労働基準法では、平均賃金を使う場面がいくつかあります。
解雇予告手当 | 予告通告が相手に達した日 |
休業手当 | 休業日 |
年次有給休暇の休暇日賃金 | 休暇日 |
労災補償 | 被災日 |
減給制裁 | 懲戒通告が相手に達した日 |
平均賃金を求める事案が生じた日(上表右欄)の前日から起算してさかのぼること3カ月です。休暇日や休業日が連続する場合は、休暇日等の初日となります。
0時をまたぐ勤務
24時をまたいでから労災発生でも、その勤務の始業時刻の属する日(すなわち前日)をもって算定する事由発生日とします.
解雇日の変更
一旦解雇通告した後、労働者の同意をえて変更する場合でも、当初の通告日をもって事由発生日とします.
賃金締日
賃金締日があるのが普通ですので、前日から見て直近の締日からさかのぼっての3カ月となります(前日が締日ならその締日が起算日)。条文は事案が生じた日起算と読めますが、その日の賃金低減に影響するので、前日起算としています。
締め日に事由発生
締め日当日に事由発生の場合、その前の締日からさかのぼります。
手当ごとに締日が異なるとき
各手当の締日ごとに3カ月の算定をします.
締日の変更
3カ月の始点に近いほうの賃金計算開始日(長短2種あるうちの近いほう)を採用します.
算出方法
過去3カ月の支給総額を同期間の暦日数で割って求めます。総支給額には、通勤手当も含まれます。過去3カ月の労働日数で除して日給相当とせず、暦日数で除すのは、生活費拠出という意味合いが平均賃金にあるためです。
次の期間と、期間中の賃金は、計算に含めません。
- 労災休業中
- 産前産後休業
- 育児介護休業中
- 使用者責めの休業期間
- 試用期間
賃金に含めないもの
- 結婚祝金、私傷病見舞金といった臨時に支払う賃金
- 3カ月を超える期間ごとの賃金(年2回賞与等)
- 通貨以外で支払われた一定のもの
賃金に含むもの
- 通勤手当、通勤定期券(各月に割り振る)
- 年休日の賃金
- 使用者の責めにない休業手当
ベースアップ
賃金アップが遡及して行われる場合、対象となる各月に算入するが、算定事由発生後に行われたベースアップは対象とならない。
年俸制
確定した賞与込みであっても、12分の1を月額とします。
週給
その部分の賃金総額を、その週期間の総日数で除します。
計算式
A(平均賃金)=3カ月間の総支給額÷3カ月の暦日数
総支給額に日給、時給、請負給の部分がある人は最低保証額も合せて算出しAが最低保証額を下回っていないか確認を要します。時間外労働、休日労働の割増賃金は時間を単位にした賃金にあたります。
W1=月、週等を単位とした賃金総額
W2=日、時間を単位とした賃金総額
D1=3カ月の総暦日数
D2=3カ月の総労働日数
Ⅰ=W1÷D1
Ⅱ=W2÷D2×0.6
最低保証額=Ⅰ+Ⅱ
Aと最低保証額のどちらか高い額
計算流れ
過去3カ月間の賃金総額:654320円(S)
その期間の暦日数:91日
654320÷91=7190.3296…
⇒ 7190円32銭(銭未満切り捨て)(Sa)
最低保証の計算 上記Sの中に残業代(53109円/3カ月の総労働日数60日)が含まれている場合。なお、当月末締め、基本給当月払い、残業代や欠勤控除が翌月払い(清算)となる場合の残業代は、当月に含めての計算となる(下記「支払期のことなる手当」参照)。 Ⅰ:(654320-53109)÷91=6606.7142… Ⅱ:53109÷60=885.15 885.15×0.6=531.09 Ⅰ+Ⅱ=7137.8042 |
例)年次有給休暇 3日分
7190.32×3=21570.96… ⇒ 21571円(円未満四捨五入)
特殊事例
1昼夜勤務
1勤務が明らかに2日分の労働と解せる場合は、2労働日とする.(最低保証関連)
支払期のことなる手当
先にも書きましたが、同一締日の異なる支払期の手当は、同一に算入します。たとえば当月末締め、基本給当月払い、残業代翌月払いのケース。同一締日ですので、基本給残業代ペアにして計算します。当月末締め、基本給・残業代共翌月払いと同等扱いです。
末締め翌月払い
基本給・残業代・欠勤控除すべて締めた翌月に支払う場合
賃金計算期間(A) | 賃金計算期間(B) | 賃金計算期間(C) | ||||
末締め当月払い
基本給は当月中に支払い、残業代、欠勤控除は締めてから計算し、翌月に支払う。
賃金計算期間(A) | 賃金計算期間(B) | 賃金計算期間(C) | ||||
色付き部分を同一締日の賃金として、平均賃金計算します。
賃金形態の変更
算出期間途中で時給制が、月給制に変更された場合等、最低保証額計算は、当該期間ごとに按分して求めることになっています。
Wa:月給制の賃金額
Wb:時給制の賃金額
Da:月給制期間の暦日数
Db:時給制期間の暦日数
Dc:時給制期間の総労働日数
D:3カ月の暦日数
Ⅰ=Wa÷Da×Da(=Wa)
Ⅱ=Wb÷Dc×0.6×Db
最低保証額=(I+Ⅱ)÷D
日給月給
毎月定額を支払う月給制が、遅刻早退、欠勤した部分を欠勤控除するタイプで、その賃金控除が発生すると最低保証計算にかからない場合があります。
Ⅰ | 日、時間、請負等で算定された部分 | 上記A(Ⅱ)にて計算 |
Ⅱ | 賃金の全部または一部が月、週、その他期間で算定され、欠勤等の日数・時間で減額された部分 | 減額がないものとして受ける額を所定労働日数で除した額×0.6 |
Ⅲ | 賃金の一部が月、週、その他期間で算定され、減額がない部分 | その総額を上記A(Ⅰ)にて計算 |
最低保証額=Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ.
(2022年8月17日投稿、2024年3月8日編集)