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高齢者を衰弱させる「コロナフレイル」、歩行速度低下や食べこぼしは危険視号

2021-09-02 08:30:00 | 日記

下記はダイアモンドオンラインからの借用(コピー)です

高齢者が健康な状態から要介護状態にシフトしていく“中間段階”のことを指す「フレイル(虚弱)」。通常、運動不足や社会活動の減少によってリスクが高まるとされるが、長引くコロナ禍の自粛生活によって、高齢者の健康に与える二次被害として注目を集めている。桜美林大学老年学総合研究所で所長を務める、医学者の鈴木隆雄氏にフレイルの特徴と向き合い方について聞いた。(清談社 山田剛志)
歩行速度の低下や食べこぼしは
危険なサイン
 フレイルの語源は、日本語では「虚弱」や「老衰」と訳される「Frailty(フレイルティー)」。老化によって運動機能や認知機能にトラブルを抱えやすくなった状態であり、放置しておくと認知症などの発症につながり、自立した生活が困難になる。
 65歳から74歳までの前期高齢者にはあまり見られないものの、75歳を過ぎると身体活動が次第に減っていくことから、フレイルになるリスクが上昇するという。健常な状態と介護を必要とする状態の間に位置する“移行段階”であり、「適切な対応を取ることによって健康な状態に回復する余地がある」のが特徴だ。
フレイルの症状は身体的要素、精神・心理的要素、社会的要素の3つの側面に表れ、それぞれが強く連関しており、予防のためにはいずれの要素にも配慮する必要がある。鈴木氏にそれぞれの特徴を解説してもらった。
「フレイルの身体的な表れとしては、第一に筋肉量が減少することによって歩行スピードが遅くなり、何かにつまずいて転倒するケースが増えることが挙げられます。他にも、握力が低下することによってペットボトルのふたを開けることができなくなったり、口周りの筋肉が衰えることにより、食事の食べこぼしや蒸せ(むせ)をする機会が増え、滑舌の悪化なども目立つようになる。人によってこれらの症状の一部のみが強く出る場合と、全ての症状が表れる場合があります。いずれにせよ、これらの異変が見られた場合はフレイルの可能性が高く、要介護状態に移行する前に適切な対応を取る必要があるでしょう」
 では、上記のような兆候が表れた場合、どのような措置を講じればいいのだろうか。
「脚力が衰えている場合は、週に数回、ゆっくりで構わないので近所を30分間ほど散歩することで、失われた筋力を取り戻すことができます。その際は、自分の脚力が衰えているということを自覚して、無理のない範囲で運動を行うことが大切です。上肢の筋力や握力が衰えている場合は、ダンベル運動を1日に1回行うといいでしょう。鉄アレイの代わりに、手近にある椅子などを使っても構いません。口周りの筋肉に衰弱が見られる人には、発声しながら口を動かす『パタカラ体操』がお勧めです。『パ』『タ』『カ』『ラ』をそれぞれ5文字3回ずつ発音する運動を日常的に行うことで、口腔の筋力を回復させることができます。これらは身体的フレイルの改善策であると同時に予防としても有効です」
社会的な孤立が
フレイルを招くケースも
 老いに伴う衰弱が身体の異変として表れる場合、高齢者当人も自覚しやすく、周囲の人間が気付く機会も多いため、大事に至る前に対策を講じるのは比較的容易だ。しかし、精神・心理的な面に表れる場合は勝手が異なる。
「精神・心理的なフレイルの特徴として最も顕著なのは、うつ症状です。うつ状態になると喜びの喪失、自責感といった症状に加えて、倦怠感、体重減少といった身体的な異変を伴うこともあります。また、認知機能の低下も特徴です。この場合、今まで問題なくこなせていた簡単な暗算ができなくなったり、買い物に行っても同じものばかり買ってしまうなど、適切な行動プランが立てられなくなります。厄介なのは本人が異変に気付きにくいこと。身体的には健康であっても、精神・心理的なフレイルだけが顕在化する人は多く、改善可能な段階で手を打つことができないまま、認知症の発症など回復余地のない状態に移行してしまうケースも少なくありません」
 さらに、身体的なフレイルと精神・心理的なフレイルと並び、「社会的なフレイルも憂慮すべきだ」と鈴木氏は警鐘を鳴らす。
「社会的なフレイルの特徴は、外出頻度や他者との交流の著しい減少、引きこもりといった点が挙げられます。家族と一緒に暮らしている高齢者でも、孤食が多かったり、コミュニケーションの頻度が極端に少ない場合には注意が必要です」
 身体的なフレイルは、日常生活に適度な運動を導入するといった自助努力によって予防・改善できる。これに対し、精神・心理的フレイルと社会的フレイルは他者とのコミュニケーション不足に起因する部分が大きく、解決のためには自助だけでは不十分であり、共助、互助といった観点に基づいたアプローチが求められるという。
「高齢者に対し、積極的に周囲とコミュニケーションを取るべきだと口で言うのは簡単ですが、希薄になった人間関係を修復するのは、年を取れば取るほど難しい。そこで大事になってくるのは、各自治体が高齢者の生活状況をつぶさに把握し、孤立させないように包括的なケアをしていくことです。社会的なつながりは個人の努力で容易に作れるものではありませんから、公的な支援が必要なのです」
フレイルを予防しながら
衰弱と上手に付き合う
 身体的要素、精神・心理的要素、社会的要素という3つの領域にわたって表れるフレイルだが、「社会とのつながりを保つことが最も有効な対策だ」と鈴木氏は語る。
「社会とのつながりというと抽象的なので、他者とのつながりと言い換えてもいいでしょう。常日頃からコミュニケーションを取り合う友人や知人がいれば孤独に悩む機会が減り、引きこもり防止にもなります。また、日常的に人と話したり、メールのやり取りをすることは認知機能を正常に保つことにつながり、誰かに会いに出掛けるといったアクションが生じることで、体を動かす機会も増える。フレイルのリスクを下げるためには、他者との関わりを絶やさないことが大事なのです」
 対面での交流を図ることが難しいコロナ禍だからこそ、高齢者はオンラインツールを活用して社会とのつながりを保ち、適度な運動を続けることによって、心と体の働きを衰弱させないために配慮する必要がある。一方で、フレイルが高齢者にとって避けては通れない、普遍的な問題であることも忘れてはならない。
「フレイルの予防とは発症リスクの根絶ではなく、あくまで先送りが主眼。つまり年を取るにつれ、いずれは誰もがフレイルと向き合うことになるのです。とはいえ、決して予防を軽視してはいけません。例えば、75歳の時点でしっかり対策をしておけば、80歳や85歳になるまでフレイルと無縁の生活を送ることも十分可能になります。大切なのは、老いに伴う衰弱から目を逸らすのではなく、うまく付き合っていくことなのです」
 コロナ禍でクローズアップされるフレイル。一過性の問題では決してなく、今後日本が超高齢化を迎える上で、高齢者のみならずその周囲の人間も含めた国民全員が、根気強く向き合っていくべき課題なのかもしれない。