「おはようございます!」
深夜0時とは思えないほど明るい挨拶とともに岩本さんが店内に入って来た。
「おはよう!」
僕も平然とした態度で返した。
さて、どうしようか。どうしても彼女のメアドだけでもゲットしたい。
何と言って強制的にメールを送らせようか。
「ねぇ、メールちょうだいよ!」
いや、これはダメだ。ストレート過ぎる。
「仕事で分からない事あったら何でもメールして訊いて良いからね。」
これも変だ。分からない事は勤務中に教えろよ!っていう話だ。
店内には客がほとんど居なくなった。
窓際の雑誌コーナーで立ち読みをしている茶色の帽子をかぶった中年の小太りな男性客が一人いるだけだ。
レジは当然暇である。納品もまだ来ない。
岩本さんは僕に背を向けた状態で、レジ内に置いてあるタバコと自分のメモ用紙を照らし合わせてタバコの種類を復習している。なんて仕事熱心な子なのだ。
店内には沈黙の時間が流れているが、これを「沈黙」と感じているのはきっと僕だけで、岩本さんはタバコの種類を覚えるのに必死で、小太りな中年の男性客は雑誌の立ち読みに必死なのであろう。
店内には有線の音楽も流れているが、今の僕の耳には全く入ってこない。
やはり「沈黙」を感じているのは僕だけなのであろう。
そして僕はこの「沈黙」を破らねばならない!と思った。
「そういえば岩本さん…」
僕は切り出した。
「はい。なんですか?」
岩本さんが視線をタバコから僕へと移した。
「このあいだ渡した僕のメアド… 無事に登録できた?」
なんだこの間抜けな質問は。
携帯に他人の連絡先を登録するのに無事も何もないだろう。
今どきの20歳の子なら尚更だ。
「あ、登録できましたよ。」
「あ、それなら良かった。」
会話が終わってしまった。
岩本さんはまたタバコとメモ用紙に意識を戻す。
中年の男性客はまだ立ち読みを続けている。
また僕の中だけで沈黙の時間に戻ってしまった。
何か、何かを話さねば…
「どう? タバコの種類覚えられそう?」
考えた結果出た言葉がこれだ。
「はい、おかげさまでだいぶ覚えてきました。」
「あ、それなら良かった。」
僕は何も教えていない。それでも「おかげさまで」という言葉を添える岩本さんはやっぱり素敵である。
あ、なるほど。僕があまり話しかけられなかったおかげでタバコの種類を覚えるのに集中できましたって事か。
結局、今日はあまりうまく話せないまま午前3時になってしまい、岩本さんは一足先にあがってしまった。
僕があがる午前6時まではバックヤードで何かの計算をしている店長とレジにいる僕の二人しか店員はいない。
ここから僕の静かな一人反省会が始まるのである。
深夜0時とは思えないほど明るい挨拶とともに岩本さんが店内に入って来た。
「おはよう!」
僕も平然とした態度で返した。
さて、どうしようか。どうしても彼女のメアドだけでもゲットしたい。
何と言って強制的にメールを送らせようか。
「ねぇ、メールちょうだいよ!」
いや、これはダメだ。ストレート過ぎる。
「仕事で分からない事あったら何でもメールして訊いて良いからね。」
これも変だ。分からない事は勤務中に教えろよ!っていう話だ。
店内には客がほとんど居なくなった。
窓際の雑誌コーナーで立ち読みをしている茶色の帽子をかぶった中年の小太りな男性客が一人いるだけだ。
レジは当然暇である。納品もまだ来ない。
岩本さんは僕に背を向けた状態で、レジ内に置いてあるタバコと自分のメモ用紙を照らし合わせてタバコの種類を復習している。なんて仕事熱心な子なのだ。
店内には沈黙の時間が流れているが、これを「沈黙」と感じているのはきっと僕だけで、岩本さんはタバコの種類を覚えるのに必死で、小太りな中年の男性客は雑誌の立ち読みに必死なのであろう。
店内には有線の音楽も流れているが、今の僕の耳には全く入ってこない。
やはり「沈黙」を感じているのは僕だけなのであろう。
そして僕はこの「沈黙」を破らねばならない!と思った。
「そういえば岩本さん…」
僕は切り出した。
「はい。なんですか?」
岩本さんが視線をタバコから僕へと移した。
「このあいだ渡した僕のメアド… 無事に登録できた?」
なんだこの間抜けな質問は。
携帯に他人の連絡先を登録するのに無事も何もないだろう。
今どきの20歳の子なら尚更だ。
「あ、登録できましたよ。」
「あ、それなら良かった。」
会話が終わってしまった。
岩本さんはまたタバコとメモ用紙に意識を戻す。
中年の男性客はまだ立ち読みを続けている。
また僕の中だけで沈黙の時間に戻ってしまった。
何か、何かを話さねば…
「どう? タバコの種類覚えられそう?」
考えた結果出た言葉がこれだ。
「はい、おかげさまでだいぶ覚えてきました。」
「あ、それなら良かった。」
僕は何も教えていない。それでも「おかげさまで」という言葉を添える岩本さんはやっぱり素敵である。
あ、なるほど。僕があまり話しかけられなかったおかげでタバコの種類を覚えるのに集中できましたって事か。
結局、今日はあまりうまく話せないまま午前3時になってしまい、岩本さんは一足先にあがってしまった。
僕があがる午前6時まではバックヤードで何かの計算をしている店長とレジにいる僕の二人しか店員はいない。
ここから僕の静かな一人反省会が始まるのである。