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第609回 高田文夫さんで初笑い2025

2025-01-03 | エッセイ
 新年の最初の記事ですので、恒例の(と自分で勝手に決めてる)初笑いネタをお届けします。

 笑いの世界で、多芸多才ぶりが際立つ高田文夫さんには、80~90年代を中心に、テレビ、ラジオで大いに笑い、楽しませてもらいました。歯切れよく、スピーディーなトーク、ぽんぽん飛び出すギャグが、何よりの魅力で、笑い転げたのを思い出します。現在も、「ラジオビバリー昼ズ」で元気なトークを展開しておられるのが何よりです。

 以前、当ブログで高田さんとビートたけしさんとの交友ぶりなどをお伝えしました(文末にリンクを貼っています)。今回は、高田さんの「楽屋の王様」(講談社文庫)がネタ元です。単行本は92年刊行で、いささか古いのはご容赦の上、業界の楽屋噺、裏話をお楽しみいただこうという趣向です。よろしくお付き合いください。なお、<  >内は、本書からの引用です。

★落語家・立川藤志楼(とうしろう)としても活動していた高田さんの師匠にあたる立川談志さんが、海外から帰国した時のことです。成田空港の税関を通る時、麻薬犬にいきなり噛まれました。すわ一大事、と出迎えの弟子たちが色めく中、係官がポケットをあらためると、なんとクサヤ(強い臭いの魚の干物)が出てきたのです。<麻薬犬はクサヤは知らなかったらしい。しかしなんでクサヤなんて持って歩いているのだろう。>

★談志師匠が地方での仕事が終わっても、なかなかギャラがもらえません。<「うーー、どうなってんだ?こんなものは?」と四角くサインを出した。>「気がつきませんで」と詫びがあって、かなり分厚い茶封筒が渡されました。嬉しそうにトイレに駆け込んで封を切る師匠。出てきたのは、なんと「リルケ詩集」でした。

★映画好きの円楽師匠(五代目)が、ひとりで映画館で映画を見ていました。スーッと横に座った外人男性、昼間から着物を着ていたので、ゲイと思ったのでしょう、手を握ってきました。失礼があってはいけないと思い、握り返す師匠。寄席の出番が近づきましたが、外人は手を離してくれません。<なんとかこれから仕事だからと説明しようとしたのだがうまく言えない。円楽師「マイ、ビジネス!!」 と何を勘違いしたのかその外人が嬉しそうにたずねた。「ハウマッチ!?>

★三遊亭小遊三の息子さんが面接試験を受けました。お父さんの名前(天野幸夫)を訊かれて<「あまのゆきお」「ゆきおの「ゆき」はどういう字かな?」セガレ数十秒考えたのち、「不幸の「幸」!!」><「それを言うなら幸福の「幸」だろ」とぼやく小遊三。>

★林家彦六師匠。もらったキムチをバカな弟子が何も知らずに洗って出しました。<「バカヤ~~ロ~~赤い辛いところはどうしたい~~ン」「洗い流しました」「それじゃ、なにかい。おめ~~は、麻婆豆腐あらうのか~~い!?」>

★ホラ吹き勢朝という落語家が、売れない仲間のR師匠についての噂話を高田さんに吹き込みました。それによると、Rは「海千山千」だというのです。<仕事がないから海の仕事でも、山の仕事でも千円で行くんですよ。これを我々は海千山千といいます」だと。>
 売れないながら、「呑む打つ買う」の三道楽にも励んでいるという。<どんな仕事も「呑む」、暇だから家で釘を「打つ」>そして、<「あの師匠、家でうさぎ飼ってんです。これが本当の呑む打つ飼う」だと。>

★もうひとつ貧乏話といきましょう。三遊亭円丈師匠の弟子で、三遊亭新潟という男がいました。家賃1万2千円の池袋のアパート住まいです。20部屋のうち、日本人は彼だけで、あとは、フィリピン、イラン、中国など多国籍。真冬もTシャツ1枚、せいぜい重ね着で過ごします。そんな彼が、冬はやっぱり「鍋もの」だ、というのです。<どんな鍋ものを作るのかきくと、お肉屋さんの裏でひろってきたトリのホネでスープをとり、そこに季節の野菜を入れるという。「今の季節の野菜は何だい?」「そうですね・・・セイタカアワダチ草ですか」だと。土手でつんでくるらしい。セイタカアワダチ草はどんな味がするのか私は知りなくもない。>こんな草です。

★高田さんの友人が、寄席のトイレでバッタリ林家三平師匠と連れションになりました。<三平師匠おしっこをしながら、「どーも加山雄三です」とギャグをとばした。>
 そんな師匠が病に倒れました。<もう危ない。医者が脈をとりながら確かめる為「師匠お名前は?お名前は?」「・・・加山雄三です・・・」最後のひと言までギャグだった。>

 存分に初笑いしていただけましたか?なお、冒頭でご案内した記事へのリンクは、<第480回 たけしの時代と高田文夫>です。併せてご覧いただければ幸いです。それでは次回をお楽しみに。