佐久市 ヤナギダ 趣味の店

長野県佐久市野沢93番地
ヤナギダ☎0267-62-0220

「遠 恋」 ―Ⅰ―

2019-05-01 16:31:24 | 日記
「桜木さん」
突然名前を呼ばれて、どきっと
した。白地に紺のストライプの
入った、制服のブラウス、胸も
とに留めている店員の名札。
そこにあのひとの視線を感じて、
そのちょうど下にある心臓が、
トビウオのように跳ねた。

「この女の子、表情がどことなく、
桜木さんに似ていませんか」
そんなことを、あのひとは言った。
「えっ、そうですか、それは・・
・・・」
嬉しいです、という言葉は、喉の
あたりでもつれたままだった。絵
本の女の子の表情は、どこか淋し
げで、哀しそうにも見える。だ
からこそ、わたしはその絵本が、
好きだったのだけれど。

背伸びして、あのひとの広げた
ページを覗き込みながら、わたし
は言った。
「春になったらお花をたくさん
摘んできて、花束を作ってあげる。
雪がいっぱい積もったら、雪だるま
を作ってあげる。これって全部、
お姉ちゃんが小さな弟に、してあげ
たいことなんですね。原題も、すてき
なんですよ。『Do You Know What I’ll
Do?』っていうんです」

「いいね。なんだか深みのあるタイ
トルだな」
「ごめんなさい、あくまでも、わた
しの好みですから、とらわれないで
下さい。それに、絵本のよさって
理屈で説明できるものじゃないで
すよね。感じるものですから。

ハートで。頭じゃなくて、心で。
よかったらどうぞごゆっくり、読
んでらして下さい。わたしはそろ
そろ、持ち場に戻りますので」

「持ち場に戻ります」と言ってお
きながら、わたしはあのひとのそ
ばに、突っ立ったままだった。
その絵本の中にはね、わたしの
小さな弟が住んでいるの。この世
にはいないんだけど、でも、いるん
ですよ、そこに。

そんな、言葉にはならない、欠けて
尖った貝殻みたな想いを抱えて。
柔らかく、あのひとは言った。

「決めました。贈り物はこれにし
ます。この女の子が気に入りました」
「そうですか、ありがとうございます。
レジはあちらです」
わたしは店員らしく一礼し、あのひと
から離れていこうとした。
「こちらこそ、どうもありがとう」

わたしがうしろをふり返るのと、あの
ひとが立ちと返るのと、あのひとが
立ち止まったのは、ほぼ同時だった。
気がついたら、あのひとは再び、わた
しのすぐそばに立っていた。

「あ」
と、言ったきり、何も言えなく
なった。
あ、聞こえた。胸の奥で一匹の
鯉が、勢いよく跳ねる水音。

「あとひとつ、忘れ物しちゃい
ました」
そう言いながら、あのひとはま
っすぐに、わたしの目の前に右
手を差し出した。

ほとんど反射的に、わたしはその
手を握っていた。とても大きな手
のひら。この手はきっと、何かを
創っている手。そんなことを思っ
た記憶がある。あのひとは、わた
しの指をすべて包み込むようにし
て、ぎゅつと、握り返してきた。

みるみるうちに赤く染まってゆく、
わたしの頬。惜しみなく降り注が
れる、光のシャワーのような微笑
みを浴びて、まるでくしゃくしゃ
のハンカチになった気分。

これが忘れ物だなんて、握手が
忘れ物だなんて ・・・・。
気持ちが走り始めたのは、その
瞬間だった。

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その人はわたしの一部として、今もここに「いる」

2019-05-01 15:16:17 | 日記
この電話を切ったら、
もう、あなたとの電話は
つながらなくなってしまうではないかと。

もう二度とあなたへつながる道は
絶たれたんではないかと。

それが そんな思いが
恋の始まりだった。



YouTube
Good Evening, Heartache

https://www.youtube.com/watch?v=OoGTLXLqr9o




金 K18   ¥3370
プラチナPT950 ¥2870
【5月1日買取値】吉日
※店オープン中
連休中不定期でご連絡くだ
さいませ。

※ビスクドール64嬢。
美術館への貸出日は未定。
(二ヶ月)

佐久市野沢93番地十二町
ケヤキの木の真向かい
アーケード十二町側
  ~ヤナギダ~
☎0267-62-0220

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思い

2019-05-01 14:19:06 | 日記
人の心は川の流れのように留ま
ることを知らない。片思いはそ
の先がほしくなります。

自分の気持ちを伝えたいと思うよ
うになるばかりでなく、わかって
ほしいと望むようになるのです。

それは苦しくて、少しせつない。

けれどそんな感情も、心を育てる
素敵なレッスンになるのです。
片思いも相思相愛の恋も、見つめ
るのは相手ばかりではないのかも
しれません。

もしかしたら見つめている相手の
向こう側に、自分の心を見てしま
うのでしょう。

情熱という名前の刃を振りまわす
ように恋をしていた頃を過ぎると、
誰にも告げず、相手に何も告げな
いまま人を愛することができる
ようになるものです。

その人の家のそばを通ると思い
だし、電話で話す機会があれば
少しばかりどきどきしながら話
してる。

誰に嫉妬するわけでもなく、た
だただその人を思い、幸せであっ
て欲しいと願う。

そんなふうに誰かを想うことが
できたとき、私は自分が少し大人
になったと思いました。

そして、通り過ぎたいろいろな
出来事が、色あせることなくそれ
ぞれの時代で輝いていたことを
知ったのです。



YouTube
COLOR ただ逢いたくて

https://www.youtube.com/watch?v=yHl6BQu863A



金 K18   ¥3370
プラチナPT950 ¥2870
【5月1日買取値】吉日
※店オープン中
連休中不定期でご連絡くだ
さいませ。

※ビスクドール64嬢。
美術館への貸出日は未定。
(二ヶ月)

佐久市野沢93番地十二町
ケヤキの木の真向かい
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『心地よいリズム』

2019-05-01 11:52:55 | 日記
流されて一日を送るより、
自分らしいリズムで過ごしたい。

今日やることを箇条書きでリスト
アップしたら、優先順位や効率
だけを考えるのではなく、

自分にとって心地よいリズムで
こなしたいと思います。

まわりの影響は受けるものの、
何かをするときの動機は自分発
でありたい、

自分のかかわることは自分で
コントロールしたい、そう願
っているのです。

僕にとって心地よいリズムは
三拍子。

すべては一・二・三、一・二
・三の繰り返しで動いていき
ます。

一・二・三ときたらそのまま
四・五・六と続くのではなく、
次の一・二・三に取り掛ると
いった具合。

恋も三拍子、恋愛で大ゲンカ
した後、初恋時代の気もちに
戻った経験ありませんか?

自分プロジェクトも仕事も
恋愛も三拍子で進めて
いきます。

四・五・六と続くから
飽きるのです。

結婚するヒトとは三拍子の
リズムが取れる人と。

リズムは人によって違います。
あなたのリズムは1・2、1・2
かもしれないし、

起承転結のごとく
1・2・3・4が心地よい
リズムという人もいるでしょう。

ときの状況によってもリズムは
変ります。

いずれにしろ、物事には順序が
ある。瞬間的に結果を出そうと
せず、リズミカルに段階を踏んで
ゴールを目指しましょう。

〇時には相手のリズムも意識して、
共に演奏するように楽しみましょう。



金 K18   ¥3370
プラチナPT950 ¥2870
【5月1日買取値】吉日
※店オープン中
連休中不定期でご連絡くだ
さいませ。

※ビスクドール64嬢。
美術館への貸出日は未定。
(二ヶ月)

佐久市野沢93番地十二町
ケヤキの木の真向かい
アーケード十二町側
  ~ヤナギダ~
☎0267-62-0220

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「耳を澄ませば今も聞こえてくる、彼が口づさんでいた歌」

2019-05-01 08:12:37 | 日記
あまりにも好きで
その気持ちを
持ちこたえるのがつらかった

あまりにも好きだと
何も望めないんだね

あまりにも好きで
いっそ嫌いになりたかった
知らないままでいたかった

知らない頃には
もどれないけど

ずっと好きで
今も好きで

この好きは
何も望まないから
たぶん強く
守られる


YouTube
King Gnu - 白日

https://www.youtube.com/watch?v=ony539T074w

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ひとりぼっちの深海魚

2019-05-01 01:05:17 | 日記
子どものころは、時間って無限に
あるものだと思っていました。

早く大人になりたい、なんて望ん
だりもしていましたが、それは自
分が、ずっと子どもでいるような
気がしたから、なんですよね。

人生が有限であることを、頭では
なく体で感じられるようになった
ら、そこからいよいよ生きること
が美しくなるのではないか、

生意気なようですが、私はそんな
ふうに思っています。
自分はいま、まだ中途半端で、や
や頭で理解している部類に入るの
ですが、そろそろ体でも感じはじ
めてもいます。

何百回、何千回、何万回と、あな
たと花火を見られるとしたら・・・。

それは嬉しいことでしょが、
やはり美しいことでは、ない
ような、そんな気がします。



YouTube
メロディー / 玉置浩二  (ピアノ 女性) COVER by Uru

https://www.youtube.com/watch?v=TN64rz0hGyQ

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『つまるところ、それは何の ためになるのですか?』

2019-05-01 01:03:39 | 日記
>目的をかなえる手段として
修行するのではない。
自分が生きる意味に決着して
いないのに、人に生死の解決
を教えることはできない
  鈴木正三/江戸時代禅僧

この言葉は、「今の人は、仏法
は修行して悟らなければなら
ないと思っているようだが、
そうではない。仏法というもの
は修行して悟るものではない。

今をどう生きるかがそのまま
仏法の修行であり、それ自体
が悟りなのである」という
意味です。

修行とは「誰かのためにやる」
なんて恰好のいいものではなく、
今ここをどう生きるかである。

「修行」を「仕事」、「悟り」を
「信用やお金」と置き換えても
よいでしょう。
仕事でも「認められたい」とか
「儲けたい」という打算がある
と、なかなかうまくいきません。

鈴木正三は、「仕事をして儲か
らなければ、仕事をする必要
がないじゃないかと思ってい
るようだか、そうではない。

信用を得たり、儲けるから仕事
の意味があるのではなく、
ただひたすら仕事をすること
自体に仕事をする意味がある」
と言っているのです。
『つまるところ、それは何の
ためになるのですか?』
目的をかなえる手段として
修行するのではない。
自分が生きる意味に決着して
いないのに、人に生死の解決
を教えることはできない
  鈴木正三/江戸時代禅僧

この言葉は、「今の人は、仏法
は修行して悟らなければなら
ないと思っているようだが、
そうではない。仏法というもの
は修行して悟るものではない。

今をどう生きるかがそのまま
仏法の修行であり、それ自体
が悟りなのである」という
意味です。

修行とは「誰かのためにやる」
なんて恰好のいいものではなく、
今ここをどう生きるかである。

「修行」を「仕事」、「悟り」を
「信用やお金」と置き換えても
よいでしょう。
仕事でも「認められたい」とか
「儲けたい」という打算がある
と、なかなかうまくいきません。

鈴木正三は、「仕事をして儲か
らなければ、仕事をする必要
がないじゃないかと思ってい
るようだか、そうではない。

信用を得たり、儲けるから仕事
の意味があるのではなく、
ただひたすら仕事をすること
自体に仕事をする意味がある」
と言っているのです。



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『青春の光と影』

2019-05-01 00:00:02 | 日記
どうして?
どうして、喧嘩なんか、しちゃった
んだろう?
こんなにも好きで、こんなにも
会いたくて、三ヶ月ぶりに会えて、あ
んなにも嬉しかったはずなのに。

きっかけは、些細なことだった。
彼はきょうの午後、どこにも出かけた
くないと言い、私は町まで出かけて
食事をしたり、買い物をしたり、散歩
をしたり、夕方にはレゲエのコンサート
にも行きたいと主張し、出かけるか出
かけないか、について話し合っている
うちに、いつのまにか口喧嘩になり、

気がついたら「愛しているのかいないの
かを巡る、大きな口論に発展してしまっ
ていたのだった。

愛しているに決まっているのに、海よ
りも深く空よりも果てしなく、愛し
合っているという自信があるのに、

まったく、なんてことだろう。情けな
い。実にふがいない恋人たちだ。
貴重な時間をムダにしている。休暇は
一週間しかなくて、休暇の終わりには
また遠く、離れ離れになってしまう
のに。

わかっているのに、どちらも素直に
「ごめん」が言えないまま、彼は
部屋に閉じこもり、私は扉をさざ
とばーんと音をさせて閉め、こう
してバーにやって来て、ちっとも
酔えないお酒を飲んでいる。

なんとかしなきゃ、仲直りしな
きゃ。
このまま、大切な時間が、刻一刻と
失われていくのを、指をくわえて
見ているだけでいいの?いけない、
いけないよ、絶対にいけない。

竜巻のようにま巻き上がってくる
思いを抑え込んで、私は注文した。

「お願いします。うんと強いのを」
と頼んでみた。
「さ、できたよ。どうぞ、召し上がれ」
数分後、目の前に差し出されたのは、
いちごとミントの小枝で飾られた、
メキシカンガラスのゴブレット。

「可愛い!」
思わず、感嘆のため息がもれた。
ひと口飲んだあと、そのため息は
甘くなった。甘酸っぱくてせつない、
昔懐かしい味を彷彿させている。

ああ、この味は、いつかどこかで
味わった、何かの味にそっくりだ。
でも、なんの味なのか、うまく思い
出せない。

ストローで少しずつ、少しずつ、
吸い上げながら、味わってみる。
頭の芯が溶け出して、気持ちの編み
目がほどけてゆくのがわかる。

楽園は、近い。わたしのすぐそばに
ある。この胸のなかにある。この皮
膚の表面に宿っている。彼に触れた
い。触れられたいと願っている。

この指先に。
そこまで思った時、思い出した。
よみがえった。このカクテルの
味は、彼と交わした口づけの味だ。

パリのアパルトマンで、籠いっぱい
に盛られた摘みたての苺―――
彼がスケッチをするための果物だ
った―――を、ひとつぶ、お互い
に食べさせ合った午後。
シーツに残っていた切ない香り。

――苺みたいに甘い思い出を、たく
さんつくっておかなきゃ。あとで使
うために。

――使うの?どうやって?

――喧嘩なんかした時にね、ひとつ
ぶ取り出して口に含めば、仲直り
できるだろう?

――喧嘩なんか、しないもん。

――するよ。どんなに晴れた楽園
にも、雨は降ってくるからね。




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