいだった。間もなくすると、その正社員であろう店員がやってきてドリンク代だけで結構ですと言ってきたが、俺は申し訳なく思い5千円札を1枚レジの横に置き、釣りは要らないと告げ、引き止める店員を無視してベンツに乗り込んだ。どうせ人の金だ。平井は何も言わずベンツの助手席に乗り込んでいた。俺は急いでエンジンをかけベンツを発進させた。ルームミラーの店員が遠ざかっていく。
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