下記の記事は日刊ゲンダイデジタルからの借用(コピー)です
職場でも飲食店でも、不思議と楽しそうに笑顔でいる人の周りは、ポジティブな雰囲気に包まれているものです。
心理学には、「笑顔優位性効果」という言葉があります。笑っている人の写真と怒っている人の写真を用意して、それぞれの顔を覚えてもらい、後日、同じ人たちの無表情の写真を見せ、「この顔を覚えているか」と確認したところ、圧倒的に記憶に残っていたのは笑っている人の写真だったといいます。記憶に残りやすければ、コミュニケーションも円滑に進みやすくなりますから、笑顔による優位性がさまざまな波及効果をもたらすことは、想像に難くないでしょう。「笑う門には福来る」とはよく言ったもので、表情に乏しい毎日を送るよりも、笑顔の多い瞬間をたくさんつくった方が、あなた自身も周りもハッピーになっていくのです。
笑顔には、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールを軽減させる効果があることも立証されています。カンザス大学のクラフトとプレスマンは、口にさまざまな形で箸をくわえさせるという面白い実験(2012年)を行っています。
被験者に1分間氷水に手をつけてもらうなどしてストレス値を上げ、その後、①【軽い笑みになるようにくわえる】②【口角が上がって大きな笑顔になるようにくわえる】③【無表情でくわえる】と3つのくわえ方をするグループに分けました。
そして、心拍数やストレスの度合いを計測すると、②のくわえ方をしていた被験者たちの心拍数やストレスが、もっとも低かったのです。
つまり、口角を上げ笑っているような表情をつくるだけ(フェイクスマイル)でもストレスが軽減されるのです。「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しくなるのだ」という心理学者ウィリアム・ジェームズの言葉がありますが、笑うことも同じです。ニコニコしているから気持ちが楽しく高揚していき、良い作用をもたらしやすくするのでしょう。
また、19年には山形大学医学部が、「笑う頻度と死亡や病気のリスク」を分析。ほとんど笑わない人は、よく笑う人に比べて死亡率が約2倍高いとの結果が出ました。約2万人の検診データを収集し、7年間にわたって調査・分析。すると死亡率が約2倍、さらには脳卒中など心血管疾患の発症率も高かったことが明らかになるという……“笑えない”結果が判明しました。
大声を出して笑う頻度に対して、「ほぼ毎日」と答えた人は全体の36%。対して「ほとんどない」は3%ほど。病気になりやすい年齢や喫煙といった因子を加味しても、ほとんど笑わない人と、よく笑う人は実に約2倍の死亡率の違いがあったそうです。
笑顔には、チョコバー2000個分の効果があるともいわれています。チョコレートを食べると脳内でエンドルフィンが分泌され、幸福感をもたらす刺激が起こります。しかし、笑顔にはその比にならないほどの幸福感をもたらす効果があるのです。
堀田秀吾
明治大学教授、言語学者
1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。