周平の『コトノハノハコ』

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小説第4弾『この道の先には』~最終章~

2014年02月25日 | 小説
国道は平日とは思えないほど渋滞していた。
そこで将平くんは脇道へと車を進めた。
国道より圧倒的に細く、通りにくそうな道だが、他に車は全く走っておらず、人もほとんど歩いていない一本道だ。

「あれっ? ブレーキが…」
ボクが知る限り、これまでで最もか細い声で彼はそう言った。

「えっ? どうかしたの?」
ボクは訊いた。

「やばい! ブレーキが効かない!!」

「うそ? マジで!?」

「ちょっと待てよ… たしかこの道の突き当たりって、コンビニがあったよな?」

「それじゃあ、まさか…」

「俺たちはコンビニに車で突っ込まれる側じゃなくて、突っ込む側だったって事か?」

「そ、そんな…」

そうしているうちに車はどんどんと一本道の突き当たりにあるコンビニへと近づいていった。

「ダメだ… 止まらない…」
将平くんのか細い声の記録がまた更新された。
そして彼はあきらめたかのようにハンドルから手を放した。

「やっぱり運命は変えられなかったのか…」
ボクも助手席でうつむきながらつぶやいた。

死にたいと思っていた。
死んでしまいたいと願っていた。
どうしたら楽に死ねるだろうと考えていた。
1週間前までは。

それが将平くんと出会えた事で180度変わった。
人生で最高の友達ができた。
人生で初めて心から「生きたい」と思えた。

"この道の先には光がある"
そう言い切れるまでになった。

だが今、"この道の先にはコンビニがある"

次の瞬間…

「ドーン!!」という凄まじく大きな音がした。

終わったのだ。何もかも。

もうここは天国なんだなぁと思いながら2人が目を開けると、一人の男がその体ひとつで車を止めていた。

「えっ?」
ボクと将平くんは全く同じタイミングで言った。

車はコンビニの窓のわずか1メートルほど手前で完全に停止していた。
体ひとつで車を止めた男が運転席側の窓をノックして、将平くんに窓を開けるように促した。

将平くんが窓を開けると、その男は、

「ちょっと! 困るよ! 車で突っ込まれたりなんかしたら。ここは僕の大事な職場なんだよ!
こっちはギリギリの生活なんだから、この店が営業停止にでもなったらたまったもんじゃないよ!」

と、大声で怒鳴ってきた。

その男の左胸のネームバッジには「二瓶」と書かれていた。

※二瓶…小説第1弾~第3弾参照。

死にたいと思っていた。
死んでしまいたいと願っていた。
どうしたら楽に死ねるだろうと考えていた。
そう。将平くんと出会うまでは。

そして、きっと死んでいた。
そう。二瓶という男と出会わなければ。

(完)