S&R shudo's life

ロック、旅、小説、なんでもありだ!
人生はバクチだぜ!!!!

真冬の狂想曲6-3

2006-07-27 18:18:21 | 真冬の狂想曲
6-3
 松の話が終わった頃、キムがやってきて俺達を道路の向こう側のビルに連れて行った。他の若いヤツがエレベーターのドアを開けて待っていた。いったい俺達は何様なんだろう。
エレベーターに乗り込むと、キムが5Fのボタンを押した。俺達は5Fで降りると目の前のガラスのドアに向かった。ドアには「サブリナ」と書いてある。
 中に入ると俺みたいな貧乏人は決して入る事が出来ないような高級なコリアンクラブだった。客はみんな身なりが良い。俺ときたら、ジーンズにフランス軍のハーフコート、赤いチェックのマフラーだ。俺は入るの躊躇ったが、キムが俺の手を引き店内に連れて行った。俺は仕方なくみんなの待っているソファに座った。
 店は平日だというのに忙しそうだったが、俺達には一人一人に綺麗な女性が付いた。バランタインが2本空いた頃、鼻の下を伸ばして調子に乗っている松の腕を掴んで外に連れ出した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真冬の狂想曲6-2

2006-07-24 16:57:53 | 真冬の狂想曲
6-2
 テーブルの上にはまだ料理が残っているが、俺達は韓国料理店を出る事にした。支払いはもちろん松だ。
 どうやら松の兄弟のやっている店に行くようだ。キムという男がごったがえした歌舞伎町の人ごみを分けて俺達に道を作る。13年ぶりに来る歌舞伎町はまるで韓国にいるみたいな錯覚をおこす。耳に入ってくるのも目にする物もハングルだらけだ。
 ほんの2,3分歩いた所で、キムが店の様子を見てくるので、少しだけ待ってくれるよう申し訳なさそうに言った。そのほんの少し待ってる間にも韓国人と思われる連中が松を見つけ挨拶にやってくる。俺はコイツはいったい何者になったんだと思った。それとも松の兄弟ってヤツがそれほど大物なのか。
 俺は思い切って松にその兄弟の事を聞いてみた。
「おい、松。何なん?その兄弟っての。」
「やっちゃん、知らんかったっけ、パクの兄弟の事。」
コイツがいくら太くなっても、俺達はガキの頃からの付き合いなんで気を使う必要は無い。俺は吐き捨てるように言った。
「聞いた事ねぇーよ!何者なん。」
「何年か前に兄弟分になったんやけど、このパクって兄弟は東京のコリアンマフィアのドンなんよ。前東京に来た時に暴れてから、ひょんな事で兄弟と知り合って、懇意になったんよ。ほら、俺在日やろー、そんなんもあってえらい仲良くなってさー。今度やっちゃんにも紹介しちゃるけ、仲良くなっちょき。」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真冬の狂想曲6-1

2006-07-22 14:40:56 | 真冬の狂想曲
6-1
 テーブルの料理が半分ほど片付いてきた頃、黒いスーツに白いシャツ、ノーネクタイの男が韓国料理店に入ってきた。見た目はあまり俺と変わらない、けっして大きくない身体だ。その男はたどたどしい日本語で、松に話しかけた。
「アニキ、遅くーなってスミマセン。今日の泊まるとことってますですか?」
松は少し上から物を言うように言葉を続けた。
「兄弟もこっちにおらんのに、あんまり甘えるわけにもいかんけ、自分で押さえとるから気にしなくていいぞ。まー、そんな事はいいけ、お前も飲め!ビールでいいか?」
その男は大きな声で返事をし、俺達にキムと自己紹介して、俺達のテーブルの横のテーブルに腰掛けた。すぐに運ばれてきたビールを横を向いて一気に飲み干した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真冬の狂想曲5-4

2006-07-21 17:24:44 | 真冬の狂想曲
5-4
 2杯目のビールがテーブルに運ばれてきたとき、コートのポケットの中の携帯電話が短く震えた。俺は携帯電話を取り出し、メールを確認した。杉野からだった。そのメールには、今日今からチェックイン出来る空室有りのホテルが3件書き込んであった。値段も似たり寄ったりだ。俺は松にどのホテルがいいのかを聞いたが、どこがいいか解らないので、どこでもいいと言ってきた。住所は3件とも歌舞伎町に近そうだった。俺は一番上に書いてある「飛鳥ホテル」に電話をかけた。
「シングルを5部屋用意して貰いたいんだけど、今から大丈夫?」
ホテルのフロント係はこんな時間にも係わらず愛想のいい声で答えた。
「はい、ご用意出来ます。今からすぐチェックインされますか?」
松にどうするかを訊ねてフロント係に返事をした。
「もう少し遅くなりそうなんだけど。何時までにチェックインすればいい?」
「そうですね、12時までにはチェックインして頂きたいのですが。よろしいでしょうか?」
俺は時計を見て、あと3時間程あるので大丈夫だろうと思い、「飛鳥ホテル」を予約した。一泊9800円だったが、どうせ人の金で泊まるのだから気にしない。松にホテルが取れた事を伝えて、俺は苦手な辛い料理に箸をのばした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真冬の狂想曲5-3

2006-07-20 18:17:43 | 真冬の狂想曲
5-3
 韓国料理店に入り、一番手前のテーブルに俺達は腰をおろした。注文は松任せにした。俺はすぐ、その事を後悔する事になる。
 韓国人の女性店員が次々に料理を運んで来る。キムチチゲ、キムチ各種、ナムル、チヂミ、それから俺には名前も知らない料理が数点とビールに焼酎。普通に考えると5人では到底食べきれる量ではない。金持ちってヤツの行動、金の使い方には正直気分が悪い。俺は生まれついての貧乏性だ。おまけに俺が食えそうな物は少ない。俺はビールを舐めながら、ナムルをつついていた。
「やっちゃん、これが美味しいんよ!」
松は俺の皿に、牡蠣のキムチを取り分けた。しょうがなくそれを口に運ぶ。たちまち俺の口の中は火の海になり、身体中から消防車の放水が始まった。慌ててビールを口に流し込んだ。それを見て松は大笑い。今日始めての笑顔を見せた。そう、松のヤツは俺が辛い物が苦手な事を知っていたはずだ。長い付き合いだから。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする