黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

大正館・廃墟と映画館

2006-08-05 01:20:07 | 産業遺産


画像は千葉県の富津岬の近くにあった映画館の廃墟で、
大正館という名前なので、大正時代に建てられたものだと思います。
場所はこの辺だったと思います→Mapion
昨日アップした美唄の映画館同様、
ビビッドな色使いが印象的な映画館でしたが、
去年この近辺を通った時にはなかったので、
たぶん解体されたんではないでしょうか。

券売の窓口の料金表をみてビックリです。



大人300円!
これって昭和三十年代の料金じゃぁないですかぁ~
一瞬名画座かなとも思いましたが、
料金表の一番下に「ビラ下」とあるので、
やはり封切館だったのかと思います。
ちなみにビラ下とは銭湯とかに張られた映画のポスター、
つまりビラの下にくっついている割引券のことだそうです。
っていうことは、
4、50年、ここで廃墟やってたんでしょうか。

******************************

それにしても映画館程、
廃墟になっていて許されるというか、
廃墟になってるのがよく似合うというか、
そんな建物はないと思います。

映画のジャンルは大きく分けて、
「ヒューマンドラマ」「ラブストーリー」「アクション」「SF」「コメディー」「ホラー・ミステリー」
の6種類かとおもいますが、
このうちの「SF」「ホラー・ミステリー」「アクション」
の3ジャンルの映画の舞台の多くが廃墟だと思います。
それだけ廃墟は夢の世界を作り出すのに適してる場所だし、
廃墟の複雑なマチエールは、
2次元のスクリーンに立体的な陰影を作りやすい素材なのかとも思います。

もともと相性のいい廃墟と映画。
その映画館が廃墟になっている姿には、
自らが夢の世界の舞台になってしまった様な印象を受けます。

住宅の廃墟は、そこに現実の生活があったかと思うと、
どうしても切なさや悲しさを感じます。
大工場や大鉱山の廃墟に残された前進と欲望の跡には、
寂寥と無常を感じます。
しかし映画はもともと泡沫の夢。
廃墟になった映画館をみると、
映画をみるのと同じように、
いろいろな幻想が浮かんできます。

以前アップした横浜ラ~メン博物館も、
映画館を改装したというシチュエーションにするには、
それなりの理由があったんではないかと思います。
 


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4 Comments

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映画館の廃墟への視線 (テツ)
2006-08-07 10:03:14
>もともと相性のいい廃墟と映画。

 その映画館が廃墟になっている姿には、

 自らが夢の世界の舞台になってしまった様 な印象を受けます。



住宅の廃墟などとは違う、映画館の廃墟への

視線、面白いですね。共感させられました。



社宅の廃墟といえば、私は閉山後まもなくの

高島を訪れたことがあるのですが、

生活の痕跡が生々しく残されショックを受けました。後年完全に取り壊された跡地を見て、

寂寥を感じました。



廃墟と映画といえば真っ先に思い浮かべるのは

やはりタルコフスキーの「ストーカー」ですね。

廃墟巡りの心象をそのまま映像にしたような

印象を受けます。
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▼テツさんへ (廃墟徒然草)
2006-08-08 02:25:04
高島のまだ住宅棟がたくさんある頃をご覧になっているのですね。

とても羨ましいです。

そしてそれらが無くなったのを見るのがしのびないのは、

また同感します。



廃墟をアップしているサイトのなかで、

廃墟に寂寥感をもとめる方向性のものは多く見かけますが、

それらの多くが、ある期間アップした以降更新されていない状態のものもよくみかけます。

それらを見るといつも思うのは、

実は寂寥感を求めているのではなく、

初めて出会った廃墟の興奮を伝えているんではないかと思わされます。



そこで働いていた人や住んでいた人達にとってはやるせない廃墟でも、

初めて出会ったのが廃墟の姿だった場合、

その人には、それが生きている姿なのだと思います。

そしてその感動を再び味わおうと再度その廃墟を訪れると、

かなり壊れていたり無くなっていたりする事が多く、

結果あのころはまだ○○が残っていてよかった。

と思うようになると思います。

でも、この「あの頃は○○があってよかった」という感覚は、

実は廃墟を求める感覚ではなく、

住んでいた人がその後の廃墟化した状態を悲しむのと同じ感覚ではないかと思います。



廃墟とは本来、無へ還っていく姿そのものなんではないかと思います。



『ストーカー』は名作ですね!何度も見ました。

NHKドラマ『深く潜れ』も実はストーカーを下敷きにしているんではないかと思います。

廃墟という異空間を体験することで、それまでとちょっと違う自分がそこに生まれる、

というテーマは両方の作品に共通する廃墟へのアプローチかと思います。

 

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お久しぶりです。 (旅じたく)
2006-08-26 23:38:22
富津の映画館ですね。TBSのドラマ「砂の器」のロケ地です。小説の舞台は伊勢の映画館でした。

わたしは最近、徳島で「虹をつかむ男」という映画の舞台になったオデオン座を見てきました。古い小劇場ですが、ロケ地の候補になった寂れた映画館は日本全国に10カ所以上あったそうです。その1つにこの富津の廃映画館があったことにちょっと感動しました。
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▼旅じたくさんへ (廃墟徒然草)
2006-08-27 08:54:51
ドラマの『砂の器』は見ていませんが、昔の映画はDVDもあるのでたまに見ます。

この映画館が使われたなら、たぶん内部も撮影されたのかと思い、ウェブでちょっと調べましたが、

『砂の器』で使われたのはこの大正館ではなく、

木更津の「富士館」ではないでしょうか?

http://www8.plala.or.jp/yamashita/daiariy11.htm

このページの2月7日の記事参照。



オデオン座もついでにウェブで調べました。

もともと取り壊し予定だったのが、

『虹をつかむ男』のロケ地で使用されたおかげで、

町指定文化財になったそうですね。

気にもとめなかった建物が、映画のロケで使われたために、

急に保存されるというのは、ちょっととほほな気もしますが。



ところで『長男の中庭』、一回閉じてまた再開されているようですね。

また時々寄らせてもらいます。

 

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