はじめてのデート。緊張で
上手にフォークを運ぶのが
精一杯。
味なんてわかったものじゃ
ありません。
みんな、こんな甘酸っぱい
思い出を持ってるでしょ。
なにかを最後までやり、また
別のことを始めるために。
そう、別のこと。
これからはそのことを一色に、
人生を塗り込めたい。
記憶の小部屋に鍵をかけ、
今ここに振り返るなら
我が恋は闇を恐れぬ盲目の人
映画監督や小説家は、憧れ
の女性像を現実化させるこ
とに情熱を注いでいます。
それは、きっと少年の頃から
の夢だったに違いありません。
饒舌なひとのハナシは、
うまくいいくるめられ
るみたいで、どこか
信じられない。
寡黙なひとのハナシは、
説明が少ない分だけ脚
色無しの真実に聞こえ
るのかもしれません。
人の世は“はかない”とい
う無常感は、
日本人の心に住みついて
いる。
『平家物語』の有名な冒頭
の一節
「祇園精舎の鐘の声、諸行
無常の響きあり。紗羅双樹
の花の色、盛者必衰の
理(ことわり)をあらわす。
」は、その最も美しい表現だ。
はかないというのは、消えて
なくなりやすい、もろくて
長つづきしない、という意味
だが、そのことを美しいもの
としてとらえるところに日本
人の心がある。
「行く水に数書くよりもはか
なき思わぬ人を思ふなりけり」
という古今集の歌にあるよう
に、何のかいもない無益
な恋に悩むことも高貴な人た
ちの多くが行ってきた。
桜の花を日本人が愛する
のは、その
美しさがはかないからだ。
「日照りも嵐もあって人生」
心を天気にたとえて言うと、
どうも私たちは、すきま風
もなく暴風雨も起こらない
状態が「理想」としている。
そういうことが可能だと思
っている。
でも、暴風雨など、全部こ
みで、天気が成立しているわ
けで。
太陽が照っている時を「良い
天気」と言って、良い天気が
多いほど良い、と思いこんで
いるのだけど
日照りばかり続いたら「良い」
とは言えないでしょう。
でも、それほど私たちのイメ
ージは固定している。
心の天気も、人はみな雨の降
らないことを願っている。
―――どこかに「良い天気」
ばかりを生きている人間がい
ると、みんな錯覚している。
そして、その人に比べると自
分は残念だと思っているわけ
だけど、そんな人はいないん
です。