2日後、街は雨だった。
コンビ二の窓を強く打つほどの久々のまとまった雨。
昨日までとは打って変わって昼間でも少し肌寒い。
今日は昼間のシフトで、大仏頭の原さんと一緒だ。
ビニールの傘は良く売れているが、客の数は普段の同じ時間に比べれば少ない。
原さんは相変わらずどうでも良い話を絶え間なく聞かせてくれる。
そして何だか今日の僕は落ち着かない。それは決して雨の所為なんかではない。
理由は2つ考えられる。
まず、原さんがいつ「そういえばこの間から入った子はどうなの?」って訊いてこないかとハラハラしているから。
そしてもう1つ。マナーモードにしている僕の携帯電話が右ポケットの中で珍しく鳴るような予感がしているから。
もちろん僕の携帯電話をブルブルと震わせてくれる予感がしている相手は岩本さんである。
2日前、岩本さんが午前3時に勤務を終え、バックヤードに戻る直前に僕は半分震えた声で彼女に声をかけた。
「あ、そうだ、あの、一応僕の連絡先教えておくよ。ちょ、ちょっと待ってね。」
そう言ってレジの横にあるメモ紙に僕の電話番号とメールアドレスを書いて彼女に渡したのだ。
「な、なんかあったら連絡して!」
その後すぐに「今日はお疲れさまでした♪」的なメールが来るかと思ったが一向に来ない。
きっと疲れているのだ。慣れていない仕事をしたから。そうだ、そうに違いない。
そんな僕の決めつけが、今のソワソワに繋がっているのである。
「どうしたの?二瓶君。携帯なんか気にして。」
ノンデリカシーな原さんが訊いて来た。
「いや、あの、今何時かと思って…」
「時計ならあそこにあるじゃないの。」
原さんはそう言いながらジュースの並んでいる棚の上の壁にかかっている時計をあごで指した。
「あ、そうですよね。」
「ところでさ、この間から入った子はどうなの?ほら、あの女の子。」
ほら、思った通りだ。
「あ、岩本さんの事ですか?」
他に誰がいると言うのだ。
「そう!岩本さん。もう口説いちゃったのかしら?」
「そんな、まさか。岩本さんはなかなか仕事を覚えるのが早いですよ。」
僕は無理矢理に話の方向を変えた。
午後5時を回り、仕事からも原さんからもやっと解放された。
雨はだいぶ小降りになっていた。
自分の部屋に着いてポケットから携帯電話を取り出すと、珍しくメールを一件受信していた。
歩いている途中で携帯が鳴ったから気がつかなかったのだろう。
間違いない!岩本さんからだ!
他に誰が僕なんかにメールを送ってくれるというのだ。
紛らわしいので、僕は会員登録しているサイト全てからのメルマガの受信を停止させておいたのだ。
もう僕を邪魔する者はいない!
窓の外の雨は完全に止んだ。
あとは僕がこのメールさえ開けば、その先には雲ひとつ無い青空のような明るい未来が待っているのだ。
コンビ二の窓を強く打つほどの久々のまとまった雨。
昨日までとは打って変わって昼間でも少し肌寒い。
今日は昼間のシフトで、大仏頭の原さんと一緒だ。
ビニールの傘は良く売れているが、客の数は普段の同じ時間に比べれば少ない。
原さんは相変わらずどうでも良い話を絶え間なく聞かせてくれる。
そして何だか今日の僕は落ち着かない。それは決して雨の所為なんかではない。
理由は2つ考えられる。
まず、原さんがいつ「そういえばこの間から入った子はどうなの?」って訊いてこないかとハラハラしているから。
そしてもう1つ。マナーモードにしている僕の携帯電話が右ポケットの中で珍しく鳴るような予感がしているから。
もちろん僕の携帯電話をブルブルと震わせてくれる予感がしている相手は岩本さんである。
2日前、岩本さんが午前3時に勤務を終え、バックヤードに戻る直前に僕は半分震えた声で彼女に声をかけた。
「あ、そうだ、あの、一応僕の連絡先教えておくよ。ちょ、ちょっと待ってね。」
そう言ってレジの横にあるメモ紙に僕の電話番号とメールアドレスを書いて彼女に渡したのだ。
「な、なんかあったら連絡して!」
その後すぐに「今日はお疲れさまでした♪」的なメールが来るかと思ったが一向に来ない。
きっと疲れているのだ。慣れていない仕事をしたから。そうだ、そうに違いない。
そんな僕の決めつけが、今のソワソワに繋がっているのである。
「どうしたの?二瓶君。携帯なんか気にして。」
ノンデリカシーな原さんが訊いて来た。
「いや、あの、今何時かと思って…」
「時計ならあそこにあるじゃないの。」
原さんはそう言いながらジュースの並んでいる棚の上の壁にかかっている時計をあごで指した。
「あ、そうですよね。」
「ところでさ、この間から入った子はどうなの?ほら、あの女の子。」
ほら、思った通りだ。
「あ、岩本さんの事ですか?」
他に誰がいると言うのだ。
「そう!岩本さん。もう口説いちゃったのかしら?」
「そんな、まさか。岩本さんはなかなか仕事を覚えるのが早いですよ。」
僕は無理矢理に話の方向を変えた。
午後5時を回り、仕事からも原さんからもやっと解放された。
雨はだいぶ小降りになっていた。
自分の部屋に着いてポケットから携帯電話を取り出すと、珍しくメールを一件受信していた。
歩いている途中で携帯が鳴ったから気がつかなかったのだろう。
間違いない!岩本さんからだ!
他に誰が僕なんかにメールを送ってくれるというのだ。
紛らわしいので、僕は会員登録しているサイト全てからのメルマガの受信を停止させておいたのだ。
もう僕を邪魔する者はいない!
窓の外の雨は完全に止んだ。
あとは僕がこのメールさえ開けば、その先には雲ひとつ無い青空のような明るい未来が待っているのだ。