前回アップした戸倉の未成隧道の再撮リポートの続きです。
今回は、前回の後半にアップした崩落導坑の先へ進みます。
過酷な崩落導坑の最後には、
崩落した瓦礫の分だけ高くなった地面から、
本来の導坑へ下る瓦礫のスロープが待ち構えていましたが、
ゆっくりと下りて本来の導坑へ辿り着くと、
以外にも<快適>なトンネルが続いていました。
高さと幅、ともに2mくらいの極めて荒い素堀の導坑は、
本来快適なはずはありませんが、
それまでの崩落箇所があまりにも非道かったんで、
そう感じたのかもしれません。
快適な導坑を歩き出すと、
ほどくなくして人の痕跡がちらほらと散見します。
朽ち果てた木箱。
果たしていつからここにあるのかは分かりませんが、
もし工事中に放棄されたものだとしたら、
70年近く経過していることになります。
更に暫く進むと、壁面に落書きの跡があります。
これは『廃道レガシイ』のブックレットで、
平沼さんもリポートしていますが、改めて読んでみると、
トンネル戦士
諸君よ
當導坑の
開通は
何日ぞよ
と書いてあります。
平沼さんはこの落書きを建設当時の労働者のものと、
ほぼ決め打で伝えていますが、
もしかしたら、かなり時間が経ってから、
(と言っても戦後そんなに経っていない時期だとは思いますが)
この隧道を訪れた人の落書きかもしれませんね。
というのも、もしこの導坑を作っている人だったら、
隧道建設の中断を知っているので、
おそらく「夢半ばにして」などの表現になるのではないかと。
更に、ここで働いていた労働者が半島からの人たちだったと聞くと、
導坑がなかなか開通しない無念さを訴える内容、
そして流暢な日本語で書かれていることなど、
当時書かれたにしては、そぐわないことが多いとも思います。
落書きのすぐそばには錆びまくったカンテラが、
ポツンと転がっています。
これはおそらく建設当時のものではないでしょうか。
70年の時を超えて、かつて漆黒の闇を照らし、
ただ無心に穴を掘る労働者の眼となった灯り。
そう思うと鳥肌が立ちます。
<快適>な導坑には殆ど支保杭がありませんが、
ところどころこういった感じに崩れた支保杭の塊があります。
<快適>な導坑が始まったころは、
まだ隧道の周囲を奇麗に整えようとする意志を感じる壁面でしたが、
この付近になると、もう一心に掘り進むだけといった感じで、
壁面を整える意志は感じられません。
更に進むと、徐々に壁面の湿潤が多くなり出し、
坑床にも水が流れているようになります。
やがてその水は水量を増し、
水たまり状の坑床が出現します。
20m程の水たまりは、沸き出す地下水の水で、
水流があるのか、とても透き通っています。
またこの水たまりはそれほど深くないので、
用意したゴム長靴でなんとか渡ることができました。
正面に見える青光りする箇所は、
遠目には完全に閉塞している様にみえますが、
近づいて見ると、なんと極めて薄い隙間があり、
再び崩落部分の登場です。
この崩落箇所も、天井から落ちた瓦礫が坑床に堆積し、
かなりの高さまで積み上がっているものの、
その分天井も空間が出来ているので、
かろうじて前へ進むことができます。
画像はその崩落の瓦礫を登った所から、
1つ前の水たまりの方向を見たものです。
この崩落の先には先行した撮影クルーがいる筈ですが、
どんなに耳を澄ましてもまったく物音1つ聴こえません。
試しに大声で呼びかけても、返事もありません。
崩落によって直線的でなくなってしまった隧道内では、
そんなに遠くなくても、音が伝わらないのだと思いました。
そしていよいよ最終地点へ到着。
支保杭が水中に散乱する、
1つ前の水たまりより遥かに深い水たまり。
そしてその奥にみえるのが、完全閉塞地点。
先行した石井さん初めオープロ班は、
結局閉塞箇所を確認すべく、
50cm以上ある水中を、長靴の中に水を入れながら、
突き進んだそうです。
私は遅れて到着したので、
ズルをして対岸からの撮影だけで引き返しました。
引き返す直前、ライトを消ししばしその場に佇んでみましたが、
ライトを消した瞬間、
得体の知れない重圧が全身を蝕んで行くのを感じます。
それは、今この場で地震が来て、
崩落の下敷きになってしまうことを想像する恐怖かもしれません。
あるいは、想像する死後の世界かもしれません。
◆
ジュール・ベルヌが好きです。
特にセンター・オブ・ジ・アースはとても好きです。
あの話はフィクションで、地底は目映いばかりの銀世界ですが、
それに憧れて、子供の頃、よく出来かけの鍾乳洞をもぐったものです。
全く美しくなく、ただ濡れてる岩にしか見えない鍾乳石に挟まれて、
泥だらけになりながら前へ進む感覚。
きっとその先には、不思議な世界があるかもしれないと思いながら、
結局不思議な世界はどこにもありませんが、
暗い洞窟をくぐり抜けた達成感が残ったのを今でも覚えています。
廃道シリーズを通して、
この戸倉の未成隧道や『廃道レガシイ』に収録した旧大滑隧道、
そして『廃道クエスト』に収録した越床峠の明治隧道は、
いずれも閉塞した隧道でしたが、
これらの隧道には、廃道としての楽しみのみならず、
ケービングの楽しさが加味されていたので、
そういう意味では、とても印象深く記憶に残っています。
再び2つの崩落箇所を乗り越えながら、
コンクリート巻きの最終地点まで辿り着いて外の光が見えた時は、
さすがにホッとしました。
以前のリポートでもお伝えしましたが、
ケービング・アドベンチャー感満載の構造、
隧道の制作行程がつぶさに分かる貴重さ、
カビやコウモリも含めたその廃れっぷり、
そして、その裏に秘めた黒歴史。
三本の廃道DVD制作を通して、
もっとも印象深く残った物件でした。
◆
廃道三部作 絶賛発売中!!
『廃墟賛歌 廃道レガシイ obroad legacy』
廃道DVD三部作・完結編
2014年9月2日 release !
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廃道DVD三部作・上級編
2014年3月4日 release !
『廃墟賛歌 廃道クエスト obroad Quest』
廃道DVD三部作・入門編
2013年3月2日 release !
今回は、前回の後半にアップした崩落導坑の先へ進みます。
過酷な崩落導坑の最後には、
崩落した瓦礫の分だけ高くなった地面から、
本来の導坑へ下る瓦礫のスロープが待ち構えていましたが、
ゆっくりと下りて本来の導坑へ辿り着くと、
以外にも<快適>なトンネルが続いていました。
高さと幅、ともに2mくらいの極めて荒い素堀の導坑は、
本来快適なはずはありませんが、
それまでの崩落箇所があまりにも非道かったんで、
そう感じたのかもしれません。
快適な導坑を歩き出すと、
ほどくなくして人の痕跡がちらほらと散見します。
朽ち果てた木箱。
果たしていつからここにあるのかは分かりませんが、
もし工事中に放棄されたものだとしたら、
70年近く経過していることになります。
更に暫く進むと、壁面に落書きの跡があります。
これは『廃道レガシイ』のブックレットで、
平沼さんもリポートしていますが、改めて読んでみると、
トンネル戦士
諸君よ
當導坑の
開通は
何日ぞよ
と書いてあります。
平沼さんはこの落書きを建設当時の労働者のものと、
ほぼ決め打で伝えていますが、
もしかしたら、かなり時間が経ってから、
(と言っても戦後そんなに経っていない時期だとは思いますが)
この隧道を訪れた人の落書きかもしれませんね。
というのも、もしこの導坑を作っている人だったら、
隧道建設の中断を知っているので、
おそらく「夢半ばにして」などの表現になるのではないかと。
更に、ここで働いていた労働者が半島からの人たちだったと聞くと、
導坑がなかなか開通しない無念さを訴える内容、
そして流暢な日本語で書かれていることなど、
当時書かれたにしては、そぐわないことが多いとも思います。
落書きのすぐそばには錆びまくったカンテラが、
ポツンと転がっています。
これはおそらく建設当時のものではないでしょうか。
70年の時を超えて、かつて漆黒の闇を照らし、
ただ無心に穴を掘る労働者の眼となった灯り。
そう思うと鳥肌が立ちます。
<快適>な導坑には殆ど支保杭がありませんが、
ところどころこういった感じに崩れた支保杭の塊があります。
<快適>な導坑が始まったころは、
まだ隧道の周囲を奇麗に整えようとする意志を感じる壁面でしたが、
この付近になると、もう一心に掘り進むだけといった感じで、
壁面を整える意志は感じられません。
更に進むと、徐々に壁面の湿潤が多くなり出し、
坑床にも水が流れているようになります。
やがてその水は水量を増し、
水たまり状の坑床が出現します。
20m程の水たまりは、沸き出す地下水の水で、
水流があるのか、とても透き通っています。
またこの水たまりはそれほど深くないので、
用意したゴム長靴でなんとか渡ることができました。
正面に見える青光りする箇所は、
遠目には完全に閉塞している様にみえますが、
近づいて見ると、なんと極めて薄い隙間があり、
再び崩落部分の登場です。
この崩落箇所も、天井から落ちた瓦礫が坑床に堆積し、
かなりの高さまで積み上がっているものの、
その分天井も空間が出来ているので、
かろうじて前へ進むことができます。
画像はその崩落の瓦礫を登った所から、
1つ前の水たまりの方向を見たものです。
この崩落の先には先行した撮影クルーがいる筈ですが、
どんなに耳を澄ましてもまったく物音1つ聴こえません。
試しに大声で呼びかけても、返事もありません。
崩落によって直線的でなくなってしまった隧道内では、
そんなに遠くなくても、音が伝わらないのだと思いました。
そしていよいよ最終地点へ到着。
支保杭が水中に散乱する、
1つ前の水たまりより遥かに深い水たまり。
そしてその奥にみえるのが、完全閉塞地点。
先行した石井さん初めオープロ班は、
結局閉塞箇所を確認すべく、
50cm以上ある水中を、長靴の中に水を入れながら、
突き進んだそうです。
私は遅れて到着したので、
ズルをして対岸からの撮影だけで引き返しました。
引き返す直前、ライトを消ししばしその場に佇んでみましたが、
ライトを消した瞬間、
得体の知れない重圧が全身を蝕んで行くのを感じます。
それは、今この場で地震が来て、
崩落の下敷きになってしまうことを想像する恐怖かもしれません。
あるいは、想像する死後の世界かもしれません。
◆
ジュール・ベルヌが好きです。
特にセンター・オブ・ジ・アースはとても好きです。
あの話はフィクションで、地底は目映いばかりの銀世界ですが、
それに憧れて、子供の頃、よく出来かけの鍾乳洞をもぐったものです。
全く美しくなく、ただ濡れてる岩にしか見えない鍾乳石に挟まれて、
泥だらけになりながら前へ進む感覚。
きっとその先には、不思議な世界があるかもしれないと思いながら、
結局不思議な世界はどこにもありませんが、
暗い洞窟をくぐり抜けた達成感が残ったのを今でも覚えています。
廃道シリーズを通して、
この戸倉の未成隧道や『廃道レガシイ』に収録した旧大滑隧道、
そして『廃道クエスト』に収録した越床峠の明治隧道は、
いずれも閉塞した隧道でしたが、
これらの隧道には、廃道としての楽しみのみならず、
ケービングの楽しさが加味されていたので、
そういう意味では、とても印象深く記憶に残っています。
再び2つの崩落箇所を乗り越えながら、
コンクリート巻きの最終地点まで辿り着いて外の光が見えた時は、
さすがにホッとしました。
以前のリポートでもお伝えしましたが、
ケービング・アドベンチャー感満載の構造、
隧道の制作行程がつぶさに分かる貴重さ、
カビやコウモリも含めたその廃れっぷり、
そして、その裏に秘めた黒歴史。
三本の廃道DVD制作を通して、
もっとも印象深く残った物件でした。
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メーカーはいずれも日活でございます。