佐久市 ヤナギダ 趣味の店

長野県佐久市野沢93番地
ヤナギダ☎0267-62-0220

「風の子」Ⅱ

2017-06-24 19:35:05 | 日記
打ち合わせを終えたあと、わたし
たちははごく短い時間、たわいな
い世間話しを、カフェを出た。腕
時計を見ると、三時過ぎ。まるで
冬の幕間のような、ぽかぽかと
暖かい午后だった。わたしは、

「ちょっと散歩してから、帰り
ます」
と、本多さんに言って、駅の近く
の横断歩道の手前で、彼女と別
れた。

新宿の街を歩くなんて、久しぶり
だった。わたしの足は自然に西
新宿へ、新宿中公園の方へ向い
ていた。

西新宿は、アラシといっしょに
暮らした街だった。

そこで出会いがあり、そこで、
別れがあった。恋と愛が出会
って、
すれ違って引き裂かれた場所。
一生分の涙を、わたしはそこで
使い果たしてしまった。

今はさらさらと流れる砂のよう
な記憶に包まれて、ひっそりと
たたずんでいる街、涙も、心の
痛みも、傷も、情熱も、おそらく
この世には、何ひとつとして、
同じ形で同じ場所にとどまる
ことのできるものなど、ない
かもしれない。

公園に着くと、わたしは陽あたり
の良いベンチに腰かけて、鞄の
中から、うす茶色の封筒も取り出
した。ついさっき、本多さんから
から受け取ったばかりの、封筒。
中には仕事の資料が入っている。

企画書やあらすじをまとめた
文章やあらすじをまとめた文章
や構成案や、誰かの過去の作品
のコピー。
わたしは、封筒を膝の上に乗せ
てその重みを、てのひらでその
厚みを、味わった。

愛おしさにも似た感情が、山奥
で人知れず湧く泉のように、
あとからあとから、あふれ出し
てくりのがわかった。

アラシ、また会えたね。
わたしたち、また、つながった
ね。
カフェで読んだその文章を、わ
たしはもう一度、ゆっくり読んだ。
なつかしい、アラシの声が、愛
した人の魂が、粒子になって飛
んできた。
       *
これは、風に聞いた話しです。
柳の木の枝を揺らし、白樺の
木の葉を踊らせ、

アザミの綿毛を見えない手で
掬い上げながら、
静かに草原を通り過ぎてゆく、
風に聞いたお話。

仕事にも暮らしにも、人を愛す
ることにも疲れて、
何も信じることができず、自分
さえ信じることができず、
すべての希望を失い、立ち上が
る元気もなくし、

悲しみだけを抱えて、絶望の谷
底を眺めていた僕に、
風がそっと、囁いてくれた物語。




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お勧めミュージック Ⅲ:佐久市 金買取 ヤナギダ店長コラム

2017-06-24 12:09:07 | 日記
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『jacintha / Danny Boy 』

解説/ジャズ バラード
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「DANNY BOY」をアカ
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写真はジャケット。
CDの音質の良さでも有名。



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佐久市 金買取 ヤナギダ店長コラムいちばん大事なのは「人」

2017-06-24 10:02:22 | 日記
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☎0267-62-0220

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人によって愛され、

人によって人は人に
なれるのです。

人を
大切にすることは
自分を
大切にすること

すべては、
つながっている





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「遠 恋」―Ⅲ―⑶

2017-06-24 00:00:59 | 日記
あのひとの言葉を、ひとつ残らず
覚えていた。
優しい言葉も、熱のこもった言葉
も、さり気なく置かれたひとこと
も、ただの相槌でさえも。いいえ、
それは覚えていたのではなくて、

突き刺さっていたのだ。だから
わたしの胸は、あんなにも、痛
かった。


「俺が日本に戻ってきたと時には、
会ってくれますか」
「もちろんです。今度はいつ、戻
ってくるの」
「それはまだ決めてないんだけど
四十週間、朝から晩まで料理の勉
強をするんだ」

「四十週間というと、十ヶ月?」
十ヶ月というと、来年の一月。
「うん、それが終わったら、今度
は実習があって・・・・・・」
そのあとに、ひと呼吸置いて、あ
のひとは言った。
「桜木さんって、今、つき合って
いる人とか、いるの?俺はいない
けど」

はっきりと、わたしは答えた。
「いませんn」
十九歳の時に、片思いの恋を一度
だけ。あとは恋に恋してばかり。

臆病だった。勇気がなかった。
嫌われるのが怖くて、丸ごとの
女になれなかった。求めること
も、できないまま、まるで蛹の
ように、身も心も固くして。

それが、きのうまでのわたし。
あなたに出会うまでの、わたし。

ふたりのあいだを、沈黙が流れ
た。透明な砂時計の中を、透明
な砂がさらさらと、こぼれ落ち
ていくような、清潔な沈黙。

「そう、ないんだ」
あのひとはそれ以上、何も言わ
なかった。「つき合ってほしい」
とも、「つき合おうか」とも。
わたしも言えなかった。

だって、あしたはもう、遠く、
離れ離れになってしまう人に、
どうしてそんなことが言える?
茫洋とした海をあいだに挟んで、
東京とニューヨークに別れ別れ
になって、どうやって、つき
合っていったらいい?

カーテンの取りはずされた部屋
の窓から、見えていたのは、朧月。
滲んで、霞んで、今にも闇に溶け
てしまいそう。でもわたしはこの
想いを、このまま溶かしてしまい
たくはない。

受話器を固く、固く握りしめた
まま、わたしは思い出していた。
その夜、一緒にお酒を飲みなが
ら、語り合った親友の言葉。

佳代子は言った。ワインレッド
のマニキュアをきれいいにつけ
た細い指で、カクテルグラスを
弄びながら。

わえ、カノちゃん、教えて、

どうして人は人を、好きになっ
たするんだろう。

悲しくなるとわかってて、淋し
くなるとわかって、そんな恋
でも、平気で踏み込んでしまう
のは、なぜ。

恋ってそんなにすてきなもの?
だったらなぜ、恋すると、こ
んなにたくさんの涙が出るの。






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